1,800円以上の注文で送料無料

怪獣使いと少年 増補新装版 の商品レビュー

4

4件のお客様レビュー

  1. 5つ

    1

  2. 4つ

    2

  3. 3つ

    1

  4. 2つ

    0

  5. 1つ

    0

レビューを投稿

2023/05/03

ウルトラマンシリーズを書いた4人の作家についての解説。ウルトラマンのシリーズが単なる子ども向けの話で終わらなかったのには、それぞれの作家の思いがあったのだと再認識できた。ただ著者の思いが強く解釈に強引さもあるか? とときどき思った。

Posted byブクログ

2017/02/26

 本書は、ウルトラシリーズをはじめとする特撮ドラマの脚本を多く手がけたライター、金城哲夫、佐々木守、上原正三、市川森一の4人に焦点を当て、彼らの生い立ち、来歴、若き日に書いた特撮とは無関係の作品までを精査し、可能であれば直接話を聞き、作品に込められたメッセージを考察した本である。...

 本書は、ウルトラシリーズをはじめとする特撮ドラマの脚本を多く手がけたライター、金城哲夫、佐々木守、上原正三、市川森一の4人に焦点を当て、彼らの生い立ち、来歴、若き日に書いた特撮とは無関係の作品までを精査し、可能であれば直接話を聞き、作品に込められたメッセージを考察した本である。金城、上原は沖縄出身、佐々木は一時共産党員であり、市川は長崎出身のキリスト教徒であるが、作者たちのこうした背景が思わぬ形で作品に反映されていて、読んでいて興味が尽きなかった。  佐々木守は、ウルトラシリーズの主役はヒーローではなく、怪獣だと言う。確かに、ウルトラシリーズ最初の番組ウルトラQには、超人ヒーローは登場しない。そうするとヒーローは、あくまで怪獣を描くために必要との発想から登場した、本来は脇役のキャラクターということになる。  そう言えばウルトラシリーズには、「故郷は地球」(ジャミラ)、「ノンマルトの使者」(ノンマルト、ガイロス)等、正義の味方が悪を倒す爽快感からはほど遠く、見た後でどうしたらいいのかわからないような居心地の悪さを感じさせるエピソードがある。こういう話ほど何年たっても心に残っているような気がするが、それは、これらこそがウルトラシリーズの本質だからなのかもしれない。  怪獣とは、現在の世界と調和して生きていくことができず、存在を許されない生物である。子供の落書きから生まれ、ほとんどただ寝ているだけのガヴァドンですら、最後はウルトラマンに駆除されていった。怪獣が疎外されている者の象徴だと考えると、その咆哮や宇宙人の言葉が少し違った、深い響きを持って聞こえてくる。  大変面白い本だが、本書をまず手に取るのは特撮ファンだろうから、特撮以外の作品についての記述は、彼らが書いた特撮作品の考察に絶対必要なものにとどめ、焦点をもう少し絞った方が読みやすいのでは、という印象を持った。私はどの作品についての記述も興味深く読んだが、読み手によっては、少し冗長に感じるかもしれない気がした。  それでも、ひとつひとつの作品には作者の深い思いが込められていることが実感できる。砂川裁判も、琉球処分も、方言札も出てくる。特撮ファンのみならず、社会事象に興味を持つ多くの人に読んでほしい本である。

Posted byブクログ

2016/01/16

う〜む、期待していた内容とだいぶ異なってたな。ウルトラに関する記述だけだと分量もすっきりしたろうに。

Posted byブクログ

2015/05/12

1993年、宝島社から刊行された「怪獣使いと少年 ウルトラマンの作家たち」から22年の歳月を経て、88ページにも及ぶ新たな検証、批評記事を加えた「増補版」。 モノクロからカラーへと急成長するテレビ界の発展期、日本経済の高度成長期、安保闘争、沖縄返還、オイルショックなど「昭和」とい...

1993年、宝島社から刊行された「怪獣使いと少年 ウルトラマンの作家たち」から22年の歳月を経て、88ページにも及ぶ新たな検証、批評記事を加えた「増補版」。 モノクロからカラーへと急成長するテレビ界の発展期、日本経済の高度成長期、安保闘争、沖縄返還、オイルショックなど「昭和」という時代の激しい流れの中で、戦中、戦後を生きて体験した経験を元に日本という国の「有り様」を≪ウルトラマンと怪獣が居る世界≫を通して、これからを生き、日本を築いてゆく力となる子供達にメッセージとして発信し続けた脚本家の金城哲夫・佐々木守・上原正三・市川森一 ら、それぞれの人物像を通して作品思想を検証した批評書。 その内容は制作現場の舞台裏や「楽屋落ち」といった特撮マニアの飛付きそうな話ではなく、怪獣という存在を使ったストーリーを描いたそれぞれの脚本家が生まれてから体験し、視てきた事を通して戦後の日本人が背負ってきた事、そしてこれからの世代が「背負わされて行くこと」を20分足らずのドラマの中に凝縮した強く、重いメッセージの数々を白日の下に晒してなお「これからの日本の有り様」を占う書としてはあまりに切なく、痛みすらある。 「怪獣使い」の少年達は今、みな鬼簿に載り、声を聞くに叶わなくなってしまった。ただ、この本を読んで、一番ショックだったのは、上原正三氏の描いてきた話のように今日の「沖縄」の≪存在≫が70年前と何ら変わっていない事、市川森一氏のメッセージの通り、日本が米国の「属国」として戦に駆り立てられてゆくであろう事の先見に「怖いものを視た」気がする。きっとこれが怪獣の『真の姿』なのだろう。

Posted byブクログ