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溺れるものと救われるもの の商品レビュー

4.4

5件のお客様レビュー

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2024/06/22

訳者との相性か実力か、所々分かりにくい所があったが、収容所での凄惨な出来事がありありと伝わってきた。さらにその場にいた人として、生き残った人としての心の分析を丁寧に行っており、収容所で悪業を行った者と我々との間にどれ程の差があるのか明確な線引きなど出来ないと感じた。 ナチスが行っ...

訳者との相性か実力か、所々分かりにくい所があったが、収容所での凄惨な出来事がありありと伝わってきた。さらにその場にいた人として、生き残った人としての心の分析を丁寧に行っており、収容所で悪業を行った者と我々との間にどれ程の差があるのか明確な線引きなど出来ないと感じた。 ナチスが行った虐殺は決して過去のものでは無いのだという事を心に刻み、学び、考え続けていきたい。

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2023/08/25

私もまた『灰色の領域』に属する人間であり、常に自分自身を疑うことの大事さを重く考えた。安易に熱狂する大勢に加わらないこと、急かされる時ほどじっくりと考えないといけない。 私達は互いを共感することが難しい。どんなに近しい人のことでも自分事として考える能力が備わっていない(私だけかも...

私もまた『灰色の領域』に属する人間であり、常に自分自身を疑うことの大事さを重く考えた。安易に熱狂する大勢に加わらないこと、急かされる時ほどじっくりと考えないといけない。 私達は互いを共感することが難しい。どんなに近しい人のことでも自分事として考える能力が備わっていない(私だけかもしれないが)。過去にいじめを受けていた時、加害側からも私のことを獣のように見ていただろう。被害側の私からもいじめを行っているモノ、傍観するモノ、面倒くさいから関わらないようにしようとしたモノ達を普通に「同じ人間」ではなく「バケモノ」として見ていた。お互い同じ姿をしているのに簡単に互いの事を別モノとして見てしまう。そんな事を思い出した。

Posted byブクログ

2023/01/05
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

アウシュヴィッツを語る上で欠かせない本と聞いて読んだ。 「夜と霧」に比べると、周りが見えている感じ。ただ、その分、綺麗じゃない。著者の憤りを感じる。 しかも、生き残りは実はちゃんと真実を語っていない、喋ってるのは特権階級を持っていた囚人で、彼らはSSと親和的だったというような糾弾もあり、善と悪を単純に区別できない感じ、苛立ちが根底にあると見ました。

Posted byブクログ

2016/09/11

我々が知らなかったラーゲルの真の恐ろしさが見えてくる。ナチスvs.ユダヤ人という完全対立構造を作らず、ユダヤ人の中にナチスへの協力者をつくることで連帯感を崩壊させる。協力者は同胞の殺戮に関わることで、非人間性を植え付けさせられる。連合軍に解放されても人間という責任ある存在に戻った...

我々が知らなかったラーゲルの真の恐ろしさが見えてくる。ナチスvs.ユダヤ人という完全対立構造を作らず、ユダヤ人の中にナチスへの協力者をつくることで連帯感を崩壊させる。協力者は同胞の殺戮に関わることで、非人間性を植え付けさせられる。連合軍に解放されても人間という責任ある存在に戻ったことでさらに苦しみにさいなまれる。非人間性と人間性の狭間でもがきながら、史実を伝えようとする著者の慟哭が聞こえてくる。

Posted byブクログ

2015/01/23

アウシュビッツのこと、(その時点の)現在への憂い、そのような場にいる人の心理について。 経験だけでも理論だけでもない、体験者の考察。 著者の死の一年前、1986年に出されたもの。 経験談ではなく、部外者の考察でもない。 できる限り冷静に考えようとする姿勢に、体験の重さがかえってず...

アウシュビッツのこと、(その時点の)現在への憂い、そのような場にいる人の心理について。 経験だけでも理論だけでもない、体験者の考察。 著者の死の一年前、1986年に出されたもの。 経験談ではなく、部外者の考察でもない。 できる限り冷静に考えようとする姿勢に、体験の重さがかえってずっしりくる。 犠牲者はあくまで犠牲者で、抑圧者はあくまで抑圧者。 だけどきっちり引けるラインなどなくすべてがグレーゾーンに見える。 それでいて、犠牲者と、加害者やその場にいなかった人のあいだには断絶がある。 「私だったらもっとうまくやる」も「私ならとても耐えられない」も安易な想像にかわりはない。 「知らなかった」こと自体が罪。 故意の無知は免罪符にならない。 ナチを支えたのは狂信ではなく、恐怖や怠惰や無関心や出世欲や従順さ。 過去から学び危険を避けるための闘いには果てがなく勝ち目もないが、それでも挑みつづけなければならない。 こんなに明晰な頭で生きて行くのは、苦しかっただろう。 書くことは苦しいけれど、書かなくてもきっと苦しい。 「その後」の人生を40年以上も耐えた偉大さと、それでも生き残れなかった重さが辛い。 ここで語られるのはホロコーストだけど、そこにいる人たちの様子は時代も場所も越えて、わかる。知っている。 ナチ側の弁明は、まるっきりルワンダ虐殺の加害者http://booklog.jp/users/melancholidea/archives/1/478030685Xと同じだった。(そういえば「溺れるものと~」の引用がのってた) 「良い仕事をする」という観念が身に付きすぎて、敵のための仕事さえついきっちり責任をもってやろうとしてしまうという部分はブラック企業を連想する。 利害を考える現実主義者が理想主義者より助けになるケースは『密告者ステラ』http://booklog.jp/users/melancholidea/archives/1/4562045493で見た。 意志の疎通を諦めないことが民主主義を守る唯一の方策なのは『ヒーローを待っても世界は変わらない』http://booklog.jp/users/melancholidea/archives/1/4022510129でも言っていた。 そんな、いつだって起こる問題を諦めずに語り続けている。

Posted byブクログ