HARD THINGS の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
ハイテク業界での有名ベンチャ投資ファンドのアンドリーセン・ホロウィッツの共同創業者のベン・ホロウィッツが自身の企業経験とそこから得たCEOとしての教訓を惜しげもなく披露したもの。 前半は、著者がラウドクラウド社を創業し、ITバブルなどの中で、そこからハードウェア部分を売ってソフトウェア事業だけを切り出したオプスウェア社を成長させた後に1600億円でHPに売却するまでの8年間のストーリー。後半は、著者のその経験に基づくCEO論が綴られる。そして、最後は自身の投資家としての現状で締めるという構成。 最初の起業ストーリーも、マーク・アンドリーセンなどIT界の著名人も多数登場して面白いのだが、白眉は著者のCEO論だろう。「人生は苦闘だ」- カール・マルクスの言葉を引き、「苦闘とは、そもそもなぜ会社を始めたのだろうと思うこと」という文から始まる18個の「苦闘」が並ぶ文に想いが込められており、迫力がある。苦闘は不幸で孤独で無慈悲だと書いた後、それがゆえに「苦闘は、偉大さが生まれる場所である」と諭す。 自身の経験だが、あるとき日本の中小企業の創業社長にもインタビューをすることがあった。その社長は、比較的大きな企業に所属している自分たちに対して、「悪いこと言わないから起業なんかしない方がいいぞ」と言った。そして豪快快活で比較的心も太そうなその社長は、「何もかもなくすかもしれないという恐怖で眠れないなんてことはなかっただろ」と言った。起業するということは、ある意味でそういうことなんだと思う。そのときから起業家に対してさらに敬意の念を抱くことになったことをこの本を読みながら思い出した。 起業にしても多くの人の目に入るのは、成功して残った事例だけだが、その他にうまくいかなかったがゆえに目にも入っていない多くの挑戦がある。そして挑戦のさなかにいるときには、自分がどちらの側にいるのか、わからない長いときを過ごすのだろう。 CEOの心得として著者は、解雇や降格の心得、人・製品・利益の順に大切にするという物事の守るべき優先順位、社員教育の重要性、社内政治や野心の制御、肩書きや昇進、コミュニケーションの重要性、スケーリングの準備、CEOの責任と評価、売却の判断、などたくさんの実際的で示唆に富む言葉が並ぶ。そういった中で第一に感じたことは、不確実な世界の中で大切なことは結局は誠実さであるのではということだ。ドラッカーが、マネージャーに求める資質として「真摯さ(Integrity)」を求めたが、そのことにまさに呼応していると言えるのではないかと。 原題は”HARD THINGS ABOUT HARD THINGS”。困難についての困難。よいCEOになるには、CEOになるしかないと言うけれども、この本はCEOでなくとも勉強になるところあると思うよ。苦闘する人におすすめ。
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ベンチャーの社長達が、非常に共感したといったコメントを書いていたので読んで見たが、 残念ながら、この本に書かれているような壮絶な経験をしてきておらず、まだまだ自分が甘い、ということだけがわかった。 冒頭に著者の経験の全体像が示され、 中盤以降は、ここのシチュエーションにおける、...
ベンチャーの社長達が、非常に共感したといったコメントを書いていたので読んで見たが、 残念ながら、この本に書かれているような壮絶な経験をしてきておらず、まだまだ自分が甘い、ということだけがわかった。 冒頭に著者の経験の全体像が示され、 中盤以降は、ここのシチュエーションにおける、 対応のポイントが具体的に記載されている。
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