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八面体 の商品レビュー

3.8

5件のお客様レビュー

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2024/05/22

自意識の迷宮から抜け出せなくなったような物語たち。 自分の見ている世界は、他の人が見ている世界と同じなのか? 自分の想像が、いつの間にか現実にまではみ出してしまって、どこまでが現実なのか、もはや判断できなくなった、ような。 世界は、見る人によって、その様相を変える。 誰も同じ世...

自意識の迷宮から抜け出せなくなったような物語たち。 自分の見ている世界は、他の人が見ている世界と同じなのか? 自分の想像が、いつの間にか現実にまではみ出してしまって、どこまでが現実なのか、もはや判断できなくなった、ような。 世界は、見る人によって、その様相を変える。 誰も同じ世界を見ることができない。

Posted byブクログ

2018/01/04

 あとがきには「文学青年コルタサルが残した最後の短編集」とある。  実際には本書の後にも短編集は発表されているのだが、本書の発表後、コルタサルは政治活動にどんどんとのめり込んでしまい、もはや文学からは遠く離れてしまった感があるために「最後の~」となっている。  本書は「最終ラ...

 あとがきには「文学青年コルタサルが残した最後の短編集」とある。  実際には本書の後にも短編集は発表されているのだが、本書の発表後、コルタサルは政治活動にどんどんとのめり込んでしまい、もはや文学からは遠く離れてしまった感があるために「最後の~」となっている。  本書は「最終ラウンド」という作品集から3つの短編及び短編小説論「短編小説とその周辺」を選出し、「八面体」と名付けられた8編の短編からなる短編集に追加収録したもの。 僕にとっては「手掛りを辿ると」「夏」「「セベロの諸階段」「黒猫の首」「シルビア」あたりが極上の作品(特に「手掛りを辿ると」には本当に痺れてしまった)。  日常の中に突然に非現実的な出来事が飛び込んできたり、何が起きたのか最後まで明確にしなかったり、原因も結果も示さないままに摩訶不思議な現象を描いてみせたり。  きちんとシロクロはっきりさせてくれる作品は少なく、そういう作風が好きな方にとっては、どうにもとっつき難い短編集だと思う。  また、実験的な文体が用いられており、読みづらいと感じる方もでてくるかと思う。  僕なんかはそんな作風や文体にも面白みを感じたりもするのだが、正直「何が起こっているんだろう」と頭が疑問符で一杯になってしまった作品も実はあった。  そのあたりがちょっと残念だったのだけれども、それは読者である僕側の問題(要するに脆弱な読解力)なのだろうなぁ……。

Posted byブクログ

2017/06/04
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

八面体 1974 リリアナが泣く ※想像力の行き過ぎ? 手掛かりを辿ると ※書いたのは自分のこと。 ポケットに残された手記★ ※ゲーム的な出会い。 夏 ※夫婦の危機。 そこ、でも、どこ、どんなふうに ※きれぎれ。 キントベルクという名の町 ※きれぎれ。 セベロの諸段階★ ※死を寓話的に。 黒猫の首 ※ゲーム的な出会いと殺人? 最終ラウンド 1969 シルビア★ ※想像力で人を作る「円環の廃墟」。 旅路 ※すでにだめな夫婦。 昼寝★ ※百合と性的夢想。 「文学青年コルタサルの終り」を告げる一作→以後は政治の季節。 実験的短篇、というよりは、きれぎれの文体による濫作の予兆が見える。 いいなと思った作品が比較的まとまりのある作品(「ポケットに残された手記」「セベロの諸段階」「シルビア」「昼寝」)だからというわけではないが、息切れの兆候が見える。 それは特に「そこ、でも、どこ、どんなふうに」「キントベルクという名の町」「旅路」に。

Posted byブクログ

2015/02/01

「リリアナが泣く」死を待つ体。想像する。自分が消え去った後の妻と友人。良作。 「手掛かりを辿ると」熱狂的な人気を持ちながら謎に包まれた詩人。彼の生涯を追う男。驚くべき真実。 「ポケットに残されたと手記」地下鉄の中のゲーム。偶然の不可能性にかける。 「夏」友の娘を預かった夫婦。夜中...

「リリアナが泣く」死を待つ体。想像する。自分が消え去った後の妻と友人。良作。 「手掛かりを辿ると」熱狂的な人気を持ちながら謎に包まれた詩人。彼の生涯を追う男。驚くべき真実。 「ポケットに残されたと手記」地下鉄の中のゲーム。偶然の不可能性にかける。 「夏」友の娘を預かった夫婦。夜中。不審な物音。巨大な馬。 「そこ、でも、どこ、どんなふうに」ずっと前か。パコ。もう死んだきみ。 「キントベルクという名の町」ヒッチハイクの少女。スープを飲む少女。かつての自分。 「セベロの諸段階」繰り広げられる儀式。告げられる数字。 「黒猫の首」電車の中。見知らぬ女に触れる。女も私に触れる。女の告白。 「シルビア」子供たちのまとめ役シルビア。しかし大人たちは彼女は存在しないという。良作。 「旅路」列車を待つ男女。彼らは自らが行くべき場所を思い出せない。 「昼寝」悪夢におびえる少女。友との性に関するめざめ。

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2014/08/25

1974年に刊行された短篇集。 コルタサルらしい幻想的かつ不条理な短篇が並び、1篇1篇はさほど長くないものの、コルタサル的世界にどっぷりと浸れる1冊。 巻末の『訳者あとがき』に詳しく述べられているが、この後、著者は政治運動に深く関わり、徐々に創作からは遠ざかって行くことになる。政...

1974年に刊行された短篇集。 コルタサルらしい幻想的かつ不条理な短篇が並び、1篇1篇はさほど長くないものの、コルタサル的世界にどっぷりと浸れる1冊。 巻末の『訳者あとがき』に詳しく述べられているが、この後、著者は政治運動に深く関わり、徐々に創作からは遠ざかって行くことになる。政治活動の面ではお世辞にも評価が高かったとは言えないようで、『「文学青年コルタサル」が残した最後の短編集』という表現が切ない。 それにしても、どうも版元が余り宣伝に熱心でないというか、宣伝まで手が回っていないというか、いつ、どういうスケジュールで出るのかが全く読めないのはちょっと困る。南米文学は熱心な読者が大勢いるのだし、もうちょっとだけマメに宣伝してくれると助かるのだが……。

Posted byブクログ