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ハンナ・アレント の商品レビュー

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5件のお客様レビュー

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2021/05/06

入門書の割にはかなり難しく感じたが、すごく勉強になった一冊。特に中盤はかなり読み切るのに苦労した。 アーレントによる近現代政治体制の考察を、彼女の著書に沿って著者が解説。 quote:『人間の条件』 活動 action とは、物あるいは事柄の介入なしに直接人と人との間で行われ...

入門書の割にはかなり難しく感じたが、すごく勉強になった一冊。特に中盤はかなり読み切るのに苦労した。 アーレントによる近現代政治体制の考察を、彼女の著書に沿って著者が解説。 quote:『人間の条件』 活動 action とは、物あるいは事柄の介入なしに直接人と人との間で行われる唯一の活動力であり、多数性という人間の条件、すなわち、地球上に生き世界に住むのが一人の人間 man ではなく、多数の人間men であるという事実に対応している。

Posted byブクログ

2016/10/10

映画『ハンナ・アーレント』をWOWOWで観たので、手っ取り早くその人なりと思想を学ぼうとKindleで購入した。読後のあとがきを見て気が付いたことだが、本書は元々『現代思想の冒険者たち』という現代思想の代表的な思想家を選定して、その道の専門家がまとめたシリーズものの第17巻『アレ...

映画『ハンナ・アーレント』をWOWOWで観たので、手っ取り早くその人なりと思想を学ぼうとKindleで購入した。読後のあとがきを見て気が付いたことだが、本書は元々『現代思想の冒険者たち』という現代思想の代表的な思想家を選定して、その道の専門家がまとめたシリーズものの第17巻『アレント 公共性の復権』だとのこと。このシリーズは、自分が学生時代に講談社から出版されたもので、途中まではすべて購入して読んでいた。もしかしたら読んだことあるのに気が付かなかった...と思ったのだが、『アレント』の巻は刊行が遅かったのか、書棚にはなかったので、読み終わるまでそのことに気が付かなかったのは当然だと安心した。とはいうものの、20年以上も前にこの本を読んだとして、タイトルも変わっていると、そのことに気付けたかどうか心もとない。それほど、分かりにくさがある思想家のようだ。 アレントについては、『イェルサレムのアイヒマン』で、アイヒマンを平凡な小役人と描き、あのような残虐なことをなしえたのは、強烈な意志があったわけではなく、その官僚制における自律的な判断の不在にあるとした。社会的な騒ぎになったこの件は、映画『ハンナ・アーレント』でも主要なエピソードとして取り上げられている。この「悪の凡庸さ」については、自分が愛読する高橋源一郎や森達也も何度も取り上げているが、アイヒマンを自分とは違う悪魔に仕立て上げて批判するよりもよほど現代含めて非歴史的に通用する批判となっている。ひとつは、あなたがその立場に立つこともあったことにまずは畏れるべきだという点にある。激しい論争が起きたのは、同胞でもあるユダヤ人に対して強制収容所でのユダヤ人協力者の存在とその批判を行ったことにもあったようだが、今となれば彼女の心の強さも合わせて正当に評価をされていると思う。 アレント自身がユダヤ人であり、フランスの収容所も経験した(戦時中にアメリカに亡命して絶滅収容所行きの難は逃れた)こともあり、全体主義に対する分析と批判は代表的な仕事となっている。全体主義を20世紀西欧における必然的帰結とし、歴史的な必然性を語る。そこに至る道として、帝国主義とそこから導かれた人種主義と官僚制が、全体主義(ナチズムとスターリニズム)を産んだというのだ。その本質にテロルを見たり、階級なき大衆について分析するなど、今の世界の問題にもそのまま当てはまるところもあるのではないだろうか。 著者は、思想家の概説書の任務について、「その思想家の作品を、読む気にさせる、読まずに済ませてくれる、そして読むときに助けになる」の三つがあるという。そして、この本を第二と第三の任務を両立させようとしたという。『全体主義の起源』や『人間の条件』という魅力的なタイトルの著作があるが、Kindle化されていないこともあり、ちょっと読むのは先かなと思う。『人間の条件』の方の解説は残念ながら自分の琴線には触れなかった。『アイヒマン』はKindle化されれば読みたい。そのときにはまた助けになってくれるだろうか。

Posted byブクログ

2014/08/12

難易度はかなり高い(と思う)。 第一章、第二章の『「全体主義の起源」を読む』が素晴らしい。 かなり骨は折れるが、しばらくしたらもう一度読み返してみよう。

Posted byブクログ

2014/08/16

『全体主義の起原』の読解に前半の2章を割き、第3章でアレントの革命論・アメリカ論、最後の第4章でアレントの政治論を概観する。 工業の発展による過剰な資本の生産が帝国主義を生み、「国民国家」と「階級社会」に特徴づけられる19世紀的秩序を破壊し、市場の世界的拡大を狙うブルジョワジー...

『全体主義の起原』の読解に前半の2章を割き、第3章でアレントの革命論・アメリカ論、最後の第4章でアレントの政治論を概観する。 工業の発展による過剰な資本の生産が帝国主義を生み、「国民国家」と「階級社会」に特徴づけられる19世紀的秩序を破壊し、市場の世界的拡大を狙うブルジョワジーが政治に口を出すようになり、植民地の原住民との「遭遇」が古来の「人類」思想を崩壊させ、「人種的ナショナリズム」が植民地支配を正当化、すなわち「民族」を人種のみによって定義し、一つの民族が他の民族を支配することを正当化したことによって「人種主義」の素地が出来上がる。 「海外帝国主義」の潮流に乗り遅れたドイツやロシアは、ヨーロッパ大陸内部に資本・労働力・警察・軍隊を輸出する「大陸帝国主義」に走り、大陸帝国主義はグローバリズム的展開を正当化するため、「人種的ナショナリズム」の代わりに「汎民族運動」と結びついた。自民族と他民族の差異を絶対化することにより、自民族の成員個人間の差異はぼやけていく……。 このように、アレントの全体主義解釈は、いわばとーっても長い「風が吹けば桶屋が儲かる」式のロジックであり、しかもそのストーリーは必ずしも連続性・必然性のあるものではないので、論を追いかけるのでいっぱいいっぱいになるときがあっていささか骨が折れた。 個人的には、共和政・評議会制への期待、代議制・政党制への懐疑、異なる意見の存在を大前提とした複眼的態度、個人の自由な言論活動(政治参加)の重視などなど、アレントの政治観には強い共感を覚える部分が多い。 第4章の終わりの方に、ハーバーマスによる至極真っ当なアレント批判(実際の政治の場の議論の難しさを軽視しているという主旨)が紹介されているが、それを差し引いても、アレントの諸々の主張は尊重するに値する。 アレントが夢見た自由な言論空間の実現は、現代人をアパシーやニヒリズムから救い出すための最も効果的な手段の一つであるように思う。

Posted byブクログ

2014/06/04
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

川崎修『ハンナ・アレント』講談社学術文庫、読了。入門として嚆矢といえる「シリーズ 現代思想の冒険者たち」『アレント 公共性の復権』待望の文庫化。資料・データのアップデートのほかは、『全体主義の起原』『革命について』『人間の条件』に焦点を当てた構成は同じだが、今なお色あせない。 「政治的な問題とは、人間の意識的な活動・相互行為によって『別様でもありえること』である。その意味で、政治的にものを考えるということは、宿命論や因果的決定論を排することでもある」。アーレントが政治理論を歴史哲学と峻別し擁護する意義は今こそ大きい。 19世紀的秩序の解体から破局の20世紀へ--アーレントの課題を「人間の複数性の徹底的な擁護と『世界への愛』」と捉え、その消息を紹介する。『イェルサレムのアイヒマン』が注視される近年、彼女の基本的構えを丁寧に明かす本書は座右に置きたい一冊。

Posted byブクログ