明治維新と幕臣 の商品レビュー
ふと思った疑問が膨らみに膨らんで手に取った一冊。 明治維新(旧幕臣からすれば「御瓦解」)前後の行政機関がどのように運営されていたのかを十分に示している一冊。 読んでいると行政に携わる人間の移り変わりがよく理解でき、明治10年代と1桁代の行政機構の違いが肌感覚で理解できるようになる...
ふと思った疑問が膨らみに膨らんで手に取った一冊。 明治維新(旧幕臣からすれば「御瓦解」)前後の行政機関がどのように運営されていたのかを十分に示している一冊。 読んでいると行政に携わる人間の移り変わりがよく理解でき、明治10年代と1桁代の行政機構の違いが肌感覚で理解できるようになると思う。 ただし、他の方のコメントにもあるように、維新全体の流れ以上に、その点の記述にもう少し厚みが欲しかったのが正直なところ。 ただ、この一冊で維新前後の流れをあらかた追えるように出来ているとは思えるし、行政機関としての江戸幕府についても冒頭で確認できるつくりになっていることは、新書である以上ポジティブに捉えてもよい構成だと思う。 読んでいて、本社から来た人間を支社(出先)で迎える側の感情にはさまざまなものがあると推測されるが、そういう話ってこの頃にもあったのだろう、と勘ぐった。 繰り返しになるが、そんなことを考えさせてくれる「ノンキャリ」の働きぶりをもう少し見たかったというわがままを思い起こしつつ、本社支社環境への気付きを与えてくれた一冊。
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明治維新における歴史的流れも、上手くまとめられててとても興味深い。 江戸幕府における役職の説明まで、結構細かく為されててうちの息子もこの辺りが大好きで質問して来るので助かったりしました。
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この本は、「ノンキャリア」の人びとに注目することで、幕末と明治の連続性とその変容を明らかにしています。僕自身、学校では「明治維新によって幕府は滅びた」と習った覚えがありますが、行政機構として明治政府は脆弱な部分もありました。ですから実際には、幕府や各藩が長年の統治によって蓄積し...
この本は、「ノンキャリア」の人びとに注目することで、幕末と明治の連続性とその変容を明らかにしています。僕自身、学校では「明治維新によって幕府は滅びた」と習った覚えがありますが、行政機構として明治政府は脆弱な部分もありました。ですから実際には、幕府や各藩が長年の統治によって蓄積してきたノウハウを受け継ぐことで、明治政府は全国に渡る統治(いわば明治政府の自立)を可能にしていったのだといいます。 そしてそのノウハウを知っているのは、行政実務にあたってきた幕藩の末端の人たち、つまり「ノンキャリア」でした。明治政府は榎本武揚や渋沢栄一といった旧幕側の人物、それも外国の学問に通じた人物を厚遇して迎え入れていますが、その他方で幕藩のもとで実務にあたってきた人びとも登用していったのです。 本書の前半は、そうしたノウハウが蓄積される過程、つまり幕藩体制が成立する過程を概観し、後半でそのノウハウがいかにして引き継がれたのかということを箱館府(開拓使の前身)の事例を中心にしてみてゆきます。 社会の激動とそれに対応する人びとの姿から、明治維新の違った一面が見えてくるかもしれません。
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明治維新政府で多くの旧徳川幕府の人間が行政マンとして働いていたというお話。幕末の時に朝廷から攘夷しろと命令されたことに対して幕府内で朝廷に政権を返上しようという意見があったというのは驚いたが、徳川幕府成立から話が始まっているので正直前置き長いなと感じた。高尚な理想を掲げた維新政府...
明治維新政府で多くの旧徳川幕府の人間が行政マンとして働いていたというお話。幕末の時に朝廷から攘夷しろと命令されたことに対して幕府内で朝廷に政権を返上しようという意見があったというのは驚いたが、徳川幕府成立から話が始まっているので正直前置き長いなと感じた。高尚な理想を掲げた維新政府にしても色々な政府のお仕事を幕臣なしにするのは無理だったんだな・・。
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戊辰戦争後、多くの幕臣は静岡藩に移ったが、奉行より下のなど多くの御家人は、給与が必要でそのまま維新政府に勤めた。そこ後、西洋式マネジメントが普及すると彼らの出番がなくなり退職していった。
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“幕末”や“明治維新”と言えば「語り尽されている?」ような気がしないでもないが、実はマダマダ「新しい視角」が存在する…そんなことに気付かせてくれる一冊だった。多くの方にお奨めしたい!!
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明治維新の政権交代の際に、政権トップの顔ぶれは当然変わったが、行政現場では人も仕組みもそのまま引き継がれたことをさまざまな文献から明らかにした書である。 幕末に関する書は多いが、多くは薩長側または新撰組の視点から書かれているが、本書は江戸幕府の統治機構(老中制など)のできる経...
明治維新の政権交代の際に、政権トップの顔ぶれは当然変わったが、行政現場では人も仕組みもそのまま引き継がれたことをさまざまな文献から明らかにした書である。 幕末に関する書は多いが、多くは薩長側または新撰組の視点から書かれているが、本書は江戸幕府の統治機構(老中制など)のできる経緯や、幕末の幕府改革など幕府政府の視点で説明していて、新鮮に感じた。 また、給与や各組織の下の方まで説明しており、興味深く読んだ。これらの点だけでも類似の本は少ないのではないだろうか。 明治維新がスムーズに立ちあがったのに江戸幕府の遺産も大いに役立ったことが示され、本書の読者の歴史観に一石を投ずるだろう。
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この本のタイトルは妥当ではない。実際のテーマは「明治維新と無名の幕臣」になるだろう。 政治と行政を分けるのは、政治の世界に関心の低い人々には分かりにくいかもしれない。 ただし、その間には動と静、明確なボーダーラインがある。 日本では江戸時代から、そこにきちんとした線引きがなされて...
この本のタイトルは妥当ではない。実際のテーマは「明治維新と無名の幕臣」になるだろう。 政治と行政を分けるのは、政治の世界に関心の低い人々には分かりにくいかもしれない。 ただし、その間には動と静、明確なボーダーラインがある。 日本では江戸時代から、そこにきちんとした線引きがなされてきたからこそ、全国を揺るがす内乱が起きなかったといっても過言ではない。 武士の一分という言葉があるように、行政官の一分が庶民の生活を支える行政を担ってきた。 江戸時代から現代まで脈々と受け継がれている社会の安定を第一に考える役所の世界は、社会的な革命期である明治維新期にも受け継がれたことをこの著作は示している。 家庭や民間企業では、組織の中心人物がいなくなれば、そこにいる人物は動揺を免れない。 しかし、江戸幕府がなくなって将軍がいなくなっても、日本中の奉公人の大半は粛々と自らの仕事を進めていた。 お役御免になった組織の長も、次のリーダーに従うようにと伝言を残して静かに組織を去っていった。 改めて、なんと凄い国家なのだろうかと感銘を受けざるを得ない。 しかし、だからこそ、その行政マンが怠慢になった世の中は非常に恐ろしい事態が起きないかと危惧もしてしまう。 幕末をみて、現代を省みると、いろいろなものが見えてくる。またその感覚を強めた一冊であった。
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※このレビューにはネタバレを含みます
江戸幕府の実務官僚たちのあり方、役割を丹念に述べ、後半は箱館奉行所の実務方を中心に、明治維新を経て新政府に出仕した幕臣を追っています。 改正掛や工部省技術方のうごきも少し触れられています。 西洋の知識、技術を手にした官僚と、幕府のころの実務能力を以て出仕した官僚の違いを感じることができました。
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