別荘 の商品レビュー
建物が1つもない広大な大地。夕暮れ時。空と地平線。ちらほら薄い茜色には星が見え始めている。なんという美しさだろうとため息をつきながらも、自分はいてもいなくても変わらずに景色は毎日そこにいて、食糧や排便も要求しない尊い存在。こういう景色は最近雑誌の広告かなんかでしか見られなくなり、...
建物が1つもない広大な大地。夕暮れ時。空と地平線。ちらほら薄い茜色には星が見え始めている。なんという美しさだろうとため息をつきながらも、自分はいてもいなくても変わらずに景色は毎日そこにいて、食糧や排便も要求しない尊い存在。こういう景色は最近雑誌の広告かなんかでしか見られなくなり、現代人はスマホしか見ない。綿毛がイナゴの大群のように押し寄せ、人命を危うくする脅威に怯える人達が外を伺う様子が、はるか昔暗いうちから家を出て学校へ行く道程で、ずっと毎日雲を追いかけていた頃を思いだし、それよりも前に書かれた物語。
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あまりよくわからないまま読み進めていって、ちんぷんかんぷんのまま終わってしまいました。それでも、なにやら生々しく鮮烈な印象をいろいろ受けました。怪作、という表現がぴったりかも。(2017年5月28日読了)
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「夜のみだらな鳥」よりは読みやすい。 首都から3ヶ月の夏季休暇でマルランダの別荘に訪れるベントゥーラ一族。 金箔を加工する原住民と遣り取りすることで莫大な富を得ている。 ある日大人たちが召使たちを引き連れてハイキングへ。 残された子供たちは別荘を取り囲むグラミネアや人食い人種を...
「夜のみだらな鳥」よりは読みやすい。 首都から3ヶ月の夏季休暇でマルランダの別荘に訪れるベントゥーラ一族。 金箔を加工する原住民と遣り取りすることで莫大な富を得ている。 ある日大人たちが召使たちを引き連れてハイキングへ。 残された子供たちは別荘を取り囲むグラミネアや人食い人種を恐れながらも、茶番劇「侯爵夫人は五時に出発した」に熱中したり、別荘を囲む柵を抜いて槍としたり。 一日なのに一年。 時間が伸び縮みする。 フリークスならぬ様々な「詭計」に満ち満ちた大人子供。 後半では戻ってきた大人、執事、召使フアン・ペレスや原住民や外国人や入り乱れて詭計、詭計。 結局はグラミネアの綿毛に埋もれていくすべて。 凄まじい長編小説だった。
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ポストモダン文学における構造の革新性や時間軸の複雑性は、作品を語るうえで優劣論に陥りやすい錯誤のひとつで、またシュールレアリスムやら政治的など様々なキーワードを捻出するのは容易ですが、いずれにせよ作者との共犯関係が築けるのかが最大にして最低条件の難点で、本作でも我々がこの長編に感...
ポストモダン文学における構造の革新性や時間軸の複雑性は、作品を語るうえで優劣論に陥りやすい錯誤のひとつで、またシュールレアリスムやら政治的など様々なキーワードを捻出するのは容易ですが、いずれにせよ作者との共犯関係が築けるのかが最大にして最低条件の難点で、本作でも我々がこの長編に感覚のみで対峙できるかどうかが難しくはないんだけど、これがやっぱり最大の難所なのよ。と思わされました。
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33人のいとこ達が次々と入れ替わり立ち代わる一部は大変だが、物語が強引なまでに加速していく二部は圧巻だった。別荘の所有者であるブルジョア階級とその使用人たち、そして彼らと取引を行う原住民と外国人。それらの関係性が異変によって崩れ去り、緊張感を孕みながらもその物語を推進していくのは...
33人のいとこ達が次々と入れ替わり立ち代わる一部は大変だが、物語が強引なまでに加速していく二部は圧巻だった。別荘の所有者であるブルジョア階級とその使用人たち、そして彼らと取引を行う原住民と外国人。それらの関係性が異変によって崩れ去り、緊張感を孕みながらもその物語を推進していくのは歓喜と欲望と捻れを抱えた子供たちであり、作者自身でもある。政治的批判こそ根底にあるのだが、想像力の飛翔ぶりがその意図以上の場所へ物語を連れて行き、その面白さは次々と誘爆してくかの様に拡大する。夜みだ同様、とんでもない本であった。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
別荘 in マルランダ そのまわりを囲む・グラミネア(槍+植物) 遊戯:「侯爵夫人は午後5時に出発した」 (元ネタ:ブルトン/ヴァレリー)想像力への自由 ・ベントゥーラ一族(兄弟姉妹)とその配偶者 ・その子どもたち(いとこ同士)35-2=33人 ・使用人 ・金を献上してくる原住民≒人食い人種 作家はチリ出身だからこの物語の舞台はいちおう南米であるのだろうなあと想定したが、草上の昼食の模倣(マネですな)かゼウスのふりそそぐ金の雨(クリムトのダナエですわ)というような表現があって、外国人にコケにされる南米の田舎成金がずいぶんヨーロッパの文化にかぶれたもんだというのも、いまいち説得力をもたず鼻白む。(あまり面白く読めなかった)
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手に取ったときには「読みでがある~!」と思ったのに、読み始めたらあっという間だった。あー。面白かった。理屈抜きで純粋に面白かった^^/ 何せ登場人物が多いので、短期集中で。。。をおすすめします。
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ラテンアメリカ文学ブームを牽引した立役者の1人、ホセ・ドノソの長篇小説。 ドノソと言えばやはり『夜のみだらな鳥』が圧倒的に有名だが、『別荘』はそれと並ぶほど評価の高い作品らしい。 難解と言われることが多い『夜のみだらな鳥』とは異なり、ストレートに物語の楽しみを味わえる。 巻末の『...
ラテンアメリカ文学ブームを牽引した立役者の1人、ホセ・ドノソの長篇小説。 ドノソと言えばやはり『夜のみだらな鳥』が圧倒的に有名だが、『別荘』はそれと並ぶほど評価の高い作品らしい。 難解と言われることが多い『夜のみだらな鳥』とは異なり、ストレートに物語の楽しみを味わえる。 巻末の『訳者あとがき』によると、1973年に発生したチリのクーデターが着想のきっかけになっているようだ。『対立』『相克』といったキーワードが思い浮かぶのはそのせいか。
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