夜は終わらない の商品レビュー
怒涛の物語力に翻弄されて、大きな渦に飲み込まれたと思ったら、結局同じ場所をぐるぐる回って元の位置に戻ったというような読後感。大変疲れるが、そこに感動させられる。心も体もあっちこっち連れ回されて、例えばスプラッシュマウンテンだかなんだかに乗ったみたいな。 特に日常演劇からのくだりが...
怒涛の物語力に翻弄されて、大きな渦に飲み込まれたと思ったら、結局同じ場所をぐるぐる回って元の位置に戻ったというような読後感。大変疲れるが、そこに感動させられる。心も体もあっちこっち連れ回されて、例えばスプラッシュマウンテンだかなんだかに乗ったみたいな。 特に日常演劇からのくだりが素晴らしい。男と女、自分と相手、敵と味方、何もかもがひっくり返って元の位置に戻る、その物語の動かす力に圧倒されっぱなしになった。
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ミステリーというかファンタジーというか、、、傷ついた女性の心をいやすためには、 彼女が本当にいいたくって、わかってもらいたかったこととはなにか、 ということを紡ぐお話。 精神の闇はふかーくて、夜は終わらないの通りだと思った。
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長いし不思議な物語で読むのが大変ではあったけど、なかなか面白かった。 地に足つかない感じで疲れて途中読み飛ばしてやろうかと思ってページが進まないこともあったけど、一章読み始めるとその章の途中ではやめられない。 千夜一夜物語を思い出させる設定で、物語の中の人がまたべつの物語を語り...
長いし不思議な物語で読むのが大変ではあったけど、なかなか面白かった。 地に足つかない感じで疲れて途中読み飛ばしてやろうかと思ってページが進まないこともあったけど、一章読み始めるとその章の途中ではやめられない。 千夜一夜物語を思い出させる設定で、物語の中の人がまたべつの物語を語り、どんどん深みにはいっていくけど、最後はパタパタと広げた本が順番に閉じていく感じです。ちゃんと着地しました。
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「俺俺」が大風呂敷を広げた割に……という感想だったので、本作はどうかな~と思いましたが面白かった。 確かに、こういう風に物語が紡がれていけば、そりゃあ夜は終わらない。いつまでも語らざるを得ない。 発想の突飛さ、物語の構成の上手さに唸る。 正直、「星工場」のくだりは取って付けた感じ...
「俺俺」が大風呂敷を広げた割に……という感想だったので、本作はどうかな~と思いましたが面白かった。 確かに、こういう風に物語が紡がれていけば、そりゃあ夜は終わらない。いつまでも語らざるを得ない。 発想の突飛さ、物語の構成の上手さに唸る。 正直、「星工場」のくだりは取って付けた感じがアリアリ過ぎて(福島原発を想定したというのはビンビンに感じますが)、フィクションとしては、さらにお話が入れ子になっていったほうが今までにない快作傑作になったかもと思ったり。 劇団員の人たちが関係も性別も曖昧になっていくところがすごく面白かった。あの人たちのお話、もっと聞きたかったな。
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玲緒奈は、男を魅了し自分に夢中にならせたうえで、言葉巧みに大金を巻き上げて用済みになったら殺害する。しかし、殺害する前に「私が夢中になれるお話」をして「生きている意味があることを照明」するようにと求める。自らの命の存続を掛けて、男たちは玲緒奈に物語を始める・・・というお話。 現代...
玲緒奈は、男を魅了し自分に夢中にならせたうえで、言葉巧みに大金を巻き上げて用済みになったら殺害する。しかし、殺害する前に「私が夢中になれるお話」をして「生きている意味があることを照明」するようにと求める。自らの命の存続を掛けて、男たちは玲緒奈に物語を始める・・・というお話。 現代版千夜一夜物語といった感じですが、ただ千夜一夜を模倣したというような単純な話ではありません。 あまり前知識なく読んだ方が純粋に楽しめると思いますので、ここに書き連ねることは読書の楽しみを阻害することでしかないかもしれませんが、あえてその愚を犯すなら、この小説は入れ子構造になっています。 話中の人物が物語を始めて、別のストーリーが展開し、さらにそのストーリー中の人物が物語を始めて、別のストーリーが展開するといった、マトリョーシカ人形の様な構造になっていて、物語がどんどん奥へ奥へと潜航していきます。 夢の中で夢を見て、さらに又その夢の中で眠っている様な、夜の深みに果てしなく沈んでいくような心地です。
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昔、うちにはタンゴのレコードがあった。 父のものなのか、それとも母のものだったかは知らない。 ただ、両親がそのレコードを一度もかけたことはなかった。 ずっと僕の生まれる前には聞いていたのかもしれない。 タンゴのレコードは「佐渡おけさ」などの民謡やビバルディの 「四季」に挟まれて水...
昔、うちにはタンゴのレコードがあった。 父のものなのか、それとも母のものだったかは知らない。 ただ、両親がそのレコードを一度もかけたことはなかった。 ずっと僕の生まれる前には聞いていたのかもしれない。 タンゴのレコードは「佐渡おけさ」などの民謡やビバルディの 「四季」に挟まれて水屋の棚にしまわれていた。 僕は一度だけそのレコードを聴いた。 誰もいない日、棚から出して、ターンテーブルにかけた 黒い円盤の中心でまわるラベルが赤かったのを覚えている。 情熱の赤。針をおろした。 どんな曲だったかは忘れた。 ミロンガやワルツいろいろあったような気がする。 一人留守番の少年が聴くにはなにやら厚ぼったくて早すぎるような気がした。 小説を読んだりしているとそこに書かれたある一文から突然違うところへ、 過去の記憶、あるいは未来の妄想、意識が飛ばされることがある。 きっと、父や母にも若いとき、いわゆる青春というものがあったのだ。 それは僕がここにいるという事実からもあたりまえのことなのだが、 そんなふうに思うことはほとんどない。というより、そういうことを 思い描くこと自体が面映ゆくてはばかられる。 これも昔、自分が小さいころのアルバムを眺めていたら、 ページの間から1枚の写真がこぼれ落ちた。 拾ってみると、そこは海で、小舟にのる一人の女性の姿と、 バックの空にその女性の顔が思い出のように映し出されていた。 それは若い頃の母の顔だった。 その写真をもって聞いてみると、昔の友達に、写真を撮るのが 好きな人がいたとのことだった。 もっとずっと昔、父方の祖父は家業の農家を継ぐのが嫌で、 単身、大阪に出てきた。しかし、戦前の家長制社会の中、 長男だった祖父は探し出され、連れ帰らされたそうだ。 大阪での生活については父にも話さないままだった。 だからなのかは知らないが長男の父は家業を継がず、勤め人となった。 父の物語は聞いたことがない。 ここで、朝刊のコラム、たとえば天声人語的にいうのであれば 父とは酒を酌み交わしながら自身のルーツの物語を聴いてみたい。 などと締めくくるのだろうが、そんなふうにはならない。 きっと、自分の子が僕の物語を知らないままのように 父の物語は祖父の物語から想像していく。 物語はいつも他人によって物語られ、引き継がれていく。 物語は他人が語るもの。そこには語る人間の想いが込められる。 そうあってほしいと願う物語。 そう聞きたいと願い物語。 だから、その物語を自身が語るとき、 それもまた、願う自分が語る他人の物語となってしまう。 語られるべき物語はいつも他人の中にしかない。 語られた物語はいつも他人の中にしかない。 「黄色い犬」 中島みゆき ~男のことだと思うでしょう 女の話に見えるでしょう 言えない危ない話なら 騙りと譬えは紙の一重よ~
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新聞で2014年あなたが選ぶ3冊という特集で誰かがこの本を推薦していたので、ためしに読んでみました。 この作者の本は初めて。 最初、物語に引き込まれ、結婚詐欺を装い、毒殺を繰り返していく女性の話かとおもいきや、途中から、話がへんてこりんな物語になって行き、そこらへんから退屈になっ...
新聞で2014年あなたが選ぶ3冊という特集で誰かがこの本を推薦していたので、ためしに読んでみました。 この作者の本は初めて。 最初、物語に引き込まれ、結婚詐欺を装い、毒殺を繰り返していく女性の話かとおもいきや、途中から、話がへんてこりんな物語になって行き、そこらへんから退屈になってしまいました。 好きな人はいるかもしれないが、合わなかった。 最初のテイストで進んで、事件を解決していく話であればよかったのに。 非常に疲れてしまいました。 主人公にも魅力を感じることができませんでした。
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面白かった。話が入れ子になっていくあたりから、ぐいぐい面白くなった。 「物語られる」ことの面白さに素直に付き従ってラストまで。 作家の「想像力」に敬服する。
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「千夜一夜物語」のフォーマットに、現代人の病理を突く寓話を幾重にも散りばめた小説。非常に緻密な構成だが、内容はかなり難解で、一読しただけでは容易に理解できない。ノートをとりながら読んだ方がいいだろう。個人的にはラストが気に入らない。
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星野智幸さん渾身の長編!その分厚さに一瞬躊躇するが、ひと度ページをめくってしまえば瞬く間に物語に引き込まれていく。但し、最初のうちはドキドキしながら面白がっているだけで済むが、いつのまにか何重にも重なった物語の世界に迷い込み引き返せなくほどに遠くへ連れて行かれるので要注意。まさに...
星野智幸さん渾身の長編!その分厚さに一瞬躊躇するが、ひと度ページをめくってしまえば瞬く間に物語に引き込まれていく。但し、最初のうちはドキドキしながら面白がっているだけで済むが、いつのまにか何重にも重なった物語の世界に迷い込み引き返せなくほどに遠くへ連れて行かれるので要注意。まさに「聞いたら二度と戻れない物語」。読者にできることは、ただお話に身を任せるだけ。なんて幸せなことだろう。
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