未来のイノベーターはどう育つのか の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
私がこの本が良いと思う理由に、イノベーターの作り方と言った本書の主張をまとめたページが無いことです。本によってはエッセンスが要約されたページが用意されていて、そこを読めば短時間でも本を理解できるような構成で作られています。 しかし、この本は各箇所に大事なエッセンスやポイントがちりばめられており、それが逆に良いと思うのです。すぐに理解が出来るような本ではなく、子供や後輩・部下に実践する中で、「イノベーターとして、育てるのはどうしたら良いか?」「この子をイノベーターに育てるにはどうしたら良いか?」という問いを感じた時に、舞い戻るような指南書や教科書的な位置づけになる本ではないでしょうか。自分が直面する問題に対する問いを持って読んだ時には、それに相応しい答えが見つかるはずです。 私が本書で一番強烈にインパクトが残ったのは「教育によって好奇心が抜き取られてしまう」という一文です。好奇心を辞書で調べると、“珍しいこと・未知のことに対する強み興味・関心”と出て来ます。言われて見ると、子供の頃は好奇心から触れること・質問すること・チャレンジすることが生活の中に織り込まれています。常に新たな一歩を踏み出しているとも言えるでしょう。 しかし、年齢を重ねるに連れて、新たな一歩を踏み出すことをしなくなるのは、好奇心が段々と抜き取られているという捉え方を私はしました。当たり前のことですが、教育を受けるのは人間で、機械ではありません。機械でないとするなら、人には「心」があります。その心を耕すこと・鍛えることこそ、教育の本質ととらえることができるはずです。 本書を読むに連れて、好奇心が抜き取られてしまう原因に、「子ども(広い意味で相手)を型にはめる」というものがあるのではないかと思い始めました。型にはめて教育を行うことで、狭い世界での枠に収まることを生んでしまう。これではイノベーターを生むための教育とは、大きなズレが生じていることになると思います。 「それでは、どうしたら良いのか?」 私なりの結論で言えば、相手に合わせた教育をすることになると思います。先生は生徒に、親は子に、先輩は後輩に、上司は部下に、相手を基軸にした、主役にした教育を徹底的に心掛けることがイノベーターを生むために何より大事だと言えます。そこには相手との信頼関係や信頼を作るための時間が必要になります。その中で好奇心を大切に育て、相手(教育を受ける側)に「学びを愛する」気持ちを生んでいけるような環境づくりこそが教育する側に求められていることではないでしょうか。 「私たちは子供の決定や選択に基づき指導する。子ども達が何をしようとしているのかを見極め、助けます。そのためには、子ども達が何に関心を示しているか見逃さないようにしなくてはいけません。教員の観察力が要求されます」 私は、この文章にこそ、本書のメッセージがつまっていると思います。行き着くところは、やり方ではなく、在り方だと。
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