モダン の商品レビュー
「MoMA」で、アートにかかわるさまざまな仕事に就いている人々の思いを描く短編集。 面白くない訳がない。 アートを心から愛しているからといって、霞を食べて生きているわけではない。 働く上での困難は、数字やデータで答えが出にくいものと関わるだけに、時により一層、容赦なく生々しいま...
「MoMA」で、アートにかかわるさまざまな仕事に就いている人々の思いを描く短編集。 面白くない訳がない。 アートを心から愛しているからといって、霞を食べて生きているわけではない。 働く上での困難は、数字やデータで答えが出にくいものと関わるだけに、時により一層、容赦なく生々しいまでに現実的。 フクシマや9.11などの歴史に残る事件をからめた物語では、よりその感覚を強く感じた。
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ニューヨーク近代美術館MoMAを舞台に、 そこにたずさわる人々に起こる5つの出来事を描いた短編集。 MoMAという特別な空間に包まれた人と人との関係が、優しく愛おしい。 1番目は、フクシマの原発事故とアメリカの画家 アンドリュー・ワイエス の作品 『クリスティーナの世界』をめぐ...
ニューヨーク近代美術館MoMAを舞台に、 そこにたずさわる人々に起こる5つの出来事を描いた短編集。 MoMAという特別な空間に包まれた人と人との関係が、優しく愛おしい。 1番目は、フクシマの原発事故とアメリカの画家 アンドリュー・ワイエス の作品 『クリスティーナの世界』をめぐる物語。 生きることを望み、前進すること以外眼中にない、 まっすぐでひたむきな一人の人間として描かれる絵の中のクリスティーナ。 彼女が静かにフクシマの復興を後押ししているよう。 そして、フクシマの悲惨な出来事のあとの、 いつもと変わらない美術館の満開の桜吹雪が、静かに力強く感じられた。 2番目は、MoMAの監視員スコットのストーリー。 スコットが未確認アーティストに出会うという、ちょっとおかしくて温かい話。 スコットの知り合いは、ピカソの絵との出会いを 「事件に遭遇するようなものだ」と表現した。 人間の心の奥深くに潜む闇、醜さを超えたところにある本物の「美」との出逢い。 スコットはピカソを理屈ではなく体感する。 美術に対して知識を持たないスコットの目から語られるピカソに親しみを感じた。 3番目のストーリーでは、絵画ではなくマシンアートについて語られる。 若きMoMA館長アルフレッド・バーが始めたマシン・アート展。 子どもの時にそれを見たジュリアは、その世界に魅了されて産業デザイナーになる。 「見えないところで役に立っていて、しかも美しい」 というアルフレッド・バーの言葉に導かれて。 やがて、そのことが彼女の未来を切り拓くことに。 4番目は、「マティス ピカソ展」にまつわる物語。 『楽園のカンヴァス』で大活躍したティム・ブラウンが登場する。 この短編集の中で、最も力の入った作品ではないかと思う。 語り手はアシスタント・キュレーターのローラ。 前年に起こった9・11事件で友人を失ってPTSDを患い、 苦しみながらMoMAでの勤務を続ける。 この章では、マティスとピカソの友情について触れられ、 2人の作品の対比が示されているのが興味深い。 5番目は、 MoMAで一年間の研修を経験する日本企業のキュレーター麻実が語るストーリー。 美術館に併設されたデザインストアのウィンドウにディスプレイされた日本の箸。 ふと感じた違和感を同僚のパティに漏らす。 麻実とパティとの心温まる交流の物語。 もしかしたら、原田マハさんの実体験なのかなと、想像してしまった。
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「ロックフェリーギャラリーの幽霊」が大好きでした!! どのお話も心温まる優しいお話で、幸せな気持ちになりました♡
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MoMAを舞台に5人の視点で語られる短編集。マティス、ワイエス、ピカソなどの画集を開きながら没入していた...。9.11や3.11も差し込みながらそれぞれの心情を豊かに描く。「私の好きなマシン」が好み。 「知らないところで、役に立っていて、それでいて美しい。そういうものを『アート...
MoMAを舞台に5人の視点で語られる短編集。マティス、ワイエス、ピカソなどの画集を開きながら没入していた...。9.11や3.11も差し込みながらそれぞれの心情を豊かに描く。「私の好きなマシン」が好み。 「知らないところで、役に立っていて、それでいて美しい。そういうものを『アート』と呼ぶ」―わび・さびっぽさに心惹かれた。
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アート小説の最先端をゆく【原田マハ】が、ニュ-ヨ-ク近代美術館(MoMA)を中心に、モダン・アートの世界とMoMA所属スタツフの真摯な姿を描いた五つの短編集。東北大震災と放射能汚染(2011年3月)の懸念から貸与中の絵画の引き揚げに派遣された展覧会ディレクタ-杏子ハワ-ド、...
アート小説の最先端をゆく【原田マハ】が、ニュ-ヨ-ク近代美術館(MoMA)を中心に、モダン・アートの世界とMoMA所属スタツフの真摯な姿を描いた五つの短編集。東北大震災と放射能汚染(2011年3月)の懸念から貸与中の絵画の引き揚げに派遣された展覧会ディレクタ-杏子ハワ-ド、MoMA初代館長アルフレッド・バ-・ジュニアの情熱とバ-足跡の由来、テロによるツインタワ-倒壊の犠牲となったMoMAの職員・・・。「知らない処で役に立っていて、それでいて美しい。それをアートと呼ぶ」(初代館長バ-)。
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Momaで働くさまざまなポジションの人から見るアートとMomaの歴史。展覧会ディレクター、警備員、Momaがきっかけで工業デザイナーになったアーティスト、アシスタントキュレーター、研修員、さらにそこに東日本大震災や9.11が絡まり、その時代をアートがどう生きたのか見る様で面白い。...
Momaで働くさまざまなポジションの人から見るアートとMomaの歴史。展覧会ディレクター、警備員、Momaがきっかけで工業デザイナーになったアーティスト、アシスタントキュレーター、研修員、さらにそこに東日本大震災や9.11が絡まり、その時代をアートがどう生きたのか見る様で面白い。 読んでいていたたまれないのは第一話、福島に貸し出されていたワイエス「クリスティーナの世界」の話。実話かどうかわからないが、海外から見た震災とその対応、福島の人の思いが交差して、そこに半ば板挟みになる日系の主人公。 気になるには初代館長のアルフレド・バー。この人に関する本も読んでみたくなる。 マティスとピカソにまつわる、9.11のPTSDに悩む主人公の話も読んでいて辛いが、「楽園のカンヴァス」のトムとティムが出てきて、実在の人物だったんだろうかと少しワクワクできる。またゲルニカへの言及も多いので、次に控える「暗幕のゲルニカ」を早く読みたくなる! 最後の日本人研修員の話は、原田さんがMOMAに派遣された当時を思わせる。日本から派遣されて何をするんだろうと興味津々だったので、興味深く読ませてもらった。MOMAで働けなくともニューヨークに住みたくなる。
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短編集で、サクっと読める。 楽園のカンヴァスとの繋がりも垣間見えて、ちょっと嬉しい。 本物のピカソの絵をみてみたい。
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ニューヨーク近代美術館MoMAを舞台にした5つの短編。アートをめぐる出会いと別れを綴る。911や311も絡んでくる。おー❗今、丁度 「日曜美術館」でも被災文化財修復を特集してるや(←20/1/26記入) あのティム&トムコンビも登場。『楽園のカンヴァス』と時系列を並べながら...
ニューヨーク近代美術館MoMAを舞台にした5つの短編。アートをめぐる出会いと別れを綴る。911や311も絡んでくる。おー❗今、丁度 「日曜美術館」でも被災文化財修復を特集してるや(←20/1/26記入) あのティム&トムコンビも登場。『楽園のカンヴァス』と時系列を並べながら読むのが楽しかったです。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
あらすじ MOMAが舞台の5つの短編集。 中断された展覧会の記憶 3.11のとき福島の美術館に貸し出しされていたアンドリューワイエスのクリスティーナの世界。上司からそれを引き上げるよう命じられた日本人のMOMA職員杏子ハワードの葛藤。 ロックフェラーギャラリーの幽霊 MOMA監視員スコットスミスが出会ったアヴィニョンの娘たちを閉館ぎりぎりまで見つめる青年。怪しいが身なりはきちんとしている。特に靴は。アルフレッドバーと名乗るが、ピカソのゲルニカを第2次世界大戦の戦火から守った初代館長アルフレッドバーなのか、、しかし昨日亡くなったことを告げる新聞が目に入る。そして神出鬼没、正体不明のアーティスト「バー」がMOMAのアヴィニョンの娘たちのまえに足跡でメッセージを残したと判明する。 私の好きなマシン インダストリアルデザイナーのジュリアはMOMAに勤める友人のパメラから二つ知らせがあると言われる。一つ目、MOMAの初代館長のアルフレッドバーが亡くなったと聞かされる。ジュリアの実家は書店。幼いころは家族でMOMAと図書館によく出かけた。MOMAマシンアートの展示会で若き日のアルフレッドバーと出会う。マシンパーツについて「僕たちが知らないところで僕たちの生活の役に立っているものだ。それでいて美しいなんてすごいと思わないかい?僕はそういうものをアートと呼んでいる」と言われた言葉がいつまでも残っていた。そしてデザインを学びながらMOMAに何度となく通った。しかしアルフレッドは理事長のステファンクラークとの確執でMOMAを去ってしまう。そんなことを思い返していた。そしてパメラからの二つ目はMOMAのパーマネントコレクションとなる電卓をデザインしていたジュリアにスティーブジョブズからアップルのPCデザインの依頼だった。デザインをアートの領域に高めたのはMOMAだと。 感想 MOMAに勤める人々の短編集。短編間で同じ人物がちらりと登場したり、楽園のカンヴァスのティム、トムの名前も出てきたりと気づきが楽しめる。 印象に残っているのは、初代館長のアルフレッドバーのエピソード、ピカソのゲルニカが戦火を逃れMOMAに移送され、さらには戦争が終わるまでは決して戻さないとの約束が守られたことなど事実に基づいたエピソードが感情豊かに描写されている部分に胸打たれた。3.11がアメリカ在住の日本人の視点で描かれているのも新鮮だった。
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大好きな本。ぜひ、手元に置いて、言葉の一つ一つを味わうように読みたいとそう思った。 3.11と9.11を思い出して泣けました。 今回のコロナの中でも、森美術館の南條さんが、解説と展示紹介をFacebookにアップしてくれていたことを思い出しました。 若い時に読んでたら、きっと美術...
大好きな本。ぜひ、手元に置いて、言葉の一つ一つを味わうように読みたいとそう思った。 3.11と9.11を思い出して泣けました。 今回のコロナの中でも、森美術館の南條さんが、解説と展示紹介をFacebookにアップしてくれていたことを思い出しました。 若い時に読んでたら、きっと美術の道にあこがれてたな〜。
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