阿蘭陀西鶴 の商品レビュー
まかてさんの手に掛かるとどうして、かくも人物が魅力的に描かれるのか!特に江戸という舞台での演出は天下一品。井原西鶴を盲目の娘あおいの眼を通じて描く。西鶴=好色一代男と公式的に理解はあっても間際で生涯に触れるのは初。どんな人間よりも人間らしく感情のスイッチを打ちに秘めてるから矢数二...
まかてさんの手に掛かるとどうして、かくも人物が魅力的に描かれるのか!特に江戸という舞台での演出は天下一品。井原西鶴を盲目の娘あおいの眼を通じて描く。西鶴=好色一代男と公式的に理解はあっても間際で生涯に触れるのは初。どんな人間よりも人間らしく感情のスイッチを打ちに秘めてるから矢数二万四千句、草子の言葉が脈々と湧き出るのだろうか。上梓の決意あっぱれ。「読み手百人居たら百人の物語が生まれる、芝居とは違うんや、だからきっと受ける」まさに現代にも通じる金言。父の真意を知り「おあい」の気持ちが変わり行く様もうれしい。
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前半、おあいの目を通して見る西鶴があまり魅力的に思えずなかなか読み進められなかったが、おあいが成長するにつれ、後半はどんどんよくなっていった。幸せとか不幸とかは他人が決めることでないけれど、きっとおあいは幸せだったんだろうな。おあいの母の言葉を肝に銘じて子どもに接していこうと思う...
前半、おあいの目を通して見る西鶴があまり魅力的に思えずなかなか読み進められなかったが、おあいが成長するにつれ、後半はどんどんよくなっていった。幸せとか不幸とかは他人が決めることでないけれど、きっとおあいは幸せだったんだろうな。おあいの母の言葉を肝に銘じて子どもに接していこうと思う。
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井原西鶴に盲目の娘がいたというのは資料の断片からしか読み取れない事実のようだから、その娘が盲目ながら料理も裁縫もこなし、音や匂いや気配で敏感に父の周りの出来事を感じ取った、というのはおそらく筆者の創作であろう。大衆小説の創始者として文学史に足跡を残す井原西鶴の内面に思いを馳せ、自...
井原西鶴に盲目の娘がいたというのは資料の断片からしか読み取れない事実のようだから、その娘が盲目ながら料理も裁縫もこなし、音や匂いや気配で敏感に父の周りの出来事を感じ取った、というのはおそらく筆者の創作であろう。大衆小説の創始者として文学史に足跡を残す井原西鶴の内面に思いを馳せ、自ら創作したに等しい「盲目の娘」にそれを語らせたのが本書である。 人は想像力を働かせることで、自分が住む場所よりも広い世界を感じることができる。井原西鶴は大阪の町人たちが共感できるキャラクターを設定し、その想像の枠を広げたが、本来暗闇の狭い世界に棲むはずのおあいも、浮世草子を推敲する父の声に導かれて外の世界を知り、やがて家族の本当の想いにも触れていく。おあいはが亡くなったのは26歳の時、父が「世間胸算用」を出した頃と想定され、10代半ばから10年間の心の葛藤に自由に想像力を働かせることで、朝井まかては前作「恋歌」を超える円熟味を示したのではないか。
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「好色一代男」「日本永代蔵」「世間胸算用」などを書いた江戸元禄時代の文学者、井原西鶴を知ってる人は多いと思う。 では彼の人となりを知ってる人は? この3作品のおおまかな内容は? このあたりは、知らない人が多いんではないだろうか? この作品は、西鶴の娘「おあい」を通じて西鶴を語らせ、その作品の中身や、当時の大阪の風情、はては近松門左衛門や松尾芭蕉らのことまでを語らせた小説である。 勿論、朝井まかてがそんな「お江戸紹介」的な小説で終わらせるわけがなく、西鶴とおあい親娘を通じて人間ドラマをしっかり語らせ、おあいの成長や西鶴の煩悶、周囲の人たちの生活ドラマなんかを通じて、江戸市井人情ものをしっかり描き切った佳作。ちょっと哀しい感動のラストが素晴らしい
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井原西鶴の娘、盲目のおあいを通して見える父の姿。 大坂の人らしく、口から生まれたような、楽しくておもろいことが大好きな西鶴を嫌っていた思春期のおあい。やさしかった母を亡くし、二人の弟を養子に出したことも納得行っていなかったようだ。 今よりもっと、障害者の生きにくかった時代だった...
井原西鶴の娘、盲目のおあいを通して見える父の姿。 大坂の人らしく、口から生まれたような、楽しくておもろいことが大好きな西鶴を嫌っていた思春期のおあい。やさしかった母を亡くし、二人の弟を養子に出したことも納得行っていなかったようだ。 今よりもっと、障害者の生きにくかった時代だったんだな。 家から一歩も出させてもらえないのが常識で、おあいのように外へ連れ出してもらえたり客人に会わせてもらえたりするなんて稀だった。そのことや、おあいのために大好きだった酒を飲まず少しでも長生きしようと決めた父親の気持ちを知り、徐々に心がほぐれていきます。 この父娘を中心として、通り過ぎていく人たちの甘いだけじゃない人生も描かれており、リアリティがありました。 朝井まかてさんの作品は、登場人物が皆生き生きと暮らしている息遣いと熱気が感じられます。
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面白く、装丁も情緒溢れて素敵で親子の愛情が感じる作品で良かった。井原西鶴は日本史で習ったが、教科書では語られない、西鶴の人物像、「好色一代男」にまつわるエピソード、その作品が生まれる背景に興味深く感じ、浮世作品に捧げる姿、妻を亡くしたことにより、おあいが盲目でありながら自分なりの...
面白く、装丁も情緒溢れて素敵で親子の愛情が感じる作品で良かった。井原西鶴は日本史で習ったが、教科書では語られない、西鶴の人物像、「好色一代男」にまつわるエピソード、その作品が生まれる背景に興味深く感じ、浮世作品に捧げる姿、妻を亡くしたことにより、おあいが盲目でありながら自分なりの方法で家事を確立する姿、娘おあいとの親子関係についてはおあいが成長するにつれ、最初は迷惑だと感じていたり、思春期、反抗期の時期を経て良い関係に変化しつつあり、互いに寄り添っているのが感じられる。心温まる親子関係だと感じ、良かった。
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井原西鶴を盲目の娘おあいの視点から語った物語。 最初、西鶴は口ばっかりのいやな父として描かれているが、おあいの気持ちに徐々に変化が現われてくる。その描写が見事。 井原西鶴について、主な作品しか知らなかったので、この作品を通して井原西鶴について、今まで知らなかったことをたくさん知ら...
井原西鶴を盲目の娘おあいの視点から語った物語。 最初、西鶴は口ばっかりのいやな父として描かれているが、おあいの気持ちに徐々に変化が現われてくる。その描写が見事。 井原西鶴について、主な作品しか知らなかったので、この作品を通して井原西鶴について、今まで知らなかったことをたくさん知られてよかった。
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※このレビューにはネタバレを含みます
読書記録です。まだの人は読まないでね。 実は私、小学生のころから、ひとことでまとめられてる言葉の中にどんな人生があったんだろう?と考えてしまう子どもでした。 「苦労した」「認めてもらえなかった」「芽が出なかった」…歴史で語られるのはたったひとことだけど、何年にも渡って入るわけだしどうやってそんなにお金やもののないなかで生きてきたんだろう?とか。 井原西鶴なんて、名前と作品をテスト前に覚えたっきり。好色一代男と線で結んだだけで、読んでもいないのに…内容はとってもおもしろかった。 そうだよね、生きていくってこういうことだよね。 私にとって作者と作品を線で結ぶしかなかった人にもこういう人生があった(かもしれない)んだ、と。 今も昔も思春期の女の子の父親に対する気持ちっていっしょなんだなぁとか、最後には借金取りに対して父親よりもシュールなものいいになってたりして、まるで見てきたように書いてるなぁと感心してしまいました。
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また、とってもいい本を読んだ。 純粋で、恥ずかしがり屋で、暖かくて、見栄っ張り。目線は低く、庶民の味方。日本史でちょっと出てきただけの井原西鶴って、こんな世界に生きていたんだ。おもろい大阪だけじゃなく、とても美味しそうな、心に沁みる、思わずほろりとくるお話でした。
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井原西鶴を盲目の娘あいから見た物語。「好色一代男」とか作品名は知ってるけど、本人については知らず…前半は西鶴の身勝手さにイライラしながら読んでた。しかしあい気がつくにつれ、印象が変わっていき…最後は親子で心穏やかに過ごせてよかったなあ。通り過ぎていったたくさんの人の様々な生き様も...
井原西鶴を盲目の娘あいから見た物語。「好色一代男」とか作品名は知ってるけど、本人については知らず…前半は西鶴の身勝手さにイライラしながら読んでた。しかしあい気がつくにつれ、印象が変わっていき…最後は親子で心穏やかに過ごせてよかったなあ。通り過ぎていったたくさんの人の様々な生き様も心に残る。
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