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容疑者 の商品レビュー

4.3

41件のお客様レビュー

  1. 5つ

    14

  2. 4つ

    20

  3. 3つ

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2020/12/15

人は喪失の体験からいかに再生するのか。 動物にも同じ感覚があるのか。 初対面ながらも試行錯誤して、たどりつく、ロス市警スコットと相棒の雌のシェパード、マギーの成長の物語。

Posted byブクログ

2020/10/09

犬好きは熱くなる。犬好きじゃなくても熱くなる小説。 アフガニスタンで戦闘に巻き込まれ、相棒の兵士・ピートを喪い、自らも銃撃を受けた軍用犬のマギー。パトロール中に銃撃事件に遭遇し、マギーと同じように相棒のステファニーを喪い、自らも重傷を負った刑事のスコット。 心身共に大きな傷を負...

犬好きは熱くなる。犬好きじゃなくても熱くなる小説。 アフガニスタンで戦闘に巻き込まれ、相棒の兵士・ピートを喪い、自らも銃撃を受けた軍用犬のマギー。パトロール中に銃撃事件に遭遇し、マギーと同じように相棒のステファニーを喪い、自らも重傷を負った刑事のスコット。 心身共に大きな傷を負った一人と一匹の絆と再生を、緊迫感溢れる事件の様相と共に描いていくミステリーです。 冒頭からなかなかにたまらない書き出し…… 銃撃戦に巻き込まれピートが倒れ、マギー自身も撃たれてしまうのに、それでもマギーはピートを元気づけようと顔を舐め続ける。しかし、ピートの体温は次第に冷たくなっていき…… さらにスゴいのが、この場面を犬であるマギーの内面と共に描いていること。 動物が語り手になる小説というと、宮部みゆきさんの『パーフェクト・ブルー』であったり、有川浩さんの『旅猫レポート』が思い浮かぶのですが、その二作以上にこの小説は、犬であるマギーの内面に踏み込んでいく印象。 それも動物の内面を単に擬人化して描くのではなく、マギーが感じる匂いや感覚を媒介に、読者をマギーの内面と同調させていきます。この描写は圧巻の一言! 作中で説明されているけど、マギーの嗅覚は人間の一万倍近くあり、その嗅覚を頼りに様々な判断を下します。そしてそれはパートナーの感情を理解することにもつながる。 人間は緊張したり不安になったり、あるいはリラックスしているときなど、そのときの感情に応じて、目には見えない発汗量などが変わり、体臭もごくわずかに変化します。 マギーはその臭いを嗅ぎ分け、スコットに寄り添っていく。 その嗅覚の描写がとても丁寧かつ、真に迫っている描写がなされるから、マギーとスコットが徐々に精神をリンクさせていく感覚が、下手に言葉や文章、描写を重ねるよりも、何十倍もリアルに感じられる。 マギーの内面を描く描写は、作中で何回か出てくるのですが、その場面ごとにマギーの穏やかな感情、興奮した感情、そしてスコットを相棒と認めていく感情が感覚を通してより伝わってくる。 おそらく生涯で、これ以上に動物の内面を的確に描く作品とは会えない気がします。 マギーとスコット、互いに銃で撃たれた後遺症を引きずり、それはPTSDに近い症状も引き起こします。夜毎悪夢にうなされるスコット。そして発砲音のような大きな音がするたび固まってしまうマギー。これは警察犬には致命的な弱点。 そのためマギーは警察犬には向かない、矯正のしようがない、と当初は評されます。しかしマギーに自分を重ね合わせたスコットは、マギーを自分に任せてほしいと頼み込む。 スコットはステファニーに関しても大きな悔いを抱えています。それは助けを呼ぶためとはいえ、「置いていかないで」と叫ぶステファニーを、置き去りにしてしまったこと。だからこそ、最後まで相棒のそばにいたマギーにより強い感情を抱く。このドラマ性といったらない! スコットが襲われた事件の捜査が続く傍らで、マギーのトラウマを克服する様子も描かれます。 大きな音がする度にスコットはマギーを優しくなでて、声をかけたり、好物のソーセージを与えたりして、大きな音が呼び覚ます、辛く苦しい記憶を楽しい記憶で塗りかえようとします。 そしてスコットは大きな音がする工事現場に、マギーと共に足を向け、マギーを落ち着かせつつ、そこの作業員や、ホットドックの売り子とも、穏やかに言葉を交わす。 そんな過程を経て、事件後、孤独を極めていたスコットも、徐々に穏やかな感情を取り戻していき、そしてマギーの警察犬としての能力にも信頼を寄せていく。 この日常の穏やかな描写もいいし、マギーとスコットを厳しく指導しつつも、しっかりと支える警察犬隊の同僚や上司の刑事のキャラも良い。 スコットとマギーが絆を深めていく描写、スコットのマギーに対する声かけであったり、マギーの行動であったり、それら一つ一つが本当に丁寧! だからこそ、この一人と一匹の行く末を、見守っているような気持ちになっていきます。 そして、スコットが襲撃された事件も新たな展開が見られていく。事件の真相に迫っていくのに、マギーの嗅覚がちゃんと生かされているのも、ストーリーとしてよく出来ている。 そして終盤孤立無援の状況に立たされるスコットに、クライマックスの銃撃戦と、王道の展開を押さえつつ、盛り上がりのポイントもしっかりと読ませます。 自分は特別犬好きというわけでもないですが、この『容疑者』を読み終えた後だと犬に対する感情は、大きく変わったように感じます。多くの人は「犬っていいなあ」と思うのではないかな。 一人と一匹の再生を優しくも熱く描いた『容疑者』。動物が登場する小説の中でも、屈指の傑作です。

Posted byブクログ

2020/09/04
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

傷ついた元海兵隊のK9と、やはり傷ついたLAPDの警察官。その二人が一緒に活躍する物語。 ・・・とか言うと、なにかお涙頂戴的な感じなのかと思うかもしれませんが、そうでもありません。確かに、傷ついた者同士、心通じ合わせていると言う事もあるのかもしれませんが、お涙頂戴の話ではありません。むしろ、犬と人が協力して事件を解決していく物語だと思います。そういう意味では、物語の終盤に、二人とも再び傷つく事になるという展開は、ちょっと珍しいかも。 話の色添えとして、女性刑事との交流もちょっとあるんですが、この作品の中では話は進展しませんでした。もし続編があるのならば、進展するのかもしれませんが。

Posted byブクログ

2019/12/30

ちょっとズルをして解説から読んだ。どんな犬なの? 興味津々だった。 北上次郎さんは これは、心に傷う撃った人間と犬の物語だ。ミステリー・ファンはもちろんだが、犬好き読者にも是非おすすめしたい、もう、たまらんぞ。 肉声を聞くような 笑 犬も猫も好き。猫語は少し分かる気が...

ちょっとズルをして解説から読んだ。どんな犬なの? 興味津々だった。 北上次郎さんは これは、心に傷う撃った人間と犬の物語だ。ミステリー・ファンはもちろんだが、犬好き読者にも是非おすすめしたい、もう、たまらんぞ。 肉声を聞くような 笑 犬も猫も好き。猫語は少し分かる気がする。犬はいなくなって随分日がたった。 家に来た子供の時はくりくりした丸い眼でそれは可愛いかった、コッカースパニエルだ。大人になると金色の長い毛を持ち成長するにしたがって優美になって声も低く、怒ったこともない。夕方の散歩にいくと逆光で長い毛が光の玉のようになって走る姿が今でも浮かぶ。病気になって、いなくなってしまってからもう犬は飼わないと決めた。 でもこの本を読んで、ジャーマンシェパードと一緒に歩きたくなった。 勇敢なのにメスでマギーという。、仕事が出来るががなんとも優しい雰囲気を持っている。元は有能な爆発物探知犬でしっかり教育を受けている。アフガニスタンでハンドラーが撃たた時にかばって腰を撃たれた。それが深いトラウマになっていて、訓練所でも優れた力があるが勇敢さに欠けるように見える。 そこに、パトロール中に銃撃に巻き込まれ同僚を失った警官スコットが来る。休養の勧告を無視して、現役を望み、犬と組む仕事を選んだのだ。 勧められた警察犬の中から、ストレス障害だといわれたマギーをとっさに選んでしまう。 この傷ついた2人組がいかにもたまらん、この結びつきを折に触れて、ちょっと、これでもかと書いてある部分は、泣かせる気?解っていてもウルウルとなってしまう。 そんなマギーとスコットの友情が深まるにつれ、銃撃の犯人を捜すことも核心に近づき、ますます危険が迫ってくる。 情け容赦なく発砲した犯人たち、殺された2人の側からつながりを探しだそうとする、危険な仕事に足を踏み入れる。 そういったストーリーも面白い。マギーの特殊な嗅覚は驚くべき力を発揮する。嗅覚の鋭敏さは全ての犬が持っているが、マギーのような犬種はそれが特別に優れているそうで、その鼻腔の構造も、関知細胞も人とは比較にならないほど発達していると言う。 殺された相棒が「置いていかないで…」といった最後の言葉が悪夢になって苦しめる。犯人探しは止められても止められるものではない。だが徐々にマギーもも回復しているようだ。 事件は意外な展開を見せてくる。 これを読んでいる間中、スコットがそばで座っているマギーを撫でていると、なぜかそばに犬がいるような気がした、余りに従順で勇敢で、言葉に敏感である。落ち込めば気配を感じて慰める眼をする。 マギーを読んでいる時はマギー一色になった。久々の一気読み。

Posted byブクログ

2019/12/28

初っ端から涙が止められなくて、というか、しゃくり上げるほどの号泣で目が腫れてツラかった!! でもわんこ好きな人には超絶オススメです!! 読んだ後にはウチのわんこをぎゅーってしたくなるし、いつも思っている以上にウチの子への愛が爆発します。 しかも、ちゃんと人間のドラマもあり。...

初っ端から涙が止められなくて、というか、しゃくり上げるほどの号泣で目が腫れてツラかった!! でもわんこ好きな人には超絶オススメです!! 読んだ後にはウチのわんこをぎゅーってしたくなるし、いつも思っている以上にウチの子への愛が爆発します。 しかも、ちゃんと人間のドラマもあり。。 なんで今までノーマークだったんだろう? これから、ますますわんこ本に傾倒していきそうです♩

Posted byブクログ

2019/10/01
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

事件が起きたところの描写、車に詳しくないのでイメージしづらくて何度も読み返してしまいました。 あと、最後、活躍した女性刑事がどうなったかについて触れてほしかったな。 まー、犬が出てきて活躍する時点で、私としては☆一つは+されててしまうので。 マギーが出てくる続編は、すぐに入手して読む予定。

Posted byブクログ

2019/06/15

お互いに相棒を失った警察官と軍用犬のストーリー。 軍用犬の場合はアフガニスタンなのでどうしようもないが、警察官の方には犯人がいる。 軍用犬のパートもあり犬の心理を描いてるのが面白い。訓練してリハビリしていく様はなかなか感動モノである。協力し合い犯人を追い詰めていくのがスリルがある...

お互いに相棒を失った警察官と軍用犬のストーリー。 軍用犬の場合はアフガニスタンなのでどうしようもないが、警察官の方には犯人がいる。 軍用犬のパートもあり犬の心理を描いてるのが面白い。訓練してリハビリしていく様はなかなか感動モノである。協力し合い犯人を追い詰めていくのがスリルがある。まだ続編があるようなので読んでみようと思う。

Posted byブクログ

2019/05/21

父が面白かったと貸してくれた本。 お互いにトラウマがある警察官と相棒の犬が頑張るお話。犬がとても可愛い。そして犬ってこんなこと考えてるのかな~とか思える犬視点が面白い。 作中で一番好ましいのはK9部隊の長官?かな。コワイ見た目でどなるけど犬には優しい。いいなぁ。 話のオチ的には...

父が面白かったと貸してくれた本。 お互いにトラウマがある警察官と相棒の犬が頑張るお話。犬がとても可愛い。そして犬ってこんなこと考えてるのかな~とか思える犬視点が面白い。 作中で一番好ましいのはK9部隊の長官?かな。コワイ見た目でどなるけど犬には優しい。いいなぁ。 話のオチ的には又組織腐敗のお話かぁと言う感じですが、それ以前の情報が少ない辺りは不気味で面白かった。話が動きだすとそうなるよねって感じでしたが。 帯には号泣必至みたいに書いてあったけど… 泣く場面ってあったかなぁ?

Posted byブクログ

2019/04/30

 犬が登場する小説は多分にあれど、犬の心を描く小説というのはそう多くはない。西村寿行や稲見一良、日本のシートンと言われた戸川幸夫の名作『牙王物語』などなど。アメリカ探偵小説では、ロバート・B・パーカーやアンドリュー・ヴァクスのどちらも家から一歩も出ない巨犬がいるが、犬の心は描写さ...

 犬が登場する小説は多分にあれど、犬の心を描く小説というのはそう多くはない。西村寿行や稲見一良、日本のシートンと言われた戸川幸夫の名作『牙王物語』などなど。アメリカ探偵小説では、ロバート・B・パーカーやアンドリュー・ヴァクスのどちらも家から一歩も出ない巨犬がいるが、犬の心は描写されない。  心や感情の描写をしないのがハードボイルド、であるけれど、本書は犬の感覚での喜怒哀楽まで含めた描写が最初から際立っている。犬と日頃ともに生活しているわけではないぼくのような人間でも、愛着を覚えたくなるような、それは優しく、かつ特殊能力を備えた危険な犬でもある。  さて、本作はLAを舞台にした警察ミステリ。私立探偵エルビス・コールのシリーズでお馴染みの作家ロバート・クレイスは、2010年にアメリカ探偵作家クラブの生涯功労賞を受賞。巨匠の仲間入りを果たしたこの作家、ぼくは恥ずかしながら全くノーマークだったのだが、本作品はシリーズ外の比較的新しい作品ということもあり、これを機会にと手に取ってみた次第。  物語は、いきなりアフガンの戦場で幕を開ける。哨戒および爆発探知チーム所属のミリタリー・ワーク・ドッグであるジャーマン・シェパードのマギーが、自殺的なゲリラ攻撃によってパートナーである兵士ピートを失うシーンが痛々しい。自らも彼を庇いつつ被弾する。パートナーを守るために。  舞台は移り、深夜のパトロール中に、銃撃事件に巻き込まれた警察官スコットは、相棒のステファニーを失い、自ら被弾し意識を失う。  訓練され被弾し主を失った犬と、負傷しパートナーを失った警察官との、運命的な出会いにより、銃撃事件を探り始めるという内容の、至ってわかりやすく、かつ胸の熱くなるような再生のドラマが展開されるのだ。  素晴らしいのは、やはりストーリーテリングである。前述の通り勲章を受けた作家は、それに値する言葉と文章を駆使し、読者を惹きつける。決して急ぐことなく、一人と一匹が、徐々にPTSDから互いを救い出し合って、チームとして再起してゆく痛みさえ伝わるような日々を、事件以上に殊更丹念に描くからこそ、ことの真相や、悪党たちの正体を暴き出してゆく過程に、無償のエールを送りたくなってくるのだ。  そして敵どもが決してやわな存在ではなく、一筋縄ではゆかない危うい気配を漂わせるからこそ、展開はスリリングで、ラストに待ち受ける対決もまたタフ極まりないものとなる。  次作『約束』で、この一人と一匹コンビは再登場するらしいが、続編と言うより、本来のエルビス・コール・シリーズでのゲスト出演といった役割になるようだ。ゲストというばかりでなく、再びこの傷だらけの名コンビが復活して元気な笑顔を見せてくれる日を期待してやまない。

Posted byブクログ

2018/12/25

奇をてらうこともなくストレートに面白い”相棒もの”の娯楽小説。 主人公スコットの、失った相棒への思いが、せつな過ぎるやないかーい! 俺的に一番、響いたのはシェパードのマギーが”仲間”に馳せる想い。 俺に、ピークでは体重50kgオーヴァーの超大型犬がパートナーだったときのことをいろ...

奇をてらうこともなくストレートに面白い”相棒もの”の娯楽小説。 主人公スコットの、失った相棒への思いが、せつな過ぎるやないかーい! 俺的に一番、響いたのはシェパードのマギーが”仲間”に馳せる想い。 俺に、ピークでは体重50kgオーヴァーの超大型犬がパートナーだったときのことをいろいろと思い出させてくれて、激しく感情が揺さぶられちゃいました。電車で読み終わったときには、涙を流し嗚咽をこらている不審者モード全開状態に。。 犬好きには、たまらないんじゃないでしょうか。

Posted byブクログ