飛田で生きる の商品レビュー
今に生きる赤線地帯、遊郭の風情と隠微さを醸す歓楽の秘境・飛田新地。本書は第三者によるルポルタージュではなく飛田の「住人」である筆者がその内部事情を赤裸々につづった貴重な記録でございます。 飛田―僕がこの界隈のことを知ったきっかけは作家、黒岩重吾の小説がきっかけでした。株で...
今に生きる赤線地帯、遊郭の風情と隠微さを醸す歓楽の秘境・飛田新地。本書は第三者によるルポルタージュではなく飛田の「住人」である筆者がその内部事情を赤裸々につづった貴重な記録でございます。 飛田―僕がこの界隈のことを知ったきっかけは作家、黒岩重吾の小説がきっかけでした。株で失敗し、原因不明の奇病に全身を冒され、西成で息を潜めるようにして生きていたころに飛田に勤める「おねいちゃん」たちと交流があったのだそうです。 本書は「遊郭」を10年経営し、現在はスカウトマンとして「飛田に生きる」住人が書いた「裡側」の赤裸々なまでの記録です。以前、ここでも紹介した「さいごの色街・飛田」では遊郭を経営する親方のことを『仁・義・礼・智・信・忠・孝・悌の八徳を失った者、また、それらを忘れさせるほどおもしろい所』の意である『亡八』というまことにショッキングな言葉で揶揄されている、という箇所を思い出し、これは当事者が書いた手記なんだということを改めて思い出しました。 筆者は高校時代の柔道部の先輩であり、再開したときは裏の『住人』になっているであろう『村田さん』から飛田での遊郭経営の話を持ち込まれます。ある程度考えた後、『いかがわしい場所とか言われるけど、そういう場所で人間の道極めるのもオモロイで』という言葉が後押しとなって、筆者は「実地検分」の後、料亭を持つことに踏み切ります。ただ、そのときの不動産屋の主人が言った 「店の女の子には、気いつけていな。女の子しゃべりおるから」 ということを後年筆者はイヤというほど思い知らされるのです。 飛田のシステムはかつて赤線、青線というものがなくなって、大阪の遊郭は、東京がソープという形態で残ったのに対し、料亭での仲居との自由恋愛という形で残ったのだそうです。たとえば15分のちょんの間(意味はご察しください)は11000円。取り分はおばちゃん1000円、女の子5000円、店(親方・マスター)5000円が相場で、時間によって変動するというのは言うまでもありません。 念願かなって店を持つことになるも、筆者は女性の持つ『業』というものにとことん振り回されるようになります。たとえば、店の売り上げは「オバちゃん」(あるいは『遣り手婆』)しだいだというのだそうですが、いい『オバちゃん』につけばいいのですが、悪い『オバちゃん』が入ると、売り上げを盗まれたり、気に食わない『女の子』をいじめたり、少しでも店の経営が傾いたりすると彼女たちの『ネットワーク』を利用してさっさと別な店に移るんだそうです。この「むきだし」感に、まずは衝撃を受け、店に来る女の子がさまざまな「事情」をもって「苦界」である飛田に飛び込み、あるものは目標だった額のお金をためて飛田を去り、あるものは飛田の持つ「魔力」からそこから離れられなくなり、とことんまで「堕ちて」行ってしまう…。人間の持つ「性」という根源的なものを「商品」として売買している現場に立っていた人間だからこその視点に衝撃をさらに受けてしまいました。 ここにつづられているミもフタもないやり取りは虚飾を排した人間の生々しい姿です。そこには金があり、それを掴むものもいればそれによって堕落してしまうものもいる…。いつの時代も変わらない「真実」があるような気がいたしました。現在、筆者は料亭をたたみ、そのときに培った経験を生かして「スカウトマン」として現在も飛田界隈の「住人」として活躍しているのだそうです。妖しい魅力を今でも放ち続ける「さいごの色街」飛田。本書はそこに生きる人間の貴重な証言であり、また記録であると思います。 ※追記 本書は2014年10月3日、徳間書店より『飛田で生きる: 遊郭経営10年、現在、スカウトマンの告白 (徳間文庫カレッジ)』として文庫化されました。
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実際に親方として経営をしていた方が書いた本 勝手な想像で親方業はほとんど何もしなくても儲かりそうと思っていたが、本書を読んだことで思った以上に精神的にしんどそうだなと思った。 オバちゃんとお店の子が共謀してお店のお金を持ち逃げしたり オバちゃんが贔屓をしたせいで看板の稼ぎ頭が辞めてしまったり 普通に経営者として働いた方が心身ともに安らかなのではと思ってしまった タワーマンションの件はそうなっていないけど、 後から参入してきた人たちが、自分たちに都合いいように外観を綺麗にしていくのはどうなのかなーと思った 外観を整えたとしても内に籠るだけで語弊があるが根本的な問題は消えないと思う 買売春は一般的にみて悪いことという認識がまかり通っているが本当に悪いことなのか? 本に出てきていた生活費と借金、兄弟の進学費用のために飛田で働いていた人は飛田がなければどうしていたのか 性産業以外で稼げる仕事にすぐにつくことができる世の中ではないから選択肢がないのではないか 兄弟に話して諦めてもらうのが一般的にみて普通なのかもしれないけど どうしてもの覚悟がある人にとってのセーフティネットなのかもしれないと思うと、働いたこともなくただ色眼鏡を通してみているだけの私のような人間がああだこうだいうのは違うなと思った その場所が誰かの生きる場所であるのなら強制的に排除してしまうのは果たして… 関連書籍を読めば読むほど正解が全くわからなくなっていく
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自分が生きる世界とまったく違う世界で生きる人たちのことを知ることは大事。できることなら本でなく、実体験として。 知らずに否定するなんてことはしてはいけない。 飛田に救われ、この街を必要とする女の子たちも多くいるのだ。 とにかく美人な子よりも、笑顔がかわいく愛嬌のある子が多...
自分が生きる世界とまったく違う世界で生きる人たちのことを知ることは大事。できることなら本でなく、実体験として。 知らずに否定するなんてことはしてはいけない。 飛田に救われ、この街を必要とする女の子たちも多くいるのだ。 とにかく美人な子よりも、笑顔がかわいく愛嬌のある子が多くのお客さんを「上げる」。
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※このレビューにはネタバレを含みます
飛田新地で親方(マスター)として新規開店した著者。開店に3ヶ月以上の期間を要して、水商売から引き抜きやスカウトに励む日々。電気会社のライト工事に7~8万円とか利益を出すためのコスト面が聞いたことないことばかり。勧誘おばちゃんの7割が飛田経験者だったり、キャストが飛ばないための工夫や人間関係がとても深かった。辞めたあの子は2軒先が当たり前の世界。暴力団禁止法の中でどうフェアに出し抜くか。
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この業界は世間体ネガティブなイメージがある。内側の世界に興味あっても中々踏み込みにくい。 でも、この本読むと、その世界が垣間見れる。働く事情は様々だけどどんな仕事であれ、働く人は生活のためにみんな必死。ネガティブなイメージを持たれやすい業界だけど実情を知るとまた見方が変わりますね...
この業界は世間体ネガティブなイメージがある。内側の世界に興味あっても中々踏み込みにくい。 でも、この本読むと、その世界が垣間見れる。働く事情は様々だけどどんな仕事であれ、働く人は生活のためにみんな必死。ネガティブなイメージを持たれやすい業界だけど実情を知るとまた見方が変わりますね。
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著者の杉坂圭介氏は、30歳を少し過ぎた頃にリストラに遭い、深夜のファミレスでアルバイトをしながら就職活動。そんなとき、高校時代の不良先輩から何年かぶりに連絡があります。どこで聞きつけたのか、杉坂氏のお父様が亡くなって、保険金数千万円を杉坂氏が受け取ったことを先輩は知っていました。...
著者の杉坂圭介氏は、30歳を少し過ぎた頃にリストラに遭い、深夜のファミレスでアルバイトをしながら就職活動。そんなとき、高校時代の不良先輩から何年かぶりに連絡があります。どこで聞きつけたのか、杉坂氏のお父様が亡くなって、保険金数千万円を杉坂氏が受け取ったことを先輩は知っていました。それを元手に遊郭のオーナーにならへんかと。 オイシイ話には罠がある。そう警戒はしながらも、甘い言葉に乗ってオーナーに。2002年に店を持ち、10年続け、現在はスカウトマンとして関わる杉坂氏。飛田では、中のことを外の者が触るべきではないと、写真撮影はいっさい禁止、マスコミの取材に応じることもほぼ皆無だそうです。だけど、あべのハルカスなどもでき、消されてしまうかもしれない遊郭。実情を書くことで、この街がなぜ必要とされてきたのか、これからも必要であるということを杉坂氏は訴えています。 ヤジウマで読みはじめ、読みおわった今もそのノリのままではありますが、ほぉぉぉぉ、へぇぇぇぇと思うことたくさん。飛田のトイレはすべて和式。そのほうが局部を洗いやすいから。飛田以外の新地にはシャワーのあるところもあれば、公衆便所しかないところも。 いちばん目からウロコだったのは、遊郭を利用した客にはどの店でもペロペロキャンディーを渡すということ。キャンディーを舐めているお客さんはすでに「終了」しているので、おばちゃんたちも声をかけないそうです。そんな目安があったとは。 新規開業に当たっての申請等、手順あれこれ。店を開けられると決まったら、今度は女の子のスカウトに奔走。できるだけたくさんの女の子を店に置いておくのだと思いきや、店が抱える女の子がみんなちゃんと稼げるように、数人だとか。飛田で働こうとやってくる女の子の諸事情。女の子同士のトラブルなどなど。親方稼業は楽じゃない。 飛田を歩いて衝撃を受けた私としては、さまざまな事情を知りもせずに、治安がどうとか外聞がどうとか、そんな建前だけで消えてほしくはないなぁと思うのでした。
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こういった性産業を すぐに是か非かを議論したがるが、 内情を知らないなかでの議論は無意味。 確かに必要としている人もいる でも、多くの人がそこで潰れているのも また事実。 見ず知らずの男に今から抱かれるというのに それを誘うように、満面の笑みで笑え 笑えるはずのないのに笑う...
こういった性産業を すぐに是か非かを議論したがるが、 内情を知らないなかでの議論は無意味。 確かに必要としている人もいる でも、多くの人がそこで潰れているのも また事実。 見ず知らずの男に今から抱かれるというのに それを誘うように、満面の笑みで笑え 笑えるはずのないのに笑う 人が持つ悩みや葛藤、黒い部分もみえた 大阪の知っていたい一つ。
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むっちゃ面白い。具体的な数字にリアルなエピソード。本当に親方をやっていたからこそ書ける本だと思う。続編も読んでみよー
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中の人の、それも使用者側からのエッセイというだけで ちょっと希少価値はある。 中身はそんなにセンセーショナルではないし、 目を引くところはなかった。 しかしそれは率直な記述であろうと 著者が配慮した結果ではあるだろう。 特にこの手の事業を立ち上げた人のエッセイには 「自分はこ...
中の人の、それも使用者側からのエッセイというだけで ちょっと希少価値はある。 中身はそんなにセンセーショナルではないし、 目を引くところはなかった。 しかしそれは率直な記述であろうと 著者が配慮した結果ではあるだろう。 特にこの手の事業を立ち上げた人のエッセイには 「自分はこの件に関して一通り見渡せている」という 鼻持ちならない感じがプンプンする人もいるので、 分をわきまえてる感じ好感が持てる。 ぶっちゃけもうちょっと コミュニケーションとったほうがいいんじゃないの とか思うとこもあるけど、 距離感を間違えると怖いので 近寄れないとかもあるんだろうなぁ。
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「さいごの色街 飛田」とは違い、元親方の書いたもの。より真に迫った、本当のことが沢山書いてあったと思う。特に料亭の中での女の子の内情については、こちらの方が詳しかった。サラッと書いてあるけれど、親方もなかなか汚いことをしているなぁ。でもそれ以上に女の子は強い、したたか。最後のミズ...
「さいごの色街 飛田」とは違い、元親方の書いたもの。より真に迫った、本当のことが沢山書いてあったと思う。特に料亭の中での女の子の内情については、こちらの方が詳しかった。サラッと書いてあるけれど、親方もなかなか汚いことをしているなぁ。でもそれ以上に女の子は強い、したたか。最後のミズホの啖呵が切なかった。
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