牛を屠る の商品レビュー
「ここはおめえみたいな奴の来る所じゃねえっ!」怒鳴られた初日から10年間、著者は牛の解体の職に従事することになります。「職業を選ぶ」「働き続ける」とは、自分の人生にとってどういうことなのか――。 どうも僕はこういうなんというか、他の人があんまり見向きもしないようなテーマを...
「ここはおめえみたいな奴の来る所じゃねえっ!」怒鳴られた初日から10年間、著者は牛の解体の職に従事することになります。「職業を選ぶ」「働き続ける」とは、自分の人生にとってどういうことなのか――。 どうも僕はこういうなんというか、他の人があんまり見向きもしないようなテーマを扱った本のほうに興味が行くようで。 著者は北海道大学を卒業後、出版社に勤めるも、上司とそりが合わずに、ケンカして会社を辞め、転職活動の末に食肉製造の会社に転職し、そこで働いていたときのことを書いたものです。僕も一時期、スーパーの精肉部門でアルバイトしていたことがありますので、少し分野は違うかとは思いますが、本の中に描かれている彼の技術は目を見張るものがありました。 家畜を屠殺して、私たちのところに届けられるおいしいおいしい「お肉」になるまでには日の当たることのない裏側であって、僕らは決して見ないものがイラスト入りで克明に描かれているので、興味のある方はぜひ一読をお勧めします。 この本の中で作者の解体のスキルがどんどんとあがっていって、しまいには先輩の職人を追い抜いていくのですが、それがまたすごいなぁなんて読みながら思っていました。出来ればもう一回読み直して、 「仕事とは?」 「働くとは?」 という疑問にもう一度しっかりと向き合ってみたいと思います。
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オーストラリアの屠殺場で働いたことがあったので、屠殺関連の小説を調べてこの本にたどり着いた。 オーストラリアの屠殺場では、ナイフを使う事はなかったが、ナイフを巧みに使って、肉を削ぐ姿やこまめにナイフを研いでいる姿はよく目にしていた。 屠殺場には様々な工程があり、いくつかの工程...
オーストラリアの屠殺場で働いたことがあったので、屠殺関連の小説を調べてこの本にたどり着いた。 オーストラリアの屠殺場では、ナイフを使う事はなかったが、ナイフを巧みに使って、肉を削ぐ姿やこまめにナイフを研いでいる姿はよく目にしていた。 屠殺場には様々な工程があり、いくつかの工程を担当した。トラックに詰め込まれた生きている羊が、エスカレーターのような機械で、1匹ずつ工場内に運ばれてくる。羊が工場内に入る手前で、電気ショッ クさせて1度気絶させる。これを失敗すると、次の工程担当が苦労する。羊の頸動脈を切り、後脚1本を引っ掛けて宙吊りのまま血を抜いて、首を切断する。 それからナイフや機械で皮を剥いだ後、余分な脂身を削いでいく。これまでの工程に約40人ほどを要する。 引用 われわれは「屠殺」と呼んでも、自分たちが牛や豚を殺しているとは思っていなかった。たしかに牛を叩き、喉を刺し、面皮を剥き、脚を取り、皮を剥き、内臓を出してはいる。しかしそれは牛や豚を枝肉にするための作業をしているのであって、単に殺すのとはまったく異なる行為なのである。 「屠殺は、屠殺である」(『新潮』二〇〇一年八月号)というエッセイでも書いたことだが、小説「生活の設計」には「死」という文字がほとんど出てこない。まして、解体されつつある牛や豚を指して「死体」と呼んだことは一度もない。「命」や「いのち」にいたっては、ただの一度も登場しないはずである。自分の目の前には、生きている牛や豚が枝肉になるまでの全過程がパノラマとして展開されている。しかし、ここが命と死の境目だと指差せる瞬間はないと思っていたからだ。 こう書かれていることについては、私もほぼ同じ気持ちでいた。仕事を始めて約1週間は、「いのち」をいただいているということに深く考えたり感謝の気持ちもあったのだが、目の前の仕事で一杯一杯なのと、慣れにより何も感じなくなったのは事実。 引用 今では建物は銀色の外壁に覆われて、トラックから牛や豚を降ろすところさえ外から見られないようになっている。会社の敷地に入っても、糞尿の臭いもしなければ牛や豚の啼き声も聞こえず、これはこれでなかなか恐ろしいことである。もっとも、そうした遮敵を当て込んで、会社の周辺には矢継ぎ早に最新式の高層マンションが建設さ ときとき総務部に、高層マンションの住人から、洗濯物に臭いがついたと苦情の電話がかかるというが、ことさら隠すから余計につけあがるのだ。「いのち」などという目に見えないものについてあれこれ語るよりも、牛豚の臭いや啼き声といった、現実に外にはみ出してしまうものをはみ出させたままにしておくことのほうがよほど大切ではないかと、私は思っている。 非常に同感。
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#牛を屠る #佐川光晴 #双葉文庫 #読了 小説かと思ったら実体験に基づくノンフィクションでした。佐川さん自身が現場で働いていた、という。豊かな食生活の裏でこんな現場があることを私たちは見なくていいのだろうか。生きるとは働くとはを考えさせられます。
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表紙のイラストのイメージ通りに骨太で力強い。屠殺の是非よりも職業人、プロとしての誇りを感じる文章。この光景が今だって全国で繰り広げられている。
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文章が上手い。 エアナイフ等うまく想像ができない作業も多かったが、仕事として淡々と牛を捌いていく職場の雰囲気が伝わってくる本だった。前作も読もうと思う。
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ーー働くことの意味、そして輝かしさを描いた作品だ(p.162 巻末対談より) ーー天職を探すのが先決と思っているよりは、わからないままでも飛び込めば、ブレイクスルーできる地点に辿り着く。(p.164 同上) 就活の時に読んでみてはどうでしょうか。 散々迷って自己評価さげまくって...
ーー働くことの意味、そして輝かしさを描いた作品だ(p.162 巻末対談より) ーー天職を探すのが先決と思っているよりは、わからないままでも飛び込めば、ブレイクスルーできる地点に辿り着く。(p.164 同上) 就活の時に読んでみてはどうでしょうか。 散々迷って自己評価さげまくってズタボロになった果てに手にした仕事がブルシットジョブ。なんてことが珍しくない世の中ですが、羨ましがられない仕事ほど人の役に立っていて、しかもやりがいがあるんだということがとてもよく描かれていると思います。資本主義は労働者を労働から解放するのではなく、労働を中身から解放する、とはマルクスの指摘ですが、中身から解放される前の労働が与えてくれる喜び、みたいなものが感じられました。内山節もそれに近いことを「稼ぐ」と「働く」という対比で指摘していたような。 分業は効率化と増産のための必然ですが、それが奪うものの大きさも考えさせてくれる良書です。
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圧倒された。 作家となる前に10年以上にわたって埼玉の屠畜場で働いた作者のノンフィクション。私たちがスーパーで綺麗にパック詰めされた牛肉を買う前段階にはこのような作業があることをしっかりと認識させてくれる。 屠畜、という仕事から被差別部落問題に直結させたり、「命の尊さ」などという...
圧倒された。 作家となる前に10年以上にわたって埼玉の屠畜場で働いた作者のノンフィクション。私たちがスーパーで綺麗にパック詰めされた牛肉を買う前段階にはこのような作業があることをしっかりと認識させてくれる。 屠畜、という仕事から被差別部落問題に直結させたり、「命の尊さ」などという「美しい」価値を持ち出したりすることなく、仕事をするとは、真剣に対象に向き合い、工夫して、熟練度を上げていくことであることを力強く提示してくれる書。 巻末の対談で、「他人や他人の仕事に対してちょっとでも舐めた口をきくような人間に自分をしたくなかった」とあり、この姿勢がよく表れていると思った。
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屠殺、というものに興味をもったのはいつだったか。 品川(芝浦)のことを知ったのは何気なく写真集を手に取ったのがきっかけだったように思うし、岐阜の養老のことも知識としては知っていたし地形や社会史との関係で解釈していた、ただし実作業工程までは当然わかっていなかった。 屠殺場で働くき...
屠殺、というものに興味をもったのはいつだったか。 品川(芝浦)のことを知ったのは何気なく写真集を手に取ったのがきっかけだったように思うし、岐阜の養老のことも知識としては知っていたし地形や社会史との関係で解釈していた、ただし実作業工程までは当然わかっていなかった。 屠殺場で働くきっかけを「偶然」と表現するのも素直だし、父親の反省に対して「会社を辞めず給料をもらい続けたおかげで親としての役目は果たした」「人生に運不運は付き物だし、信念を曲げず生きてこられただけよしとすべき」という感想もまた、考えさせられる。 「おいそれとは身に着につけられない」「技術と経験を求められる」仕事を志向し、そしてこの就職は間違った選択ではなかったと知ったというのにも共感する。 怪我もあるし、牛に蹴られるおそれもあるし、技術とメンタルの鍛錬に満ちた仕事であることもわかるし、携わっているからこそ味わえる美しい光景や体験にもまたうなづける。読んでよかった。 差別・偏見もまた否定しないものの、そういうことに拘らず付き合える仲間というのも、チームワークあっての作業ゆえのもの、かもしれないと思う。 無論、労使の関係のなかで地位向上させてきた歴史も、屠殺を考えるうえでは避けられないこと。とはいえ、日々の仕事ぶりのみによって互いを認め合い、評価あるいは証明するというのも格好良い。 そしてそのような環境に(時には自らの身体的特長も含めて)、「これぞ自分にとっての世界だ」と信じて打ち込んでいく様子もまた、尊く感じたのである。
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なんとも読み応えのある、屠畜の仕事の貴重な体験談。初っ端から引き込まれる。 入り込むことのできない世界を見せてもらった。著者のいた大宮と、機械化が進んだ芝浦との違いも興味深かった。関連書籍を読んでいきたい。
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解放出版社版を読んだ。表紙がよりリアル、かな。 この手の内容の本は初めて読んだ。淡々とリアルで、違和感を感じる以前にグイグイと読み終えてしまった。被差別部落・云々に関しては、恥ずかしながら知識が無いので浅い読書しか出来ていないのだろう。同系他者の著書とは食い違う現実が描かれている...
解放出版社版を読んだ。表紙がよりリアル、かな。 この手の内容の本は初めて読んだ。淡々とリアルで、違和感を感じる以前にグイグイと読み終えてしまった。被差別部落・云々に関しては、恥ずかしながら知識が無いので浅い読書しか出来ていないのだろう。同系他者の著書とは食い違う現実が描かれているようだが、どれも恐らく嘘では無いのだろう。興味深く読めた。
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