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湯浅泰雄全集(12) の商品レビュー

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2019/12/12

日本思想史にかんする論考など17編を収録しています。 西田幾多郎や和辻哲郎、三木清など、近代日本哲学について論じた論考が多く、とくに彼らの思想は西洋の哲学とは異なり理論と実践が分断されていないという特徴が見られること、またその実践も外向的な社会的実践ではなく内向的な性格を有して...

日本思想史にかんする論考など17編を収録しています。 西田幾多郎や和辻哲郎、三木清など、近代日本哲学について論じた論考が多く、とくに彼らの思想は西洋の哲学とは異なり理論と実践が分断されていないという特徴が見られること、またその実践も外向的な社会的実践ではなく内向的な性格を有していることなどが論じられています。こうした著者の近代日本哲学についての見方は、『近代日本の哲学と実存思想』(1970年、創文社)において集中的にとりあげられていますが、本書に収録されている論文でもそれに通じる見方が随所に示されています。 また本書には、ナショナリズムの心理的な基礎についての考察をおこなった論考もいくつか収録されています。著者はニーチェに由来する「ルサンチマン」という概念を用いていますが、ニーチェの思想に依拠しているのではなく、むしろユングの集合的無意識についての考え方が著者の議論の下敷きになっています。ナショナリズムについての社会心理学的な考察が重要であることはわたくしも認めますが、ユング心理学という枠組みを持ち込むことがはたして妥当なのかという点についてはやや疑問を感じました。

Posted byブクログ