ストーナー の商品レビュー
大きな喜びなど求めやしまい。 だから大きな起伏のある道など歩きたくはない。 小さな幸せ、小さな厄災、小さな不和。 そんなことは誰の周りにもある。 或る意味、とても誠実だった先生の生涯。 静かに・・、静かに、読み終えました。 きっと・・、きっと適当に充逸した平坦な生涯だった...
大きな喜びなど求めやしまい。 だから大きな起伏のある道など歩きたくはない。 小さな幸せ、小さな厄災、小さな不和。 そんなことは誰の周りにもある。 或る意味、とても誠実だった先生の生涯。 静かに・・、静かに、読み終えました。 きっと・・、きっと適当に充逸した平坦な生涯だったのだろうなぁ、と。 羨ましい 一言で済ますと、この言葉しか思い浮かばず。
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「ストーナー」ジョン・ウィリアムズ著 東江一紀訳 出版社名 : 作品社 出版年月 : 2014年9月 ISBNコード : 978-4-86182-500-2 税込価格 : 2,808円 頁数・縦 : 333P 20cm 私は自伝的私小説のジャンルは不得意なので普段は読まないのだが、翻訳者の奥様から「東江の最期の翻訳作品なので機会があったら手にとっていただければ幸いです」と喪中はがきを頂戴したので読んで見ることにした。翻訳者の東江さんと無粋な理系君ことわが夫は若き日趣味の陸上短距離仲間だったため、知り合いで私も光栄ながらお会いしたことがあるのだった。 闘病されていることも存じ上げていたが昨年新刊情報誌で東江さん翻訳の新刊を見かけたのでもしかして奇跡的なことが起きて寛解されたのかと思っていた。 東江さんの翻訳作品を読むのは初めてだったが読んでみて売れっ子翻訳家だった理由が理解できた。 言葉を紡ぐのがとても上手い。日本語の語彙が豊富で翻訳家でなくとも必ずや文筆業で名を成した方だっただろうなと確信した。 肝心の「ストーナー」の作品のほう。二つの世界大戦期を生きた世渡り下手な一人の米国の英文学専攻大学教員ウイリアム・ストーナーの一生を描いた作品。 ここにはサクセス・ストーリーもわくわくする冒険譚もない。 多くの平凡な人々の一生を「ストーナー」という人物に記号化して描いた作品であるから今世界的に静かなブームになっているのではないだろうか。成功しなかった多くの人々の物語がここにある。 著者のジョン・ウィリアムズ自身英文学の教員であったから文章がとても上手い。言葉の一粒一粒がきらきらと輝いているような文を書く(英文を読んでないから想像であしからず)。 特に光の描写や人物の表現などは秀逸で文学が好きな人なら絶対彼の文体には惹き込まれるだろう。 私には20世紀の世界大戦期の時代をアメリカ国民がどう受け入れて乗り越えていったかが当時の人々の肉声を通して聞く事が出来たような気がしてうれしかった。 名翻訳家が人生最期の翻訳作品として選ぶにふさわしい物語だったと思う。 最後の1ページが翻訳しきれずに他界されたとのこと。つくづく神は理不尽ですね。 「訳者あとがきに代えて」に翻訳者弟子布施さんの作品解説および翻訳作業の顛末についての文章は素晴らしく涙を誘った。 作品はできれば人生の四季をバランスよく配分してあるともっとよかった。若年期が少なく、壮年期が長い。 満足度★★★★
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ジョン・ウイリアムズ、ありふれた名前だ。聞いたことあるような気もするし、指揮者か作曲者か? 作家としては聞いたことがない。一体誰だろうと疑問に思いながらも特に予備知識もなく読み始めた。 農村出身の少年ストーナーは、無学だった両親に大学に行くことを希望され、入学したのは農学部だったが、シェイクスピアのソネットと出会ってしまい恋に落ちたように文学部に転部してしまう。(ああ……それでいいのか?とまどう読者) 大学時代に親しかった同級生は戦争で帰らぬひととなり、友人ひとりは帰還して学内で出世していく。優秀な成績を収めたストーナーは大学で教鞭をとり、好意を持った女性とめでたく結婚して新しい生活をスタート。しかしそこで他大学からやってきた曲者の学者が登場、どうやら何らかの障害があるらしい。その教授によって、賢いが問題がある学生をストーナーが担当するゼミに送り込まれる。(さらに、この学生も身体が不自由というのが無下に出来ない要素となっているが、そこはあえて深く言及されない) 愛らしい娘に恵まれたにも関わらず、妻との関係は迷走、教育の方針は不一致、家庭はますます不穏、教育に没頭するストーナー先生、大学でようやく同じ星を見ている運命の人に出会ってしまう!……しかしこのキャサリンとの関係(ああ、もうこのへんで絶対これ足元すくわれるに決まってるよと読者ハラハラ)そしてやはり、あの目をつけられていた教授からアカデミックハラスメントに巻き込まれるのである。 仕事での良きパートナーでありながら、出会うのが遅すぎた愛しいキャサリンは職場を追われ、別の場所で本を完成さた彼女はそれをストーナーに捧ぐ。(このへんからすでにもう読者ぼろ泣き) 家庭不和となったストーナーの妻からの視点は欠落しているが、おそらく彼女も人生に抑圧されたゆえに壊れていく。妻はさらなる変貌をとげ、その時代における「飛んでる女」を演じ、最終的には家庭は崩壊。愛しい娘は早まって出産、さらに娘の相手は戦死、しまいに娘はアル中になってしまう。(もう泣くしかない)しかし、すべての受難を受け止める、この主人公ストーナーのなんという強さよ! 大学でのストーナー先生は教育熱心で学生からの高い信頼があったにもかかわらず、学内での出世は望まず、友人でもあった学部長に早期退職を勧告、さらに追い打ちをかけるように病魔にも冒される。(もう涙とまらない)しかし読者は気付かされる、多くの人々は、こんなふうに、やりたいことをやり、愛すべき人々に出会い、どうしようもない平凡な人生にたどり着くということに。 さらにあとがきを読めば、この本が遺作となった翻訳者の人生と主人公が重なり、読者はさらに涙することになるだろう。本と文学に溺れてきた読者のための、これこそが、わたしたちの「本当に泣ける本」。
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静かに、ゆったりと、しかし引き込まれずにはいられない文章の一文字一文字を噛みしめるかのように読んだ。 一人の男が望まれて送り込まれた大学で、人生を過ごす事になるだけの地味な物語なのだけど、最後の数ページは涙で文字が霞んだ。 主人公と同じ病を得て、なおこのような静謐な訳文を書かれた...
静かに、ゆったりと、しかし引き込まれずにはいられない文章の一文字一文字を噛みしめるかのように読んだ。 一人の男が望まれて送り込まれた大学で、人生を過ごす事になるだけの地味な物語なのだけど、最後の数ページは涙で文字が霞んだ。 主人公と同じ病を得て、なおこのような静謐な訳文を書かれた東江さんの死を改めて悼む。 日本語って美しい。
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1人の平凡な教師の生涯を綴った物語…とでも言えようか。いろんな悲しみを味わいながらも、生を全うした男。読み進めるうちに、感情移入してしまった。あとがきにもあるが、美しい小説だった。
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静謐な物語、けれどもその底流に生きていくことの懊悩が沈んでいる。米国では五十年前の出版だったらしいが、読むことが出来てよかった。訳者、東江氏、最後のお仕事。
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素晴らしかった。読みはじめた瞬間から引きこまれいつまでもページをめくり読んでいたかった。夢中になって1日で読み終えてしまった。東江さんの誠実で端整な訳もこの本にぴったりだった。最後の方はどんなお気持ちで訳されたのだろうと切なくなった。しかし、この本のカバーを外してみたら、小説の中...
素晴らしかった。読みはじめた瞬間から引きこまれいつまでもページをめくり読んでいたかった。夢中になって1日で読み終えてしまった。東江さんの誠実で端整な訳もこの本にぴったりだった。最後の方はどんなお気持ちで訳されたのだろうと切なくなった。しかし、この本のカバーを外してみたら、小説の中にあるのと同じ「赤い本」であると気がついた。誰しも喜びや成功や失敗や悔しい事もあるけれど情熱を持って立ち向かった。それだけでいいとこの本が語っている。誰もがストーナーである。それだけでいい。
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ほんとうに、幸せ、不幸せなんてひとことでは言えないものなんだ。 人の一生は、一瞬、一瞬のつみかさねなのだ。 ストーナーは、かたときも手をぬくことなく、愚直に生ききった。 結婚は、幸せなものではなく、長年にわたる不和と苦しみを生んだし、情熱的な恋もめでたしめでたしとはならなかった。けれども、まっすぐに向き合ったから、つらい恋ではあっても、心のなかにすみかを見つけていつまでも留まることができたんだと思う。 文学への愛、教えることへの愛も、無骨で、けっして出世にはつながらなかったけれど、誠実にむきあったからこそ、死の床でもなにがしか心を支えてくれるものとなったのだろう。 もろもろの思いがこみあげて、最後、どうしても涙がこみあげてきたのだけれど、ひとことで言えるようなシンプルな感動ではないので、涙のわけは自分でも判然としないのだった。またきっと読み返すだろうと思う。
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早くも今年のベスト!と思ったが、コレ昨年の刊行なんだった。。。 http://d.hatena.ne.jp/rolling_avocado/20150109/1420799597
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[関連リンク] 文壇高円寺: ストーナー: http://gyorai.blogspot.jp/2014/12/blog-post_12.html
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