シン・シティ(1) の商品レビュー
アメリカン・コミック界のカリスマ、フランク・ミラーによるスタイリッシュなハードボイルド・コミックの名作『シン・シティ』。全7巻におよぶ原書を4冊にまとめた日本版単行本シリーズがいよいよ刊行開始。アイズナー賞、ハーヴェイ賞などをコミック界の各賞を総なめにした傑作の全貌がついに明らか...
アメリカン・コミック界のカリスマ、フランク・ミラーによるスタイリッシュなハードボイルド・コミックの名作『シン・シティ』。全7巻におよぶ原書を4冊にまとめた日本版単行本シリーズがいよいよ刊行開始。アイズナー賞、ハーヴェイ賞などをコミック界の各賞を総なめにした傑作の全貌がついに明らかになる! 第1巻となる本書には2005年の映画『シン・シティ』の原作の一つである「ハード・グッバイ」、2014年8月全米公開予定の続編『シン・シティ:復讐の女神』の原作となる同名作を収録。 「ハード・グッドバイ」 ゴツいルックスに似合わぬピュアなハートの持ち主マーヴは、行きつけのバー・ケイティで絶世の美女ゴールディに誘われ一夜を共にする。だが、ゴールディは謎の人物に殺害され、濡れ衣を着せられ警察に追われるマーヴは、たった一夜の愛をくれたゴールディの無念を晴らすため血まみれの復讐に乗り出す。 「ア・ディム・トゥ・キル・フォー」 元カメラマンの私立探偵ドワイトは、金持ちの浮気調査などの汚れ仕事に勤しんでいた。ドワイトは手酷い別れ方をしたエヴァの色仕掛けに騙され、エヴァの旦那を殺すはめになってしまう。ドワイトは、オールドタウンの娼婦の助太刀の下、エヴァに復讐しようとする。 物心ついた頃からフィルムノワールやハードボイルド小説に恋していたフランク・ミラーは、ハードボイルドな世界観をアメコミに投影するために、モノトーンを中心としたアートで街や人物の陰影を巧みに表現しフィルムノワール独特の光と闇の美学を生かしつつ、悪徳にまみれたシンシティで悪漢や悪女に翻弄されながら己の流儀を貫いて巨悪に立ち向かうハードボイルドな主人公の戦いを過激なバイオレンスや乾いた自嘲的で詩的なモノローグを絡めて熱く描いている。 特に、「ハード・グッドバイ」の主人公マーヴのたった一夜の愛をくれたゴールディのために「死ぬ覚悟も殺す覚悟も地獄に落ちる覚悟もあるぜ」と巨悪に立ち向かう男気あり過ぎる生き様は、レイモンド・チャンドラーの「さらば愛しき女よ」の大鹿マロイを思わせるかっこよさです。 また、娼婦がマーヴを拷問するシーンなど「さらば愛しき女よ」の場面を引用しているのも、ハードボイルド小説ファンには、ニヤリとさせられました。
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タフで愚かな男が最後に己のスジを通す。哀しくケレンにあふれたバイオレンス・ハードボイルド。1コマ1コマが鮮烈な画は今見ても抜群にクール。前の訳で読んだ「ビッグ・ファット・キル」のドワイトの過去、そういう事(髪)だったとは……。
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