失われた時を求めて(8) の商品レビュー
去っていくスワンの後ろ姿にうたれた。 まるで死期を自覚した一頭のカリブーが、死に場所を求めて群れを離れて行くようだ。 この物語を読み終わったとき僕の心の中に生き残っているのは、オデットの姿でも、ジルベルトのそれでもなく、スワンの肖像だけなのかも知れない。 次の文章は、スワンの最期...
去っていくスワンの後ろ姿にうたれた。 まるで死期を自覚した一頭のカリブーが、死に場所を求めて群れを離れて行くようだ。 この物語を読み終わったとき僕の心の中に生き残っているのは、オデットの姿でも、ジルベルトのそれでもなく、スワンの肖像だけなのかも知れない。 次の文章は、スワンの最期の挨拶だろうか。
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この巻のトピックは大きく次の要領 1. 主人公はシャルリュス男爵と仕立屋の男色の現場を目撃(正確には盗み聞きしてしまう) 2. 大公のパーティーで女好きを装う男爵を眺める。 3. そのパーティーでスワンから大公もドレフェス派だと聞かされる。 4. 恋人のアルベルチーヌに袖にされ...
この巻のトピックは大きく次の要領 1. 主人公はシャルリュス男爵と仕立屋の男色の現場を目撃(正確には盗み聞きしてしまう) 2. 大公のパーティーで女好きを装う男爵を眺める。 3. そのパーティーでスワンから大公もドレフェス派だと聞かされる。 4. 恋人のアルベルチーヌに袖にされたりして悶々と過ごす。女友達とただならぬ仲ではないかと疑う。 5. 久方ぶりに避暑地バルベックに滞在する。母とも合流し、亡くなった祖母のことを偲び、罪の意識もちょっと味わう。 6. アルベルチーヌがやって来るが始終浮気を疑い落ち着かない心持ちで過ごす。 7. 身分の低い姉妹と仲良くなりお下品に過ごす。 ーーーーーーーーーーーーーーーー この物語のテーマでもある記憶。記憶は時とともに変化し、思い込みに化ける。人は変化するものだが、場所や景色も実際に来てみると記憶と異なる…などとつらつら書かれている。 以前にも会う前に思い描いていた人物とあってから実際に見たイメージが異なる…なんて記述もあった。やはり思い込みと現実の間にはギャップがある。 主人公が恋人に焼きもちを焼く気持ちもわからないでもないが、何故女友達にまで?普通はありえないですよね。この焼きもちには読んでいて些か閉口。
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前半はシャルリュスを通して、男性同性愛の社会と文化を描写。悪意(ホモフォビア)も感じるが、リアリティはある。 中盤の祖母の死の実感、母の変貌の発見は圧巻の筆捌き。
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折り返し地点を過ぎてここから後半戦。 これまで少しづつ仄めかされていた同性愛のテーマがようやく前面に出てくる。近代西洋文学で同性愛が正面から取り上げられたのは、これがもっとも早い時期のものだとのこと。 まあ、それはそれとして、本巻もやっぱり主人公がゲスでクズすぎる。男爵と仕立て屋...
折り返し地点を過ぎてここから後半戦。 これまで少しづつ仄めかされていた同性愛のテーマがようやく前面に出てくる。近代西洋文学で同性愛が正面から取り上げられたのは、これがもっとも早い時期のものだとのこと。 まあ、それはそれとして、本巻もやっぱり主人公がゲスでクズすぎる。男爵と仕立て屋の「アーーッ!」て所をわざわざ隣の部屋に忍び込んで盗み聞きしたり、セフレと毎日あうのは気分じゃないから都合よく夜中に呼び付けて性欲満たしたり、避暑地に来て「あ、おれ、この夏ヤった女14人だわ」とドヤってみたり、そうかと思えばセフレの怪しい素振りで嫉妬に狂ったり。エレベーター乗るたびエレベーターボーイに2500円もチップ払う金遣いも含めて(プルースト 自身も非常識な額のチップを払っていたらしい)、まじで主人公に感情移入できないクズだわ。 だんだんと主人公のクズさを読むのに関心が移りつつ、ソドムとゴモラ後編に続く。
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第8巻。全14巻予定なので、本巻から後半に入ったことになる。 世に知られている通り、第8巻では同性愛を巡る考察が主なテーマ。疑問や考察は巻末にかなり長い解説が収録されているので、それを読むと当時の世相や同性愛者を取り巻く状況がよく解ると思う。 また、『私』が死んだ祖母を思い出す場...
第8巻。全14巻予定なので、本巻から後半に入ったことになる。 世に知られている通り、第8巻では同性愛を巡る考察が主なテーマ。疑問や考察は巻末にかなり長い解説が収録されているので、それを読むと当時の世相や同性愛者を取り巻く状況がよく解ると思う。 また、『私』が死んだ祖母を思い出す場面はかなり哀切で印象に残った。 ところで、岩波文庫版は割とコンスタントに刊行されているのだが、古典新訳文庫版は一体どうなったのだろう……? 中絶するってことは無いと思うけど……。
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