辻 の商品レビュー
行きつ戻りつ。何度も、何度も繰り返し読み続けた。わからない、というわけでもなくて、その都度発見がある、というか。それに気づいて読み続けていたのだと思う。きっと僕は、この物語の文章そのものに魅了されていたのだ。不意に立ち上がってくる情景。すると一気に物語のディテールが際立つ。没入す...
行きつ戻りつ。何度も、何度も繰り返し読み続けた。わからない、というわけでもなくて、その都度発見がある、というか。それに気づいて読み続けていたのだと思う。きっと僕は、この物語の文章そのものに魅了されていたのだ。不意に立ち上がってくる情景。すると一気に物語のディテールが際立つ。没入するという感じではなくて、より客観的に見渡す風景、とくに“辻”の。現れるのは、いつも同じ“辻”の風景だった。たしかに、僕はその場で立ち止まる。四方を見まわすものの、視線そのものは何処へ向かうともなく、見当も立たない。導きを物語の文章に見出して、僕は従うだけだった。
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文中で使用している単語は平易だが、文章として読むと一気に難解になり、最後まで読んだものの消化不良感が強い。 ・セリフが括弧書きされずに地の文のなかに読点で書かれている(誰のセリフかが分かりにくい) ・夢や過去回想が現実の話と地続きで描かれている ・抽象的な描写が多い という特徴が...
文中で使用している単語は平易だが、文章として読むと一気に難解になり、最後まで読んだものの消化不良感が強い。 ・セリフが括弧書きされずに地の文のなかに読点で書かれている(誰のセリフかが分かりにくい) ・夢や過去回想が現実の話と地続きで描かれている ・抽象的な描写が多い という特徴が難易度を上げてると思われるが、その特徴に慣れ始めた後半あたりからは少しずつかじり付けるようになった。 読書のスキルも勿論ながら、内容的にも人生経験を積んでから読んだ方がより理解できるような作品と感じたので、しばらく時間を置いてから再読したい。
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辻、という言葉をキーにして彩られた、魔と聖と人の交わる物語たち。まさに辻交うように逢魔や、また光の雑る、そんな成り行きをカットアップしているのですが、勿論、古井由吉文体の美学により、いともカオティックな読書体験に導かれますね。とにかく読んだことのない質感、読んだことのない物語、読...
辻、という言葉をキーにして彩られた、魔と聖と人の交わる物語たち。まさに辻交うように逢魔や、また光の雑る、そんな成り行きをカットアップしているのですが、勿論、古井由吉文体の美学により、いともカオティックな読書体験に導かれますね。とにかく読んだことのない質感、読んだことのない物語、読んだことのない構成、清新にして混沌として暗黒、暗黒にして至純、端的にものすごく面白かったです。個人的に白眉は、暖かい髭、始まり、白い軒、割符、でしたね。連作が、始まり、で締めくくられているのが良い。それに清らかな終点であって。
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古井文学の到達点と感じた。 内省に内省を重ねてきた後期の作品群から飛躍し、大江や中上文学の様な神話的物語に転換している。近年無かった『槿』の様な濃厚なエロスも彷彿とさせ、作者のパワーがギュッと結晶した作品になってると思う。
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ピースの又吉さんの帯に惹かれて購入。忙しかったこともあるけど、読むのに3ヶ月もかかるぐらい格闘しました。音楽で言うとアンビエントミュージックのようで(坂本龍一の『async』の曲みたいな)、輪郭が曖昧ながらも重たく、自分の中の小説の概念が広がりました。
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SMAPが解散する前、水曜日の深夜に「ゴロウデラックス」という稲垣吾郎が司会を務める読書バラエティがあり、又吉直樹がゲストの時、古井由吉を特集していた。 その頃、少し興味を持って、新潮文庫の「沓子・妻隠」を読んだ。 かなり前なので、内容はほとんど覚えていない。 今回の「辻」では、...
SMAPが解散する前、水曜日の深夜に「ゴロウデラックス」という稲垣吾郎が司会を務める読書バラエティがあり、又吉直樹がゲストの時、古井由吉を特集していた。 その頃、少し興味を持って、新潮文庫の「沓子・妻隠」を読んだ。 かなり前なので、内容はほとんど覚えていない。 今回の「辻」では、ほとんどの作品にセックスが出て来て、タイトルの「辻」も情景描写で頻繁に使われている。 辻とは十字路のことだが、十字路とか四つ角ではなく、辻である。 そして、辻を通り過ぎると、何かが起きる。 一読では、良く分からないので、老後の再読のためにとっておく。 解説があれば、良かったのだが、巻末には大江健三郎と著書との対談が収録されている。 これはこれで面白いし、読書の参考にもなる。 難解なものを読むのは、時には自分の理解を超えた領域に手を出してみたいという不合理な衝動なのだろう。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
表題作を読んだ。文章はかっこいいのだが、ぱっと読んで頭に入ってきづらく、正直話としても何が面白いのかよくわからなかった。 が、文学作品としての評価は高いそうなのでどこかで分かりやすい解説無いかなぁ…。
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視点の切り替えが分かりにくいのと、短編なのに長編と錯覚してしまうくらい内容の密度が濃い。 まだ読むには知識量が足りないなぁと感じた。そのうちまた再読チャレンジしたい。
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書かれるほとんどについて、主人公の妄想か現実か、いつのことか、分からずに混乱。分かるべきものなのかも分からない。
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輪郭がぼんやりとしていて、何がなんだか分からないと思っていたら、ふとこれは老境の物語ではないかと気付いた。それも、ふと途中で、古井と大江の巻末の対談を読んだからだ。この対談は、訳詩と創作の破滅的な関係を語っていて、すこぶる面白い。 分かったのは、暖かい髭、だけだった。
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