たった、それだけ の商品レビュー
「たった、それだけ」・・・そうなのだ。たったそれだけの、ささいなことなのだ。しかし、そのささいなことの、どれを選ぶかは、その人自身が決めることなのだ。 このタイトルに込められた意味を、この小説を読んだ人は深く噛み締めることになるだろう。。。
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最終話を読んで、腹が立った。身勝手な大人たちの姿が情けない。親になりきれない親の子どもが、生き延びるためには早く自立せざるを得ない。身の回りの大人を反面教師とし、自分の生きる道を切り開こうとしている若者の姿には救いを感じられるけれど。
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思春期や人生に惑う世代の日常を描いた作品が多い印象だけれど今回は少し毛色の変わった連作短編集。 商社の海外営業部部長の望月は収賄を告発され、妻と生まれたばかりの娘を置いて姿を消し、それにより人生を左右された人たちの物語である。 1話は望月の愛人であり、彼の不正をリークした女が主...
思春期や人生に惑う世代の日常を描いた作品が多い印象だけれど今回は少し毛色の変わった連作短編集。 商社の海外営業部部長の望月は収賄を告発され、妻と生まれたばかりの娘を置いて姿を消し、それにより人生を左右された人たちの物語である。 1話は望月の愛人であり、彼の不正をリークした女が主人公。 なぜ彼女は愛する男を陥れるような決断をし、更に彼を逃したのか。 彼女がトラウマとして持っている友人のSOSを見過ごし救えなかった過去と重ねあわせ、心の機微が繊細に書かれている。 2話目以降、望月の妻、姉、時間が10年ほど進み娘の担任、娘と主人公を変えながら話は進んでいく。 最終話では逃亡した望月と思われる男と一緒に介護施設で働く青年が登場する。 最後に望月と娘が再会しそうな気配で物語は終わる。 登場人物それぞれに過去やトラウマがあって、望月の話は補足的に出てくるのだが、もう少し彼の人物像が濃く書かれた方がひとつの物語として重みが出るのではないかと感じた。 ひとつひとつの話は悪くはないけれど全体としてまとまると薄味な感じ。 1話のトーンがとてもよかったところで、2話が少し異質な設定で戸惑った。ああいうのは3話か4話あたりに持ってくる方がいいだろう。 どうしてもまとまりのない感じに思えてしまいジャンルが不明確でひとつの物語として満足度が上がらない。
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+++ 贈賄の罪が明るみに出る前に失踪した男と、その妻、姉、娘、浮気相手。考え抜いたそれぞれの胸の内からこぼれでた“たった、それだけ”のこと。本屋大賞ノミネート作『誰かが足りない』の感動ふたたび。人の弱さを見つめ、強さを信じる、著者の新たなる傑作! +++ それぞれの章で主役...
+++ 贈賄の罪が明るみに出る前に失踪した男と、その妻、姉、娘、浮気相手。考え抜いたそれぞれの胸の内からこぼれでた“たった、それだけ”のこと。本屋大賞ノミネート作『誰かが足りない』の感動ふたたび。人の弱さを見つめ、強さを信じる、著者の新たなる傑作! +++ それぞれの章で主役を替えて語られる物語。だがそれは、一貫して贈賄の汚名を着て、ある日突然失踪した望月正幸というひとりの男にまつわるものだったのである。望月自身はその姿を現すことはほとんどなく、取り残された周りの人たちのその後が描かれているのだが、いつもそこには色濃く望月の気配が漂っている。そしてラスト。これほど近づいたのにここで終わってしまうのか、ともどかしい気持ちにもなるが、それからのことをあれこれ想ってみるのもまた興味深い。たった、それだけのことが作りだした波紋は意外に遠くまで及ぶものだと思わされる一冊でもある。
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「たった、それだけ」 タイトルに込められたモノ。「たった、それだけ」のことで人は変わる。堕ちる。救われる。 深々と忍び寄る怖さとか切なさを感じました。でも最終の第六章で、何かほっとした。 「たった、それだけ」のことを、大切にしていきたいと思った。
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冒頭─── 人を傷つけたことのない人なんていないと思うけど。 蒼井さんが言い出したとき、何の話を始めたのかわからなかった。ひとりごとにしては大きめの声で、だけど誰に向かって話しているのかもわからず、会議室でお昼を食べていた私たちはなんとなく顔を上げて彼女を見た。 「誰だって一度は...
冒頭─── 人を傷つけたことのない人なんていないと思うけど。 蒼井さんが言い出したとき、何の話を始めたのかわからなかった。ひとりごとにしては大きめの声で、だけど誰に向かって話しているのかもわからず、会議室でお昼を食べていた私たちはなんとなく顔を上げて彼女を見た。 「誰だって一度は人を傷つけている。たぶん、自分で思っているよりも深く」 何かの台詞だろうか。そういえば、どこかの劇団に所属している女優だと言われても納得しそうな、独特の雰囲気と立体感を蒼井さんは持っていた。 空いた会議室には女性社員が十数名。少し離れたところの人には聞こえていないらしい。封切りになったばかりの映画の話をしている。 ────── ある会社の部長が突然失踪した。 彼には贈賄の容疑がかけられていた。 その男と関わりのある人たち。 不倫関係にあった会社の女性社員。 男の妻。 男の姉。 小学生の娘。 それぞれの視点からその男の失踪によって受けた影響による日常が語られる。 誰もが、その男はそんな大それたことをするような人間ではないと信じていた。 「小説推理」に連載されていた作品だが、一般的なミステリーではない。 “たった、それだけ”のことで、人々はどんな風に変わらざるを得なかったか。 読後感は悪くない。 最後に、上手く物語は収束する。 心がほっこりするようなお話です。
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たったそれだけ、これだけ、ほんのちょっとだけ、そんな出来心で賄賂をしたり、その賄賂を告げ口したり、浮気したり、心が離れたり壊れたりなどなど。ほんの出来心から始まる連作短編集。 涙って書いてルイちゃん。わたしは好きだな。人名に相応しくなくても好きだな。綺麗。(まぁ確かに負のイメージ...
たったそれだけ、これだけ、ほんのちょっとだけ、そんな出来心で賄賂をしたり、その賄賂を告げ口したり、浮気したり、心が離れたり壊れたりなどなど。ほんの出来心から始まる連作短編集。 涙って書いてルイちゃん。わたしは好きだな。人名に相応しくなくても好きだな。綺麗。(まぁ確かに負のイメージは強いし、実際夫が勝手にそれで役所に出したら嫌悪するが) たった、は命取り。後にも先にもつきまとう。
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宮下さんの初期の作品が好きで、新刊が出ると読むようにしてますが…なかなか最近はいい!と思える作品に出会えなくて残念。これもちょっと期待ハズレでした。
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収賄容疑をかけられた男とその妻と子、愛人、姉...この事件にかかわる人たちの視点から描かれた連作短編集。事件に関わってしまった人たちが、辛く厳しい現状の中で、たったそれだけと思える、ひとすじのささやかな光が差し込むことで、前を向き、現状を切り開く。ルイとトータの話が良かった。 重...
収賄容疑をかけられた男とその妻と子、愛人、姉...この事件にかかわる人たちの視点から描かれた連作短編集。事件に関わってしまった人たちが、辛く厳しい現状の中で、たったそれだけと思える、ひとすじのささやかな光が差し込むことで、前を向き、現状を切り開く。ルイとトータの話が良かった。 重い題材を扱った作品なので、読むまでちょっと憂鬱でしたが、読み始めて話が進むにつれて、この作家さん独特の一筋の光のようなものを感じて、前向きになれる作品でした。読後感もよくて、じわじわくる作品でした。
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本の帯の言葉と2章くらいまで読んだ感じから苦手な作品かなって思いましたが、ルイの小学校時代から少しずつ物語の中に入っていけました。トータが「逃げているように見えても地球は丸いんだ。反対側から見たら追いかけてるのかもしれねーし」と言うシーンがあるけど、ちょっとした視点の違いや心の持...
本の帯の言葉と2章くらいまで読んだ感じから苦手な作品かなって思いましたが、ルイの小学校時代から少しずつ物語の中に入っていけました。トータが「逃げているように見えても地球は丸いんだ。反対側から見たら追いかけてるのかもしれねーし」と言うシーンがあるけど、ちょっとした視点の違いや心の持ちようで、ぎりぎりで危ないバランスのまま生きていた人たちも、自分にも笑顔があることに気が付くのだろうなあ。瀬尾まいこさんが描く中学生が好きですが、宮下奈都さんの高校生も大好きです(って私が言ってもルイの胸はきゅうってならないだろうけど(^^;)。トータもルイも応援するよ。
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