日本の樹木 の商品レビュー
一番好きな樹木、って聞かれたら結構困るけど、コナラはその候補になる。 自宅の庭には実生から育てたコナラが2本あり、苗木でもう何本か育てている。 住宅街でコナラを植えている家は少ない。落葉樹である。大きくなっている。多分周囲の人は困っている。 ドングリ類は、通常地面に落ちたあ...
一番好きな樹木、って聞かれたら結構困るけど、コナラはその候補になる。 自宅の庭には実生から育てたコナラが2本あり、苗木でもう何本か育てている。 住宅街でコナラを植えている家は少ない。落葉樹である。大きくなっている。多分周囲の人は困っている。 ドングリ類は、通常地面に落ちたあと、乾燥する冬を生き抜くために、堅い殻につつまれ、あるいはリスのストックとして地面に埋められ、寒冷地では雪に埋もれて、そうして春に根を伸ばしていく。 ところが、コナラはさっさと根を伸ばすという戦略をとっている。だが成長が決して速いわけではないし、暗い林床で成長できるわけではない。コナラは戦略を間違えているのかもしれない。間違えているというより、人にはその戦略は不明なのだ。 こんな具合に、日本の樹木の、樹木自体の生き方を記した本。僕達にとってどうだ、という話ではない。もちろん人に利用されてその影響を受けた樹木もある。そういう話も興味深い。 スギやヒノキは住宅の構造材に今でも使われるし、馴染みが深い樹種でもあろう。この二種でスタートする本書は、しかしフジとかヤナギとかスダジイとか、もちろんコナラだとか、いわゆる現代においての有用樹ばかりではないところにスポットがあてられている。たとえばヤナギは、自然の中に枝垂れたものはない。枝垂れたヤナギは人が好んでそだてた突然変異だ。そして実のところヤナギは短命で、歴史を感じさせるようなところに生えていても、ヤナギがそれほど古くから残り続けていることは少ない。 という具合に、身の回りに今もある木々の、生き方を書いた本。妙に読み物的に書き込まれてもいない。こういうの好きだ。
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