夜は終わらない の商品レビュー
内容が錯綜していて頭が混乱したが、何か惹きつけられるところがあってとうとう読了。圧倒された。すごい筆力。
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付き合った男からさんざん搾り取り、やがては命までも奪っていく女。「夜の間じゅう、私が気持ちよくなれるようなお話をしなさい」と、死なそうとしている男に命じる。その内容により、男はつかの間の延命を許される。 最初は普通のサスペンスなのだが、途中から物語の様相が変わっていく。ある男のす...
付き合った男からさんざん搾り取り、やがては命までも奪っていく女。「夜の間じゅう、私が気持ちよくなれるようなお話をしなさい」と、死なそうとしている男に命じる。その内容により、男はつかの間の延命を許される。 最初は普通のサスペンスなのだが、途中から物語の様相が変わっていく。ある男のするお話の中で、登場人物が誰かに話をする。そしてそのお話の中でまた別の人物に……と、マトリョーシカのように何層にも物語が重なり、次第にその境界線が曖昧になっていくのだ。 そして最後、結末が冒頭部分にループする。かくして、この物語の「夜」は終わらない……。
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うーん。期待が大きかったのだろうか。 読んでいると不思議な世界へ連れていかれるんだけど、どっぷりはまれないというかなんというか。なんか妙に商品名が出てきて現実的かと思いきや(そこは狙いなのかもしれないけど)語らす物語は突拍子もないしどう感じたら良いのかわからず落ち...
うーん。期待が大きかったのだろうか。 読んでいると不思議な世界へ連れていかれるんだけど、どっぷりはまれないというかなんというか。なんか妙に商品名が出てきて現実的かと思いきや(そこは狙いなのかもしれないけど)語らす物語は突拍子もないしどう感じたら良いのかわからず落ち着かなかった・・・・
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+++ 婚約者が自殺したとの一報が入った玲緒奈。千住警察署で悲しみにくれる彼女には、次に殺さなくてはならない別の婚約者がいた。セックスや結婚を餌に次々男を惑わし、財産を巻き上げ、証拠を残さず葬り去るのが日常なのである。そんな玲緒奈には不思議な癖があるのだった。 「生きてる意味があ...
+++ 婚約者が自殺したとの一報が入った玲緒奈。千住警察署で悲しみにくれる彼女には、次に殺さなくてはならない別の婚約者がいた。セックスや結婚を餌に次々男を惑わし、財産を巻き上げ、証拠を残さず葬り去るのが日常なのである。そんな玲緒奈には不思議な癖があるのだった。 「生きてる意味があることを証明しないと。ね? 私が夢中になれるようなお話をしてよ」 あの世に送る前、男に語らせるのだ。それは、生い立ちでも、創作した話でも構わない。面白いかどうか、で命の長さが決まっていく。最期の気力を振り絞り話を続ける男たち。鬼気迫るストーリーが展開され、物語のなかの登場人物がまた別の話を語り始めたり、時空を超えた設定のなかにリアルなものが紛れ込んだり……全体の物語のなかにさまざまな短篇が入りくみ、海へと流れる大河として眺望できる大傑作。 +++ 男を喜ばせておいて、次々に殺していく女の物語。プロローグではこれ以上ないほど現実的で、これから始まる物語は、玲緒奈と警察の追いかけっこと、彼女の行動の理由を解き明かすものだと想像したのだが、まったくそんな型にはまったものではなかった。初めの内は、まだ現実的なのだが、いつの間にか、男たちに語らせる物語と現実の間に境界がなくなり、物語なのか、男たちの過去のことなのか、それとも玲緒奈自身のことなのか、もしかするとそのすべてなのか判然としなくなり、読者も語られる世界に連れ去られてしまうのである。さまざまな話が語られるのだが、どれもが同じ物語であるようにも思われ、どんなに遠くまで行っても知らぬ間にいまいる場所に戻ってきているような時空を飛び越えた不思議な感覚もある。事件に関しては何の解決もされないので、玲緒奈がそうなっていくのかは想像するしかないのだが、永遠に物語を追い求めて曖昧な境界の世界をさまよい続けるようにも思われる。ほとんど久音の部屋にいたにもかかわらず、あまりにも遠い所へ行き、精神的にも肉体的にも激しい体験をして疲れ切って眠りたいような一冊である。
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文句なし。素晴らしすぎてぞくぞくした。冒頭は婚約者を殺し、ブランドものにポルシェにペットのフェレットというアイテムを身に着けている玲緒奈視点で始まる。婚約者を連続で殺し、豪華な生活・・・、これはあの事件以来いくつかドラマにもなったりしたあのかたを思い浮かべる、こういう非常にロウな...
文句なし。素晴らしすぎてぞくぞくした。冒頭は婚約者を殺し、ブランドものにポルシェにペットのフェレットというアイテムを身に着けている玲緒奈視点で始まる。婚約者を連続で殺し、豪華な生活・・・、これはあの事件以来いくつかドラマにもなったりしたあのかたを思い浮かべる、こういう非常にロウな入りなんですが、玲緒奈が男の死に際に物語をせがむところから帯にある通り本当に抜けられなくなる。自分が何を読んでいるのかすら不確かになり、どこかで読み間違えてないか不安になる。けれど抜け出せない。そして、ここまですごい物語たちだから辻褄とか別に期待してなくて(放り出してももらってもかまわないと思って)、けれど最後ただ話に引っ張るだけのアイテム的なイベントとして見ていた冒頭部までがきれいにつながる。ジョルジュ・ペレックの「人生使用法」とドノソの「夜のみだらな鳥」を彷彿とさせる、本当に終わらないまま終わった物語だった。
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物語における自由とは何だろうか。登場人物がいかに自由に振舞おうと、それは所詮自由に振る舞う物語に過ぎず、けっきょく作者の操作の下にある。この問題は現実の世界に生きる我々人間にとっても他人事ではない。逃れられない運命から自由になることはできるのか? という問いにこの小説は一つの回答...
物語における自由とは何だろうか。登場人物がいかに自由に振舞おうと、それは所詮自由に振る舞う物語に過ぎず、けっきょく作者の操作の下にある。この問題は現実の世界に生きる我々人間にとっても他人事ではない。逃れられない運命から自由になることはできるのか? という問いにこの小説は一つの回答を与えている。 大切なのはウェルメイドな、出来合いの物語に取り込まれてしまわないことである(問題はそれが難しいという話なのだが)。そのために「魂がつぶやいた独白みたいな物語」を語ることが必要とされる。そうすることによって物語の中でしか生きられない不自由さを自覚しながら自由な人間として生きられるという。これまで人にばかり語らせ、自らの物語を語ることを避けてきた主人公が自由になれる時は来るのだろうか。MVPは主人公を語る気にさせるため途方もない物語を作り上げたクオンだろう。この物語に巻き込まれた時点で主人公はウェルメイドな物語から助け出されている。
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