ハンコの文化史 の商品レビュー
ハンコがどう生まれてどう使われて来たかの歴史。物凄い幅広い知識と、現物に当たってきたからこそわかる洞察で、ハンコってこんなに奥深いのか!と、驚きながら読める本。 もともとは所有の印であって、瓶などの蓋の粘土に押したもの。それが封蝋になったり、文書の確かさを保証するものとなったり、...
ハンコがどう生まれてどう使われて来たかの歴史。物凄い幅広い知識と、現物に当たってきたからこそわかる洞察で、ハンコってこんなに奥深いのか!と、驚きながら読める本。 もともとは所有の印であって、瓶などの蓋の粘土に押したもの。それが封蝋になったり、文書の確かさを保証するものとなったり、というその発展の歴史の動きがとても面白い。 著者が、大学の研究者ではなく、外務省勤務であったことがまた良い。過去の世界情勢への視点も現在の世界に繋がってるし、在野の研究者ならではの大胆な発想もある。 今の日本のハンコ文化の前近代性への指摘は、グローバルに活躍された著者ならではの実感でしょう。
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メソポタミア文明発祥のハンコの歴史を、その伝播の様子と各地域文化ごとの発展を通して解説している。はんこから判明するインダス文明の交易、はんこと自署・花押の社会における役割の移り変わり、謎のはんこ糸印の由来などが興味深い。表紙の田黄石は西太后や李鴻章ゆかりの逸品で著者が所蔵するとこ...
メソポタミア文明発祥のハンコの歴史を、その伝播の様子と各地域文化ごとの発展を通して解説している。はんこから判明するインダス文明の交易、はんこと自署・花押の社会における役割の移り変わり、謎のはんこ糸印の由来などが興味深い。表紙の田黄石は西太后や李鴻章ゆかりの逸品で著者が所蔵するところとなり今は博物館にあるという。
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地味に違いない。と思って読み始めたわりに、ハンコの起源を遡ると古代文明のアラベスクのローラープリントなどが登場する。その辺からぐいと惹き込まれてしまった。 指輪、染め物、封緘、鑑賞物、ハンコと現在はまったく違う機能用途を持つものが、はじめは一緒だったというのには驚きである。 様...
地味に違いない。と思って読み始めたわりに、ハンコの起源を遡ると古代文明のアラベスクのローラープリントなどが登場する。その辺からぐいと惹き込まれてしまった。 指輪、染め物、封緘、鑑賞物、ハンコと現在はまったく違う機能用途を持つものが、はじめは一緒だったというのには驚きである。 様々な民族や文化が国同士の攻防や貿易、人々の交流などで時代を超え場所を変え、少しずつ意味が混ざり合いながら、はたまた本来の機能は忘れ去られながら、新しい機能が付加されながら、ゆったりと伝播していくその歴史は壮大でロマンがある。 著者は自身の研究スタイルは比較印章学と称している。文化は比較すると、元々知っている事も面白みが倍増する事が分かり、なるほど、これはおもしろいと思った。 ところで、著者の本業は外交官なんだが、自身の社会的立場も大いに活用、お金と人脈を惜しみなく使い趣味のハンコ収集や各国の歴史資料にアクセスしている。無知なわたしは孫崎享しか外交官のイメージがなかったので、外交官の私生活をイメージしたりなんてましてや羨ましいななんて思った事はこれまで無かったけども、本書の作者の趣味への職権乱用ぶりはイメージ容易でとても羨ましい、外交官っていいなぁと思った。
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サブタイトルが「古代ギリシャから現代日本まで」というように、ハンコの文化について書かれている。そして、あの文化人類学者の中根千枝があとがきで著者とハンコに関して述べている。 ハンコと言えば、現在、池袋にある古代オリエント博物館にてクローズアップ展「粘土板と印章―紀...
サブタイトルが「古代ギリシャから現代日本まで」というように、ハンコの文化について書かれている。そして、あの文化人類学者の中根千枝があとがきで著者とハンコに関して述べている。 ハンコと言えば、現在、池袋にある古代オリエント博物館にてクローズアップ展「粘土板と印章―紀元前13世紀ユーフラテス川沿いのエマル市―」を開催している。エマルとは、現在のシリア北部、ユーフラテス川中流域のメスケネの近くに古代都市遺跡。平山郁夫シルクロード美術館が所蔵している貴重な粘土板文書を公開している。はるか昔からハンコを使っていたのだなあ。奴隷に関する契約、遺産相続に関する粘土板や印章が展示されていた。ドロドロした愛憎劇が繰り広げられていたのかふと気になった。 さて、ハンコに関して、ハンコは文字よりも古く、紀元前3300年前には存在していたとある。そして、ハンコは、鍵の代わりに使用されていて、つぼやかめを封印するために円筒印章を利用していた。当時は、勝手に封印を破るのはタブーで、悪い奴はお仕置きされると考えられていた。どういう世界にもタブーはあるからなあ。あの週刊文春だって作家には芸能人や政治家には強くても逆らえないからなあ。 びっくりしたのが古代ローマでは奴隷もハンコを持っていたことだ。今の日本みたいにハンコがないと社会生活が営めなかったのかな。 日本史の教科書に登場したことがあるくらい有名なものと言えば「漢委奴国王」の金印だ。実際にペタペタ文書に押されていたかと言うと、著者は、貴重な宝として存在していてもハンコとして機能していなかったと述べている。 著者の指摘で意外に思ったのは、「ハンコ万能主義は時代錯誤」だ。ハンコの本を出すぐらいだから、ハンコは永遠に不滅ですと思っていてもおかしくないが、安いハンコが売られていて、識字率が世界一の日本でサインにしてもいいのではないかと述べている。 古代オリエント博物館 http://aom-tokyo.com/exhibition/170401_emar.html
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外交官として各国に駐在した方ならではのユニークな研究。古代ギリシャどころかメソポタミア文明から東西に広がり、ユーラシア大陸全体に広がっていったらしい。そして中国の漢・魏時代には印章が地位を象徴するものとして、皇帝から倭国など各方面に授与されたという。欧州では紋章が家柄を示している...
外交官として各国に駐在した方ならではのユニークな研究。古代ギリシャどころかメソポタミア文明から東西に広がり、ユーラシア大陸全体に広がっていったらしい。そして中国の漢・魏時代には印章が地位を象徴するものとして、皇帝から倭国など各方面に授与されたという。欧州では紋章が家柄を示しているという面で共通している。日本では戦国時代の武将から印章の全盛期を迎える。戦争で忙しく、また頻繁に手書きを書く時代になったからか。信長の「天下布武」印がその代表。日本固有の習慣のように思われているものが実は日本のみ時代錯誤的に残っている!ということは意外と知られていない。
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