日本文学100年の名作(第8巻 1984-1993) の商品レビュー

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2024/08/14

極楽まくらおとしの図 深沢七郎 楢山節考も本作も姨捨山的な思考のものがたり。 捨てる方も捨てられる方も血縁者であり、そこにおどろおどろしさがありました。60 美しい夏 佐藤泰志 憎めないふたり。東京を出たい、田舎には帰りたくない、郊外都市からは拒否される。幸せが寄ってこないのは...

極楽まくらおとしの図 深沢七郎 楢山節考も本作も姨捨山的な思考のものがたり。 捨てる方も捨てられる方も血縁者であり、そこにおどろおどろしさがありました。60 美しい夏 佐藤泰志 憎めないふたり。東京を出たい、田舎には帰りたくない、郊外都市からは拒否される。幸せが寄ってこないのは誰のせいなんだろう?憎めないふたりなのに。80 半日の放浪 高井有一 定年後あるある。この人、つまらない老人になっていくんだろうな。それだけのこと。カスハラ老人予備軍を意識しての小説だとしたら面白いかも。40 薄情くじら 田辺聖子 小気味いい会話であるが、定型・紋切り型で「こんな感じなら面白いんでしょ?」っていう作者の雰囲気だった。30 慶安御前試合 隆慶一郎 質の良い(いい意味で小品の)テンポもよく分かりやすい映画を観たような活劇小説。60 力道山の弟 宮本輝 戦後の日本でしかも尼崎、胡散臭い香具師、場末の雀荘、人情に厚いオヤジとうまく取り繕うオフクロ。そんな雰囲気が文章から伝わってくる。粋なラストもよい。80 出口 尾辻克彦 中学生の下校時に通学路に泥の塊のような物体が落ちていた。自分の300Мほど前に弟がトボトボ歩いているのが見えた。自分が追いつき弟の服装をみると、学ランの下は学校指定の紺色のジャージであった。「どうした?」と聞くと弟はそっけなく「別に」と答えた。足元を見ると、弟の白いシューズが何故か泥のような茶色い汚れが付いていた。弟を追い越し先に家について着替えてしばらくすると、弟が帰宅したのがわかった。「帰りにうんこ漏らしたので、ズボンをジャージに着替えてきた」と母親に伝えていた。そこですべての点が繋がった! この小説を読んでたら、上記の思い出がよみがえった。70 掌のなかの海 開高健 ひよこの眼 山田詠美 中学生の淡く儚い恋模様と、死の宿した生のコントラストが絶妙だった。あとラスト軽くホラーがまぶされてるのもよかった。70 白いメリーさん 中島らも 結局ヒトが一番怖い。あやふやなウワサを解明していけばいくほど、現代社会の脆弱な人間関係が露見し壊れていくようすはひとひねりが効いていた。50 鮨 阿川弘之 イッセー尾形のひとり芝居のような小説。しっかりしていて安心して読めるんだけど。50 夏草 大城立裕 沖縄戦の惨状のなか、生きることを諦めかけた夫婦にとって手榴弾は主体的に死ぬことの逆説的な希望となっていた。そこから全く反転し、絶望の中でも生きる希望を持つようになっていくさまは見事だった。80 神無月 宮部みゆき 序盤で筋は見えるものの、そこを踏まえたうえで読ませる人情話。しかもオチまで書かない粋なラストもよかった。60 ものがたり 北村薫 耕三が茜を無意識にナメてるのが伝わった。意図してるのかはわからないが。40

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2018/01/12

本は読んでいないが映画で触れていた作家が3人。ああ、あの作品の原作者かと発見と繋がりを感じた。 佐藤泰志の他の作品を読んでみたい。

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2015/06/25

読み出して、蘇る80年代のあまりの圧迫感に、最後まで読めるかなーと不安になったが、杞憂であった。 「薄情くじら」○、「出口」傑作!

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2015/04/07

日本文学100年の名作、第8巻。1984~1993年に発表された短編を収録。表題作『薄情くじら』は田辺聖子の作、収録作家は深沢七郎、佐藤泰志、宮本輝、山田詠美、中島らも、宮部みゆきなど。 佐藤泰志は近年、再評価されて、映画も公開されたが、『美しい夏』はある意味で泥臭かった佐藤泰志...

日本文学100年の名作、第8巻。1984~1993年に発表された短編を収録。表題作『薄情くじら』は田辺聖子の作、収録作家は深沢七郎、佐藤泰志、宮本輝、山田詠美、中島らも、宮部みゆきなど。 佐藤泰志は近年、再評価されて、映画も公開されたが、『美しい夏』はある意味で泥臭かった佐藤泰志らしい短編。流行りそうにないと言ってしまえばそれまでだが、じんわりといい話だと思う。 尾辻克彦『出口』は、8巻の中で一番……いや、既刊8冊の中でも1、2を争うインパクトw お上品な内容ではないが、誰もが経験したことのあるスリリングな戦いをこういう表現に仕上げたところが凄い。とにかく変なエネルギーを感じる1作。 山田詠美『ひよこの眼』は確か読んだことがあったかな。その頃は余り印象に残らなかったが、読み直してみると味わい深い……ような気がするw そういえば山田詠美自体を読まなくなって随分経つなぁ……。 中島らも『白いメリーさん』も、既読。しかしこれのインパクトはかなり強かったようで、読み始めるとぶわーっと記憶が蘇ってきた。分類するなら都市伝説系怪談とでも言うのだろうか。オチを映像で想像するとかなり怖いw 個人的には、『中島らも短編のNo.1』ではないのだが、アンソロジーに収録するならやっぱり『メリーさん』かな……。 全10巻予定のアンソロジーも残り2冊。この先の収録作がどうなるか楽しみ。

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2015/04/04

深沢七郎『極楽まくらおとし図』A 「不要になったものは山の彼方に捨ててくる」「徹底して理性的なリアリストだった」と解説にあり、膝を打つ。 「楢山節考」にも通じるが、庶民の懐に入り込んで描きながらもどうしようもなく透徹した眼差し。 深沢の魅力がひとことで言い表された。 佐藤泰志『...

深沢七郎『極楽まくらおとし図』A 「不要になったものは山の彼方に捨ててくる」「徹底して理性的なリアリストだった」と解説にあり、膝を打つ。 「楢山節考」にも通じるが、庶民の懐に入り込んで描きながらもどうしようもなく透徹した眼差し。 深沢の魅力がひとことで言い表された。 佐藤泰志『美しい夏』A- 「ここのみにて光かがやく」の原作者。自殺者。 村上春樹の影に云々という紹介を読んだことがあるが、初めて触れた。 言いようのない苛立ち。中上の書いた人物が思い出された。 高井有一『半日の放浪』B- これは個人的な感想だけど、いまひとつ伝わらなかった。 田辺聖子『薄情くじら』B+ ケチ臭くなり味覚も復古調になったオジサン。 唐突にもたらされた、父が……という挿話に、急に視界が開けたような。 なかなか面白い。 隆慶一郎『慶安御前試合』B- 罠の張り合い、肚の探り合い。 「無限の住人」の絵柄で思い浮かべることでケレンミたっぷりに。 宮本輝『力道山の弟』B これは再読。 人と人が登場すれば自然と睦み合う。 ただの動物……かと思いきや、語り手の父の行動から心情が察せられ、ああこれが人間だ、と。 純文学の手本。 尾辻克彦『出口』A これは酷い。笑 犬でも馬でもどっちでもええわ。 開高健『掌のなかの海』B- これも申し訳ない。私の未熟さゆえわからず。 ウイスキーの飲み方など知らないし、その飲み方ひとつへのこだわりをかっこよく感じる人生観にも縁がない。 つまりは開高が苦手なのだ。 山田詠美『ひよこの眼』A- 山田詠美は高校の頃に「蝶々の纏足」に強烈に共感していたが、近年の文芸誌に載る軽薄な文体や軽薄な選評に辟易していた。 この作品はちょうどその中間にある。 しかしところどころワンフレーズで殺された。 「好きな男には、呑気な幸せをさずけたいと願う程に大人になっていた」 「吐く息が白くなって行くってことは、体の中があったかいってことだもんな」 「あの人は、私が初めて出会った、人生に対して礼儀正しい人だったのに」 中島らも『白いメリーさん』B+ 間違いない。 いま読めば「呪怨2」が似ている。 阿川弘之『鮨』C こういう小説の跋扈が一番いやだ。 説教くさいじじいは早く消えろ。 大城立裕『夏草』A 戦場小説はあまり好きじゃない。 が、これは戦場を越えて、もっと広い。 成り行きで高まった性欲。しかし成り行きはすでに必然だった。 成り行きで「手榴弾を妻の乳房に押し当てていた」、が、その後の求め合いと改心は必然だ。 宮部みゆき『神無月』B キューブリックの映画みたい。 北村薫『ものがたり』B- 少女が仮託するなら時代劇でなくトレンディドラマなんじゃ……と素朴な疑問。

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