戦後リベラルの終焉 の商品レビュー
コメンテーター。センテンスが長く学問的にむずかしい話をする人はテレビ局に嫌われ、短時間で言い切って「角度をつける」人が好まれる。テレビ局の言いたいことを「識者」を通じて言わせる。p.55 国連は集団安全保障のための機関であり、集団的自衛権を保障するものではない。集団的自衛権とは...
コメンテーター。センテンスが長く学問的にむずかしい話をする人はテレビ局に嫌われ、短時間で言い切って「角度をつける」人が好まれる。テレビ局の言いたいことを「識者」を通じて言わせる。p.55 国連は集団安全保障のための機関であり、集団的自衛権を保障するものではない。集団的自衛権とは各国の結ぶ軍事同盟のことで、国連とは別の問題。p.64 アメリカは極東での軍事負担を軽減するため、日本の自立(軍事力強化・集団的自衛権)を求めている。p.139 NYTはイラク戦争開戦に賛成の論陣を張り、「イラクは大量破壊兵器を持っている」と誤報を出した。p.90 朝日新聞には一貫した原則や論理はない。一貫しているのは、感情的な世論に迎合しようという商業主義である。新聞は部数を増やすために戦争を煽り、日本を戦争に導いた。p.91 トヨタが2014年3月に納めた法人税は7678億で、その額は日本企業の中でトップ。国税収入の1.5%にのぼる。トヨタは義理堅く国内で納税している。p.136 1970年以降、左翼のよりどころは公害反対運動になった。公害は資本主義がもたらす悪であり、公害病患者はプロレタリアートに代わって左翼のアイコンになった。運動の主役はマルクス主義者というより、エコロジストだった。p.188 反原発デモは、社会に対して漠然とした不満を抱いている人々が、それをぶつける材料として原発を見つけた。が、その先に何があるのかは彼らにはわかっていない。かつての学生運動には曲りなりにもマルクス主義という理念があり、それを組織化する党派があったが、このデモには目的も理念もない。p.141 原発ゼロは経済に莫大な損害を与え、製造業は日本から出ていき、職が失われる。その最大の被害者は、反原発デモをしているフリーターである。p.141 原発事故まで原発について何も知らなかった左翼文化人は、そこに新しい反権力のネタを発見し「脱原発」に飛びついた。必要なのは科学的データではなく、共通の敵である。神をもたないカルトはあるが、悪魔をもたないカルトはない。p.142
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左翼的なメディアの問題と政治の流れをいろんな実例で述べる本 問題あるのは事実だけど、これでリベラルの終焉というのはちょっと全体化しすぎかな。政治のところは各時代の流れの紹介だけになっている。 事実を伝えるだけじゃなくて方向性をつけようとする、地方紙は国政と接点が少ないので批判を...
左翼的なメディアの問題と政治の流れをいろんな実例で述べる本 問題あるのは事実だけど、これでリベラルの終焉というのはちょっと全体化しすぎかな。政治のところは各時代の流れの紹介だけになっている。 事実を伝えるだけじゃなくて方向性をつけようとする、地方紙は国政と接点が少ないので批判をしやすい、戦争を煽るほど新聞が売れる、不安を煽る。 社会に対して漠然と不満を持った人に問題を与える。テレビ視聴者に合わせてワイドショーが増える、
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朝日新聞の従軍慰安婦報道問題や、脱原発運動のおかしさのほか、古賀茂明や孫崎享らのメディアでの発言、大江健三郎や内田樹といった文化人の論考などをとりあげて、戦後民主主義の観念論的な立場が日本社会において変えられることのないまま残りつづけていることを、厳しく批判しています。さらに返す...
朝日新聞の従軍慰安婦報道問題や、脱原発運動のおかしさのほか、古賀茂明や孫崎享らのメディアでの発言、大江健三郎や内田樹といった文化人の論考などをとりあげて、戦後民主主義の観念論的な立場が日本社会において変えられることのないまま残りつづけていることを、厳しく批判しています。さらに返す刀で、現在の自民党政権に対しても、将来の日本が直面する課題から目を背けている点では、戦後民主主義の陥っている問題からけっして無縁ではないと批判しています。 現代のリベラルな立場に立つ論者たちの迷走ぶりを批判することに終始しており、戦後民主主義を「敗者の戦後史」としてえがき出した本とはいいがたい内容だと思いました。ただ、戦後民主主義のオピニオン・リーダーと目されることもある丸山眞男の洞察にもとづいて戦後民主主義の不甲斐なさを批判するという本書の根幹のコンセプトじたいは、興味深く感じました。
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信夫氏の左翼に対する熱い思いを垣間見ました。 日本の左翼は定義が狭すぎて、共感できる人が少ないのが問題なんだと思うなー。あと、自民党の幅が広すぎて明確な対立軸を出せないのではないのかな。 人の感情に直接反応させる右翼に比べて、左翼は賢そうだけど 感情に届かないので結局それでは何も...
信夫氏の左翼に対する熱い思いを垣間見ました。 日本の左翼は定義が狭すぎて、共感できる人が少ないのが問題なんだと思うなー。あと、自民党の幅が広すぎて明確な対立軸を出せないのではないのかな。 人の感情に直接反応させる右翼に比べて、左翼は賢そうだけど 感情に届かないので結局それでは何も変えられない。大多数の人間は感情で動くものなので、大多数には響かないのではないかな。
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リベラル思想を滅ぼしてはいけない。あの戦争敗戦は何だったか。保守主義が勝っているわけではない。安倍さんの政治はたんに経済優先ではないのか。
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戦後レジームからの脱却というスローガンに対し、今の状況には最早合わず、日米同盟の続く限りは、戦略上もその方が良いという考えには賛成だ。しかし、それがいつまで続くのか。幕引きの時に、彼の言う空気を醸成しておく事が重要だ。さもなければ、タイミングを担う政治が、その時に適切な判断をする...
戦後レジームからの脱却というスローガンに対し、今の状況には最早合わず、日米同盟の続く限りは、戦略上もその方が良いという考えには賛成だ。しかし、それがいつまで続くのか。幕引きの時に、彼の言う空気を醸成しておく事が重要だ。さもなければ、タイミングを担う政治が、その時に適切な判断をするとは限らないからだ。
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著者がアゴラ他に書いている記事と軌を一にするもの。 非常に論理的かつ明快な論旨だが、初めて接する読者からすると省略が多くてわかりづらく感じる可能性はある。 現代保守を代表する論客と思えるが、著者からすると当たり前のことを当たり前に主張しているだけかもしれない。 著者に賛成す...
著者がアゴラ他に書いている記事と軌を一にするもの。 非常に論理的かつ明快な論旨だが、初めて接する読者からすると省略が多くてわかりづらく感じる可能性はある。 現代保守を代表する論客と思えるが、著者からすると当たり前のことを当たり前に主張しているだけかもしれない。 著者に賛成するか反対するかはともかく、一読の価値はある。
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朝日新聞と民主党と左翼と自称リベラルがクソなのが再確認できましたw 普通の国になろうよというごく当たり前な主張です。それを理解できない奇人変人が多い日本の現状なんですけど。。。
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戦後日本のオピニオンリーダーとされてきた「戦後リベラル派(左翼)」の総括。 朝日新聞から始まり、毎日新聞、日本社会党、民主党、60年安保のリーダー格の清水幾太郎と丸山真男、さらに70年前後の全共闘から大江健三郎、また最近話題の古賀茂明、孫崎亨等々を俎上に載せて、一刀両断というより...
戦後日本のオピニオンリーダーとされてきた「戦後リベラル派(左翼)」の総括。 朝日新聞から始まり、毎日新聞、日本社会党、民主党、60年安保のリーダー格の清水幾太郎と丸山真男、さらに70年前後の全共闘から大江健三郎、また最近話題の古賀茂明、孫崎亨等々を俎上に載せて、一刀両断というよりは、執拗に切り刻む感じで展開していく。 戦後リベラルの話の中に突然小沢一郎が飛び出してきたり、最後は、本のタイトルから離れて日本政府の債務過多に話が飛び、「小さな政府」を目指すべきと結んでいるのは、タイトルとは違う結末に「あれれ?」という感じ。 戦後リベラル派が世論を席巻した事実は詳細に記述されているが、サブタイトルの「なぜ左翼は社会を変えられなかったのか」という点については、本文の中では、「その最大の原因は、自民党が英米の保守党とは違って、良くも悪しくもイデオロギーを持たないからだろう。それは特定の政治的主張のもとに集まる結社というよりは、地元の面倒を見る政治家とその個人後援会の集合体であり、野党はこれに対抗できる集票基盤を持たない」と断定しているが、本当にそうだろうか? 別の個所では、「左翼マーケットは意外に大きいのだ」と言っている。 過去には非自民の細川内閣や、村山内閣、そして直近の民主党内閣が出来たが破綻している。この問題をもう少し掘り下げて欲しかった。 個別には興味のある個所もあるのだが、全て断定してゆく文体にやや食傷気味になり、全体を読み終えて、何かスッキリせず消化不良の感じが残った。
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※このレビューにはネタバレを含みます
池田信夫さんの新著。 いわゆる「戦後リベラル」なるものの影響力の低下について論評している。池田さん自身、学生時代は左翼系の団体に所属していた。仲間4人が殺されたとかなり衝撃の事実も書かれている。就職でも朝日新聞から内定をもらっていることからも池田さん自身もある程度は左寄りであったということも言えるだろう。 まず第一章は、慰安婦報道や福島原発の吉田証言報道の問題で地盤沈下も激しい朝日新聞から始める。朝日新聞の主張こそが、戦後リベラルをある意味で代表するものでもあるからだ。慰安婦問題については池田さんもNHK時代に初めに持ち込みネタとして取材を行ったということで曰くつきでもあり、その分相変わらず舌鋒も鋭い。実際に朝日新聞の問題は、構造的な問題であると指摘する。それが多くの社員が分かっている中で変わることができないのは、メインの読者層である六十歳代に合わせて記事を書くとそうなるという。池田さんが非常勤で教えているクラスではここ三年は新聞を読んでいる生徒はゼロだったらしい。その意味でも朝日新聞の行動は営業方針としては正しいという。またメディアはしばしば信念などというものよりも売上げによって記事を作るようになるとのことで、それは戦前のメディアで正しくそうであったという。また逆に信念に基づいていないが故に、ここまで対応が遅れたというのが見立てだ。 第二章は、ニュースステーションで論議を起こした古賀茂明などの「平和主義」について。特に憲法九条について、平和について希求するのであれば、論点が異なるとの見解。憲法などではなく「空気」に支配される日本という国の特色について述べ、「みんながボトムアップの「空気」で決め、少数派を排除する日本は「危険な国」なのだ」と締める。後の章でも、この実質支配をしている空気を変えることは憲法を変えることよりも難しいという。 第三章はやや古く、軍隊ではなくメディアこそが商売のために戦争をあおったということ。これがその後の章にも続く。 第四章は原発について。朝日新聞が日本経済に最大のダメージを与えたのが、原発稼働阻止の雰囲気を作ったことだと批判する。「「原発ゼロ」を打ち出したときも「できるかできないか考えないでゼロにしよう」という主張だった」と半ばあきれ気味に振り返る。元々は地球温暖化などの関連もあり、原発推進派だったのを民主党に迎合したとまで言う。それもまた営業方針としては正しいとするも、記者の方もわかっていないわけではないとも指摘する。 第五章は、派遣社員問題で、章題が「労働者の地獄への道は善意で舗装されている」としている。厚労省と朝日新聞が手を組む正社員の保護がますます格差を拡大しているのだとほぼ正しく指摘している。 第六章は、進歩的文化人について。原発問題への反応について、柄谷行人、中沢新一、内田樹、大江健三郎などが劣化した進歩的文化人として個人攻撃される。 第七章は、政治について。ここで池田さんは、小沢の没落については、残念に思っていることがにじみ出ている。 小沢の『日本改造計画』に書かれた小さな政府と彼の政治力に期待していた。民主党のときにも思い知ったが、政治家が選挙で選ばれる以上、誰がなっても地元利益や特定団体やゼロリスクを志向して痛みのある政策を実行できない。 第八章は「戦後リベラル」について。丸山眞男を援用して、共産党・社会党などの没落について解説している。 第九章は、左翼の敗北について。池田さんはピケティの解説本も書いているが、この章ではピケティの格差問題の指摘について、日本では問題は別のところにあり、それは社会保障問題であり、年金と医療費と政府債務の問題だと指摘する。確かに『21世紀の資本』では、政府債務にも言及しているが、それほど深刻な問題と取られらていないふしもあった。また、年金についても現状のペイゴー方式の問題にも触れられていが解決可能な問題として扱われていた。日本では、問題は認識されながらも解決を後回しにする力学が働くため、崩壊しきってしまうまで解決されないようになっているといつもの主張をここでも繰り返している。 最後に、小さい政府を目指して、普通の国になるべきだという主張で締める。 朝日新聞の件があって、慰安婦、原発、労働問題、などこれまでの「リベラル」批判の総まとめという感じである。池田さんの主張を一通り理解できる本。 個人攻撃に関してはもう少し穏健な表現があろうかとは思うが、それもまた営業方針としては正しいのかもしれない。
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