偽詩人の世にも奇妙な栄光 の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
⚫︎受け取ったメッセージ 何かを生み出すとは? 何もないところからは何も生まれない。 ⚫︎あらすじ(本概要より転載) 吉本昭洋は中学2年の時、詩に出会った。教科書に載っていた中原中也の詩だった。以来彼は、詩を愛するようになり、生活の大半を詩に捧げるようになった。しかし、彼は詩を作らなかった。いや、作れなかったのだ。詩を愛しながら、詩作の才能の欠如を自覚した彼は、大学卒業後、商社に入社し、ビジネスマンとして世界各国を渡り歩く生活を送ることになった。しかしその後、出張先のニカラグアで、ある衝撃的な事件に遭遇する……。 ⚫︎感想 誰よりも詩を愛しているのに、自分では詩を書けない男の顛末。大変興味深く面白かった。 何かに憧れ、でもその才能が自分にはないと知るときの大なり小なりの悲しみは、誰しも経験があるのではないだろうか。 最後の大町蜥蜴の文章が全てだろう。たしかに言葉は真似から始まり、どこからが借り物で、どこからが、自分の言葉なのかなんてわからない。吉本の、並々ならぬ詩への真剣さと愛する心は、偽詩人と呼ばれても他を追随させない凄まじさがあった。
Posted by
これはなんだか懐かしい…スラップスティック、入ってます。 節度あるカート・ヴォネガットか、キッチュじゃなくてペダンティックな筒井康隆か。無理に収まりつけなくてもいいのになあ。 文体はしつこくない(粘りの足りない?)金井美恵子~。
Posted by
中学時の明けても暮れても中原中也から、ヨーロッパ、古典、古今東西の詩への遍歴。詩への深い洞察を得ながらも自分では書けない。商社に就職、世界を渡り歩くうち、各地の詩祭に参加するようになる。帰国後、即興詩合戦、ネタは自由に創造的に翻訳した詩祭の詩集。 オリジナルであるかどうかの判断...
中学時の明けても暮れても中原中也から、ヨーロッパ、古典、古今東西の詩への遍歴。詩への深い洞察を得ながらも自分では書けない。商社に就職、世界を渡り歩くうち、各地の詩祭に参加するようになる。帰国後、即興詩合戦、ネタは自由に創造的に翻訳した詩祭の詩集。 オリジナルであるかどうかの判断にこそ問われる、知識と愛。
Posted by
リズム、リズム、リズム。訥々、緩急、強弱、シンコペーション…言葉の波のリズムに襲われるような文章。 自虐と自嘲と自戒のぐるぐる巻き。
Posted by
http://tacbook.hatenablog.com/entry/2016/01/17/172334
Posted by
小説なのではあるが、詩論として、詩とはなにか、という問いに対する答えとして読むと一定の納得が得られる。 主人公は若い時から詩を読むことが好きだけれども自分の筆としてものすことが出来なかったが、翻訳を通じて自分の筆に乗せることが出来るようになった、というくだりが感動的である。が...
小説なのではあるが、詩論として、詩とはなにか、という問いに対する答えとして読むと一定の納得が得られる。 主人公は若い時から詩を読むことが好きだけれども自分の筆としてものすことが出来なかったが、翻訳を通じて自分の筆に乗せることが出来るようになった、というくだりが感動的である。が、のちにポエトリーリーディングに出るようになった時に何故正直に「翻訳だ」と言い出せなかったのか、コトが大きくなるまでに正直に言えなかったのか、というあたりがストーリーの犠牲になっている。そうでもしないと話が進まないから、というのはちと乱暴かなぁ。
Posted by
- 1