沖縄の不都合な真実 の商品レビュー
沖縄戦が終結して79年目を迎えた。沖縄戦は太平洋戦争に於いてアメリカ軍が本土決戦に挑む前の前哨戦的な位置付けにあり、日本側から見れば本土決戦迄の時間稼ぎ的な要素があったと言われる。それまでの太平洋を囲む様々な闘いで、軍艦も兵力も削られ続けた日本。本土は生産力も兵力も準備が追いつか...
沖縄戦が終結して79年目を迎えた。沖縄戦は太平洋戦争に於いてアメリカ軍が本土決戦に挑む前の前哨戦的な位置付けにあり、日本側から見れば本土決戦迄の時間稼ぎ的な要素があったと言われる。それまでの太平洋を囲む様々な闘いで、軍艦も兵力も削られ続けた日本。本土は生産力も兵力も準備が追いつかず、やがては攻め入ってくるアメリカ軍に対抗する準備が儘ならぬ中で、1日でも多く沖縄に釘付けする事が日本側の使命とされた戦い。アメリカ側の作戦名『アイスバーグ作戦』はその名の由来は解らないが、それまでの太平洋一帯で繰り広げられた様々な闘いでから得られた教訓をこの沖縄が天王山とばかりに集大成的な意味合いを込めたのか、それとも氷の様に打ち砕いた先に、日本本土を打ち砕こうとしたのか。対する日本も陸軍と海軍陸戦隊合わせ9万以上の兵力を終結させて迎え撃った。少しでも長く足止めするには、それまでの島嶼戦で常套手段となっていた水際で迎え撃つ作戦を止め、沖縄の地下にに古くからめぐらされた地下洞窟を巧みに利用しつつ有意な地形で持久作戦を採用した日本軍。結果的には南部撤退により逃げ惑う民間人をも大量に巻き添えにしつつ、悪戯に戦闘を長引かせて損害を拡大させたなど後世評価は二分される。また沖縄県民は子供から老人まで、特に中学生以上は弾薬運びや負傷兵の手当てに狩り出され、洞窟での集団自決など地獄の様相を見せる。ひめゆり部隊、鉄血勤皇隊など多数書籍でその悲劇は語り継がれている。 本書はその様な悲惨な歴史を経て、今も残り続ける米軍基地の問題を取り挙げ、今後将来の沖縄のあるべき姿について言及している。辺野古への移設を決定した当時の民主党鳩山政権。今も埋め立てが進む海岸線の工事、それに絡む地元土建企業や全国最下位の平均収入に対して収入格差が広がる沖縄県公務員の問題。基地から得られる土地の借地料や投入される国庫からの援助資金。様々な利権や力関係が泥沼の様に底なしの混乱を招いている。果たして沖縄から基地を無くすべきか、それとも基地と共に歩む方が県民にとって良いのか。本書は立場的には前者の基地を無くす事を主張するが、沖縄の公的な立場から出される様な、偏った基地の不公平感を無くすべきとか、ジュゴンの生息地が失われるといった自然破壊の問題、アメリカ軍が居ることによる治安悪化などの問題とは関係ない主張となっている。何故なら基地の数や危険性、騒音問題などは余程厚木の方が酷い状況ではあるし、雇用問題において本心から全沖縄県民が出ていって欲しいとは考えていないのではないか、という他の書籍とは一線を画す内容となっている。その最大のポイントは国民の税金が沖縄に投下され続けることは、国民全体の不利益であることばかりか、沖縄県側が基地がない方が得られるはずと主張する9000億以上の利益が本当に上がるなら、それに任せれば良いという立場をとる。現在も毎年3,000億近くの補助金などが沖縄に流れ、一部建設事業者や土地所有者、そして公務員に流れていく歪な構造を明らかにする。その上で、本来はあり得ないと言いながらも、沖縄側が主張する9,000億の利益(中間取引金額が累積されている問題は指摘しつつも)が沖縄を潤すなら、任せればよいとの立場になると考えられる。 民間人軍人合わせて18万以上の死傷者を出した沖縄戦。現在もなおアメリカ軍が大量に駐屯し、海を挟んだ向こう、アジアの龍中国に睨みを効かせる。軍事的には沖縄でなくとも牽制効果は発揮できる様だが、そうした地域的な牽制の意味での軍事力を確保しつつ、沖縄の自然や文化を最大限に活かした観光事業などで、沖縄自身が自律的な経済発展を成し遂げられるなら撤退も一つの選択肢であると考える。沖縄県民自身がオール沖縄の一括りにされる事をどの様に考えているか、戦争世代が居なくなりつつも、祖父母や親から語り継がれてきた沖縄の惨事をどう捉え、どの様な道を若者たちが選択するか。沖縄県民自身しか答えは出せない。 基地問題を語りながらも、沖縄の奥深くに潜む様々な構造的問題を明らかにし、県民自身に答えを問う一冊である。
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基地の巨額な振興資金、基地被害としての格差と貧困、米国による沖縄ナショナリズムの醸成、全基地返還による経済効果試算の非合理さなど、不都合な事実たち。一番怖かったのは、沖縄の政治家が容易に「県民の総意」と発言すること。実際、普天間基地の辺野古移設に関しては、容認派・反対派はほぼ真っ...
基地の巨額な振興資金、基地被害としての格差と貧困、米国による沖縄ナショナリズムの醸成、全基地返還による経済効果試算の非合理さなど、不都合な事実たち。一番怖かったのは、沖縄の政治家が容易に「県民の総意」と発言すること。実際、普天間基地の辺野古移設に関しては、容認派・反対派はほぼ真っ二つ。民主主義の対極にある異論は認めない風潮、更にはヘイトスピーチ現象に見られた沖縄と日本間のナショナリズム衝突が、事の本質をどんどんボヤかしていきそう。今、百田尚樹氏の発言も話題ですし、これを機に沖縄問題を知りたい方に是非。
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本著を読むと沖縄という地域がいかに悪しき意味で「中国的」かがわかる。すなわち、政官財の癒着、権力べったりのマスコミ、歴史的に見た士族(つまり役人)の割合の多さと庶民との格差、琉球大サークルによる支配、等々。県内の格差状況に関してのシビアな分析もタイトルにふさわしい。
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沖縄の米軍普天間基地の辺野古移転に対し、多くの沖縄県民が反対しているかのような報道のされ方が多いが、実は賛成派も多くいる。県外に移設されると困る人も多いようだ。オスプレイの危険性についても、他のヘリと比べて危険というわけでもなく、報道にバイアスがかかっているのだろう。厚木基地のほ...
沖縄の米軍普天間基地の辺野古移転に対し、多くの沖縄県民が反対しているかのような報道のされ方が多いが、実は賛成派も多くいる。県外に移設されると困る人も多いようだ。オスプレイの危険性についても、他のヘリと比べて危険というわけでもなく、報道にバイアスがかかっているのだろう。厚木基地のほうが普天間よりもよほど危険らしい。新聞報道、テレビ報道は鵜呑みにしないほうがよいだろう。特に朝日新聞か。
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文字通り沖縄の経済や米軍基地問題などについて解説した一冊。 従来の本土側からの見方だけではなく、沖縄側からの見方を知ることができて良かった。
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沖縄批判ではない。 既得権益を貪る「公」の体制の問題提起な一冊。 癒しの島、自然の楽園。そうした側面があるのも事実だが、この一冊を読むとそれらは瓦解するかもしれない。いや、それこそ沖縄幻想。本編でも書かれているが。 もはや、地場産業は公共事業と呼べる。 自主財源25%の沖...
沖縄批判ではない。 既得権益を貪る「公」の体制の問題提起な一冊。 癒しの島、自然の楽園。そうした側面があるのも事実だが、この一冊を読むとそれらは瓦解するかもしれない。いや、それこそ沖縄幻想。本編でも書かれているが。 もはや、地場産業は公共事業と呼べる。 自主財源25%の沖縄と財政赤字千兆円の日本と、ズブズブの関係にアメリカが宜しくどうぞ。 基地返還が叫ばれるが実際、まったく使われていない基地に数千億円の税金が注入されている。振興資金でジャブジャブ。基地を置いてもらわないと、地主含め、特権階級の懐が温まらない。 沖縄における公務員がヒエラルヒーの頂点に立つ歴史的背景は琉球王国時代に遡るという。二人の農民で一人の士族を養うという恐ろしい隷属文化がいまだに脈々と続いていると。 本書は決して、沖縄を批判しているわけではない。対岸の火事ではなく、目を向ける良いきっかけになるように思う。 日本であり日本に非ず。 ウチナンチュがナイチャーと使うのも、少しばかり分かる気がする。
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基地をめぐる沖縄のリアクションにどこか病んだ雰囲気を感じてはいましたが、本書を読んで完全に病んでいるとわかりました。 基地をめぐる沖縄の反応の裏には吐き気がするような利権構造が横たわっている、それはわかりました。しかし一番驚かされるのは(対米課題や基地問題といった外政ではなく)...
基地をめぐる沖縄のリアクションにどこか病んだ雰囲気を感じてはいましたが、本書を読んで完全に病んでいるとわかりました。 基地をめぐる沖縄の反応の裏には吐き気がするような利権構造が横たわっている、それはわかりました。しかし一番驚かされるのは(対米課題や基地問題といった外政ではなく)沖縄の内政状況です。これまで数兆円規模の振興予算が注ぎ込まれたにもかかわらず沖縄内政は圧倒的な格差を生んでおり、(ジニ係数をはじめとした)さまざまな指数にそれがあらわています。基地問題によってある意味それがマスクされている。 色々と参考になった1冊でした。
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米軍基地があることで沖縄経済がなりたってる ところもあるのかな。 沖縄振興予算 土建利権 軍用地借地料 中国の工作、影響をもっと知りたかったですが。
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沖縄の基地反対運動について、実際は、運動に参加している層は公務員の労働組合の人間が多数を占めていること、沖縄の官民の給与格差が大きいのにも関わらず、国からの振興金が公共事業に使われ、本当に必要とされていることに届いていないこと、などを主張し、沖縄の構造的差別とそれをもたらしている...
沖縄の基地反対運動について、実際は、運動に参加している層は公務員の労働組合の人間が多数を占めていること、沖縄の官民の給与格差が大きいのにも関わらず、国からの振興金が公共事業に使われ、本当に必要とされていることに届いていないこと、などを主張し、沖縄の構造的差別とそれをもたらしている層を批判する本。 安全保障云々の問題から沖縄の基地問題を考えることが多かったが、本書のように沖縄経済や社会構造に焦点を当てている本に出会うことはなかった。その意味では貴重な本だと思う。沖縄の基地をめぐる問題は沖縄の社会構造や歴史、伝統に関わる難しい問題であることを痛感した。
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同僚のNくんから「読んでみる?」と半ば押し付けられた本ですが、沖縄に関するものの見方を少し違う角度から俯瞰して書いているようで、こういう考え方、見方もある、という感じの書き出しです。 いつものごとく、まだ読みかけて半分も進んでいませんか、読み切ったらまた書き足そうと思います。 ...
同僚のNくんから「読んでみる?」と半ば押し付けられた本ですが、沖縄に関するものの見方を少し違う角度から俯瞰して書いているようで、こういう考え方、見方もある、という感じの書き出しです。 いつものごとく、まだ読みかけて半分も進んでいませんか、読み切ったらまた書き足そうと思います。 一通り読みきりました。そして、これは不都合な真実でもなんでもない、ただの真実のある側面を描き表しているにすぎないと思いました。沖縄にある格差の固定化、拡大化は沖縄に目立ってみえたものかもしれないけれど、沖縄だけではなくどこの土地にも微妙に形を変えながら存在するのでは?と考えてしまいました。 深刻さの程度の違いなのかもしれない、そしてその程度が著しく大きいのかもしれないとは思う。だけど構造的な格差というのは日本の国の津々浦々まで行き渡っているんじゃないだろうか?と思います。沖縄にある格差の根源をことさら詳細に捉え、表現するならこの本の内容のようになるであろうし、それを不都合な真実、というと全国のいたるところに不都合な真実があることになるんだろうな。福岐阜県の不都合な真実、愛知県の不都合な真実、三重県の不都合な真実… 無意味だとか偏っているとか言いたいのではありません。こういう表現をすれば不都合な真実というのはどこにでもあるであろうし、一般にあまりえぐって見せない視点というのを一貫してあぶり出しているこの作品も知っておく必要があると思うのです。都合がいいことばかりじゃないし、いい人ばかりでもない、いろいろな人がいて、いろいろな価値観があって、物を裏の裏まで知っている人もいれば表層的にしか素人しない人もいる、ということに気づくことがまずは大事なんじゃないかと思うのです。 沖縄を題材にして、多くは語られない側面から沖縄を語っている作品として、沖縄について考える(語る)前に読んでおくといいかもしれません。
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