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怒りの葡萄 新訳版(上) の商品レビュー

4.4

9件のお客様レビュー

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2024/01/14
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

名作には名作と呼ばれるだけの確たる理由がある、というのを名作を読むたびに感じる。共産主義者になりたいわけでもないが、これを読んでいるとつくづく資本主義というものが嫌になってしまう。富める者は更に富み、貧しい者は更に貧しくなっていく。どうにもならなくなった人達を集めて、考えられない程の低賃金で働かせる。幸せを夢見て移住してきた人間が増えすぎると、オーキーと呼んで蔑み、差別する。大恐慌で先が見えない中で、誰もが未来に不安を覚えていた時代。土地に直接触れ、作物を育てることもせずに書類上だけで全てが進んでいく。先祖代々の土地を取り立てに来る者に怒りをぶつけても、そいつはいや、社長や経営者が悪い、と言う。社長や経営者に直談判しに行っても、今度は銀行が悪い、と言う。誰もが資本主義を盾に非情なことを平気でしてしまう、あの心理や描写は、今になっても、この時代と何ら変わる所が無い気がしてしまう。カリフォルニアを夢見て移動を続けるジョード一家は祖父と祖母を喪い、バラバラになりかけている。チラシの文句に踊らされる母ちゃんを見て、どうしてあんなものに騙されるんだ、と私は言いたくなってしまったが、ジョード一家にはそもそも選択肢が無い。元々の土地に居ても強制的にトラクターが家を壊し、西に行っても低賃金でこき使われる。選択肢がない、差別されていることも知らない、それが問題なのだ。誰かが違う道もあるよ、と教えてくれなければ、幸せなのかもしれない。どうなのだろう。知らなくても、知っていても地獄。どちらが幸せなのか決めるのは、自分だとしても、やはり複雑な気持ちになってしまう。あまりまとまっている気がしないが、この本を読んで心が大いに揺さぶられているのは事実。下巻で少しでも希望があると良いけれど、どうなんだろうなぁ。

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2024/04/22

人間は自分の創り出すものを超えて成長し、自分の考えの階段を踏みのぼり、自分のなしとげたもののかなたに立ちあらわれる。▼圧制は被圧制者の力を強め、結合させるのみである。▼飢えた人々の目の中には、次第にわき上がる激怒の色がある。人々の魂の中には「怒りの葡萄」が次第に満ちて夥(おびただ...

人間は自分の創り出すものを超えて成長し、自分の考えの階段を踏みのぼり、自分のなしとげたもののかなたに立ちあらわれる。▼圧制は被圧制者の力を強め、結合させるのみである。▼飢えた人々の目の中には、次第にわき上がる激怒の色がある。人々の魂の中には「怒りの葡萄」が次第に満ちて夥(おびただ)しく実っていく。スタインベック『怒りの葡萄』1939

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2021/07/13

生まれた土地を追いやられ、たった一枚のチラシに夢を託し、遠い遠いカリフォルニアの地を目指す小作農が主人公の物語。 貧富の差の拡大により、富める者はますます富み、飢える者はますます飢えていく、現代社会にも通じる問題が今以上にリアルに感じられる。 人生のどん詰まりにうって、それでも生...

生まれた土地を追いやられ、たった一枚のチラシに夢を託し、遠い遠いカリフォルニアの地を目指す小作農が主人公の物語。 貧富の差の拡大により、富める者はますます富み、飢える者はますます飢えていく、現代社会にも通じる問題が今以上にリアルに感じられる。 人生のどん詰まりにうって、それでも生き続けなければならない彼らが、やっとの想いで辿り着いた西の大地は確かに美しく、またそれ以上に残酷な現実を突きつけていく…。 登場人物たちの息遣いとその苦しみまで聞こえてきそうな迫力ある描写に、一気に引きこまれる。 彼らの怒りが向かう先は果たして…

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2021/01/16

世界文学の名作は様々な読み方ができるもので、本作もいろんな思いが去来するが、資本主義の下で人間がゴミのように扱われる様は時代を超えた迫力をもって迫る。ジョード一家のように何の救いもない状況に陥った人々もいただろうし、絶望的な状況を逞しく生き抜いた人々もいただろう。敬意と哀悼を感じ...

世界文学の名作は様々な読み方ができるもので、本作もいろんな思いが去来するが、資本主義の下で人間がゴミのように扱われる様は時代を超えた迫力をもって迫る。ジョード一家のように何の救いもない状況に陥った人々もいただろうし、絶望的な状況を逞しく生き抜いた人々もいただろう。敬意と哀悼を感じる。 ふと感じたのは、現代の我々がもしこうした状況に追い込まれたとき怒りの葡萄を心に持つことはできるだろうかということ。平和ボケの軟弱な精神を持つ我々現代人は、分かりやすい異分子や弱者を捌け口として怒りをぶつける悪癖を共有しているが、強大なシステムが我々を押しつぶそうとしたときに、正しい怒りというか、その理不尽さに怒り闘うことができるだろうか?安易に迎合してシステムの下層に組み込まれることを拒否できるだろうか? そのように自問した作品であった。

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2020/08/16

 世界文学の名作で敬遠していたが、今荒れるアメリカのものに何となく惹かれて読んでみた。図書館で借りた河出書房の世界文学全集、訳は石一郎でわかりやすい日本語で良いが、登場人物らんを読むとあら筋がわかってしまう難点あり。しかもトラックに乗る人物しか説明ないので不要(必要な場合も世界の...

 世界文学の名作で敬遠していたが、今荒れるアメリカのものに何となく惹かれて読んでみた。図書館で借りた河出書房の世界文学全集、訳は石一郎でわかりやすい日本語で良いが、登場人物らんを読むとあら筋がわかってしまう難点あり。しかもトラックに乗る人物しか説明ないので不要(必要な場合も世界の名作ではありがちだが)。  東側のオクラホマの耕作地を追われてカリフォルニアへ仕事と生活を求めて家族でトラックでの大移動。この作品を聖書に匹敵する内容と語る人もいるが、確かに土地と人間の結びつき、苦境にたったときの振る舞い、持たざる者同士の協力、苦しい道からの逃避、など人間の生き方を語っていると思う。それまでの暮らし方を捨てて次々変わる状況にたくましく対応する人、できない人、1ドルも稼げない状況なのに酒代に2ドル使って泥酔する人、旅の途中で突然放棄する人…一つの家族に老人から子供までいて、それぞれの大移動の受け止め方、来し方、振るまいが書き分けられていて社会の縮図を感じる。「百年の孤独」に通じるところあり。  タイトルからカリフォルニアで葡萄を育てる話かと思っていたが違った。解説で読んだが怒りの気持ちが葡萄のように人間の中で育っていく、という聖書関係の文言から。舞台も1930年代というからさほどの昔でもない。持てるものが奪われないように新参者を苛める、持たざる外国人が搾取される話は現在にもつながる話だ。  作者が実際に移民のキャンプに参加して書いているのでリアルなのが魅力になっている。作者はこの作品の映画化でできるお金を難民に配布する意向を持つほど難民に同情心を保っていたが、自分や作品に政治色がつくのを避けたとのこと。

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2020/08/12

土地を追いやられる人々。追いやられるのは土地だけでない。人間性そのものだ。家族、コミュニティが切り裂かれていく。元説教師のこれからの言葉はどうなるのだろう。

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2019/05/30

葡萄を求めて本書を手に取ったが今のところ憧れの目的地の象徴程だろうか? ハヤカワepi文庫版の訳を選んでみたが読みやすかった。かなり昔の小説だが色褪せない。視点の切り替えや描写中の視線誘導、キャラ立てが上手くてとても面白い。上巻はカリフォルニアへの旅の話で、土地を追われた悲しみと...

葡萄を求めて本書を手に取ったが今のところ憧れの目的地の象徴程だろうか? ハヤカワepi文庫版の訳を選んでみたが読みやすかった。かなり昔の小説だが色褪せない。視点の切り替えや描写中の視線誘導、キャラ立てが上手くてとても面白い。上巻はカリフォルニアへの旅の話で、土地を追われた悲しみと行く先への不安が、カリフォルニアへ近付くにつれて重くのしかかってくる。キリスト教のモチーフも多々出てきており下巻が楽しみ。

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2015/10/30
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

スタインベックの作品を初めて読んでみました。 登場人物のセリフがとても心に残り、ながい映画を観ているようでした。 まだ見ぬ地を目指してある家族がルート66に乗りカリフォルニアを目指す話なのですが、大きな家族の中には前進することに不安を持つメンバーもいて、そんな大所帯を説得しながら前に向かう長男やお母さんに深く共感できました。 上巻の半分以上を使って家族が故郷を離れるまでのエピソードが描かれているのですが、遠い昔の話と思えないほどリアルに感じられました。 なかなか決断を下せないのはどの時代も同じだな。。。 それでも前を向いて進んでいく一家の話からは多くの勇気をもらいました。

Posted byブクログ

2015/02/09

激しい日照りと砂嵐、そしてトラクターの出現。 アメリカの農業民のジョード一家が、農地を失い仕事を求めて西のカリフォルニアへ向かう。 西へ行けば生きていける・・・ そう信じて進む家族はなんとかカリフォルニアにたどり着くが、かられの前には厳しい現実が待っている。 1930年代アメ...

激しい日照りと砂嵐、そしてトラクターの出現。 アメリカの農業民のジョード一家が、農地を失い仕事を求めて西のカリフォルニアへ向かう。 西へ行けば生きていける・・・ そう信じて進む家族はなんとかカリフォルニアにたどり着くが、かられの前には厳しい現実が待っている。 1930年代アメリカの厳しく残酷な生活を描く。

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