VALLOTTON の商品レビュー

フェリックス・ヴァロットン(著者),三菱一号館美術館

2022/11/22

余分なものがなく、しっかり作品を見られるシンプルな編集が良い。特に、多くを語らずに多くを語るヴァロットンの版画作品にはぴったりのデザインだと思う。

主題やメッセージをしっかり伝え、かつ絵として美しい。それを白と黒だけでやるのがどれだけ高度な技術か、見れば見るほど感心する。絶妙な構図、絶妙な白黒の選択、配分。

ヴァロットンはロートレックと比べると随分人が嫌いで、風刺的な視点に見える。群衆は愚か。男性は悪。子供は残酷。対照的に風景画はしっかりと美しい。でも、ここまで人を描いているのを見ると、本当は結構人が好きなのではないかと思う。というか、愚かで悪で残酷でも、それでも人に期待したい気持ちがあるのではないかなと思う。ちょっと可愛らしさすら感じているかもしれない。あと、猫は好きみたいだ。そんな人間的なヴァロットンのこと、私は結構好きだなと思った。