ノヴァーリスの引用/滝 の商品レビュー
かなり密度のあるこってりした文体。 本質的には違う事を前置きしつつ、夢野久作、三島由紀夫のエッセンスが随所に感じられ、読み疲れしない人ならかなりハマると感じた。(やはり三島賞は何度かノミネートしている様) 『滝』はとても良い作品なのだが、中盤で展開が読めてしまい少しだけ残念だっ...
かなり密度のあるこってりした文体。 本質的には違う事を前置きしつつ、夢野久作、三島由紀夫のエッセンスが随所に感じられ、読み疲れしない人ならかなりハマると感じた。(やはり三島賞は何度かノミネートしている様) 『滝』はとても良い作品なのだが、中盤で展開が読めてしまい少しだけ残念だった。 『ノヴァーリスの引用』はミステリー色強く作者の強みを感じる。妖しく幻惑的な話の紐解きは個人的に好みだった。
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この著者の小説は初めて読んだ。2篇の中編を収める本書はいずれも閉鎖的な集団の中での心理や記憶の細かな襞を巧みに扱っており、面白く読めた。
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滝を始めて読んだのはもう二十数年前。純文学なのにすごいBL(当時はまだやおいと称されていましたが)だとドキドキして読み終えましたが、今読むと、BL話というより、勲からあそこまで人間性を奪った集団の恐ろしさが気になってしまいました。 女のみの集団はトップを作らりたがらず、男のみの集...
滝を始めて読んだのはもう二十数年前。純文学なのにすごいBL(当時はまだやおいと称されていましたが)だとドキドキして読み終えましたが、今読むと、BL話というより、勲からあそこまで人間性を奪った集団の恐ろしさが気になってしまいました。 女のみの集団はトップを作らりたがらず、男のみの集団はリーダーを作って戦いたがる、と何かの本で読んだ気がしますが、カリスマとか作り上げて自分たちの気持ちをあげていかなくてはともに生きていけないのが男性性なのかな、と思いつつ。
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『滝』、完璧な純粋を極めて上り詰めた先には転落か死しかない。 三島文学『奔馬』をなぞった作品であるのは間違いないが、最後の顔を破壊する理由は?それも三島の大の苦手である蟹に食いちぎらせるとは。 これは三島文学へのオマージュなんていう生易しいものではなく三島への挑戦状なのかもしれな...
『滝』、完璧な純粋を極めて上り詰めた先には転落か死しかない。 三島文学『奔馬』をなぞった作品であるのは間違いないが、最後の顔を破壊する理由は?それも三島の大の苦手である蟹に食いちぎらせるとは。 これは三島文学へのオマージュなんていう生易しいものではなく三島への挑戦状なのかもしれない。 ストーリーそのものは三島の短編『剣』を換骨奪胎といったところで『蘭陵王』にも雰囲気に共通するところがあると感じたがそれはむしろ《顔》へのこだわり? 『剣』では葉隠にある顔の皮の剥がし方について話す件があった。それに応えてなのか。 神風連をイメージさせる宗教組織。 山岳清浄行での内部崩壊、狂気に取り憑かれていく様は、 1971〜1972の連合赤軍の山岳ベースリンチ事件を想起する。 《正義》に向けて純粋を極めた情熱は死に向うしかない。それは三島が描く輝かしい死ではなく「肉食の虫に狙われた傷ついた獣」内部から腐敗していく醜い死。三島が懸念していたこと、もしくは期待していたことはその死からわずか2年足らずで終焉を迎えることになる。1970年という三島自決の年についてあらためて考えさせられた。 ⚪︎蟹顏の達彦は飯沼茂之のよう。 勲のアルカイクスマイル。 『剣』の次郎のアルカイクスマイル 勲と陰陽の対になる松尾貴彰、『奔馬』勲の前世、松枝清顕と名前が似ている? 何度も繰り返される蛇殺しのモチーフ。自身のデビュー作『蛇を殺す夜』からか。
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奥泉光の初期短編の合本文庫版。 まさか創元推理文庫から奥泉光が出るとは思っていなくて、まずそこに吃驚。ミステリやSFの手法を用いることが多い著者だが、基本的には純文学の作家だと認識していた……。 『ノヴァーリスの引用』は後の『グランド・ミステリー』や『神器』に通じる片鱗が見られる...
奥泉光の初期短編の合本文庫版。 まさか創元推理文庫から奥泉光が出るとは思っていなくて、まずそこに吃驚。ミステリやSFの手法を用いることが多い著者だが、基本的には純文学の作家だと認識していた……。 『ノヴァーリスの引用』は後の『グランド・ミステリー』や『神器』に通じる片鱗が見られるメタミステリ。『葬儀の帰り、かつての同級生の死を語り合う』というストーリーは、正統派のミステリであれば、最後に真相が暴かれるのだろうが、本作では悪夢を見ているような情景が現れる。 『滝』は『解説』にもある通り、三島由紀夫の『奔馬』の雰囲気にも似た群像劇。ちょっと『蠅の王』を思わせるところもあり。 どちらの作品にも共通しているのは不穏な雰囲気だが、後者の方が強く感じられる。 ところで、入手困難な初期短編を復刊して欲しい、とはずーっと思っているのだが、ジャンル小説として読めるものばかりではないので、やっぱり講談社文芸文庫の方が期待出来るんだろうか……。
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恩師の葬儀からの帰り道、数年ぶりに再会した男たちは酒を酌み交わす。何時しか話題は、今は亡き友人に。大学図書館の屋上から墜落死した彼は自殺したのか、それとも……。終わりなき推理の連鎖が読者を迷宮へと誘う、第15回野間文芸新人賞受賞作「ノヴァーリスの引用」。 七つの社を巡る山岳清浄...
恩師の葬儀からの帰り道、数年ぶりに再会した男たちは酒を酌み交わす。何時しか話題は、今は亡き友人に。大学図書館の屋上から墜落死した彼は自殺したのか、それとも……。終わりなき推理の連鎖が読者を迷宮へと誘う、第15回野間文芸新人賞受賞作「ノヴァーリスの引用」。 七つの社を巡る山岳清浄行に臨む五人の少年。山岳行の背後に張り巡らされた悪意と罠に、彼らは次第に追い詰められていく。極限状態におかれた少年たちの心理を緻密に描き、傑作と名高い「滝」。 高密度のミステリ世界を構築する著者の代表作二編を一冊にまとめて贈る。 解説=巽昌章
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