隣人が殺人者に変わる時 加害者編 の商品レビュー
前作ではルワンダの虐殺の生存者のインタビューが収められていましたが、この作品ではそれとは逆に加害者の声を聞くことになります。 正直、読んでいて暗い気持ちになり、胸がむかむかしてきます・・・被害者は全てを失い、生き残った者も絶望的な苦しみを味わい続けています。しかし、それに対し加...
前作ではルワンダの虐殺の生存者のインタビューが収められていましたが、この作品ではそれとは逆に加害者の声を聞くことになります。 正直、読んでいて暗い気持ちになり、胸がむかむかしてきます・・・被害者は全てを失い、生き残った者も絶望的な苦しみを味わい続けています。しかし、それに対し加害者側はどうなのか。この本をそれを知ることになります。
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被害者編は生存者の語る当時の状況を読んでいくのがつらかった。 こちらはえ?と思ってしまうような話もあって難しかった。 すべてを語れば壊れてしまうのも確かだろうし、その場にいなかった人には理解できないのも当然だろうけど、同じことを繰り返さないためには? 第三巻も読んでみよう。
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ルワンダ虐殺の加害者へのインタビューに基づいたノンフィクション。 原著は2003年出版。著者はマダガスカル生まれのフランス人。 インタビュー対象となったのは収監された加害者男性たちのグループ。 バラバラの加害者を複数人、ではなく、元々親しくて虐殺の時も刑務所内でも親しくしている...
ルワンダ虐殺の加害者へのインタビューに基づいたノンフィクション。 原著は2003年出版。著者はマダガスカル生まれのフランス人。 インタビュー対象となったのは収監された加害者男性たちのグループ。 バラバラの加害者を複数人、ではなく、元々親しくて虐殺の時も刑務所内でも親しくしている人たちに取材した。 ちなみに通訳も加害者たちのご近所さんで妻子を殺された生存者。もしかすると妻子を殺したのはこのグループかもしれない。 著者によると、ある程度重い刑が確定した加害者だけが率直に話をしてくれるらしい。 なぜなら話したことによって刑罰が左右されることなく、刑務所の塀に守られて被害者や家族や隣人の目を気にする必要もないから。 それでも「私は」では語れない。「我々は」でようやく言葉にできる。 できないことは克服する努力をしつつ、向き不向きもあるから自分にできる範囲で、苦手な人がいれば得意な人がフォローして進める「作業」の説明は、していることが虐殺でさえなければ丸きりただの仕事風景だ。 ・自分が殺しているのは隣人の○○さんではなく排除されるべきものでしかなかった。 ・見逃すことはできたけれど助けることはできなかった。 ・農作業に比べて略奪はわりのいい仕事だった。 ・上が決めたことを実行しただけ。するしかなかった。 こういう言葉が皆、そうなんだろうと納得できてしまう。 言い訳や正当化を含んでいるのかもしれないけれど、その状況になったら抗えないのは想像できる。 私はこういう状況になっても積極的に人殺しをするタイプじゃない。それは自信がある。 でもこういう言い訳を並べる自分は容易に想像できる。 だから怖かった。 この加害者たちは元々素行不良のグループで、ツチにヘイト発言を繰り返していたらしい。 実際のツチに私怨はないけれど、大人や社会から刷り込まれたとおりに「やつらはわるいものだ」と思い込む。 そういう姿は「ネットと愛国」http://booklog.jp/users/melancholidea/archives/1/4062171120で描かれた在特会によくにていてぞっとする。 条件さえ整えば日本でおこっても不思議はない。 インタビュー内容は興味深いけれど、構成がわかりにくい。 インタビュイーの略歴が出てくるのは一番最後。 先入観を抱かせないためかもしれないけれど、誰が誰だか(生存者か加害者かすら)よくわからないまま読み進めるのは理解の足を引っ張る。 著者の見方も視野が狭いように思う。 たとえば背景について。ベルギーやフランスの影響はほぼ無視されている。 ガス室や火器など「近代的な」方法がとられなかったのはルワンダが遅れているからのように描かれるが、これは経済的な理由ではないのか? ジェノサイド自体や比較対象としてでてくるホロコーストの見方にも疑問がわく。 農村のジェノサイドと都市部のジェノサイドの違い、という視点は大事かもしれないけれど、ルワンダやジェノサイドを特別なものにしようとしすぎているようにも思える。 著者の見たい姿にねじまげかけている気配が気になる。 被害者にさっさと許してもらおうとする加害者の心理はジェノサイドの加害者特有のものとして描かれるが、これは個人的な殺人やジェノサイドではない戦争犯罪の加害者と変わらないように思う。 たとえば「父がしたこと」http://booklog.jp/users/melancholidea/archives/1/4774300969 「弟を殺した彼と、僕」http://booklog.jp/users/melancholidea/archives/1/4591082350 近い立場の本なら「野戦郵便から読み説く普通のドイツ兵」http://booklog.jp/users/melancholidea/archives/1/4634673843がおすすめ。 宗教が役に立たないとか仲間の目を気にするという点では「名誉の殺人」http://booklog.jp/users/melancholidea/archives/1/4022630078も連想した。 訳の拙さが読みにくさに拍車をかける。 高校生の奉仕クラブの活動の一環?としてみんなで訳したものらしく、章によって文章の質にかなりのムラがある。 拙い部分はもう日本語として破綻している。 長文のテストでこれだけできたら相当優秀だろうし教育実践としては良い試みだと思うんだけど、本として読むのはつらい。 もうちょっと添削できなかったものか。 すでに出版されている生存者編も読みたいけれどこの感じだと読むのに気合いが必要。 三部作の残り一冊は正直プロに訳してほしい。
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※このレビューにはネタバレを含みます
生存者の証言のほうは読んでおらず、こちらを手に取ってからその版があることをあることを知りましたがそちらもいつか読まねばならないと思いました。 両方の立場からでは全く違う様子が見えてくる出来事だからです。 日本に居るとこういう事実が世界にはあることを忘れがちですが、紛争は他国民同士でするものより、より近い民族同士で行われるものの方が過酷で容赦のないものになるのかもしれません。 個人の思惑などはるかに越えて、民衆全体の意識が一方向に向かってしまう状況に否応なしになっていくということなのでしょう。大変恐ろしい状況です。 こういうことが起きうるということは知っておかねばならないと思いました。 それにしても驚かされるのは加害者となったフツの人々の乾いた感覚。罪の意識というものが見えてこないことに衝撃を受けます。心配していることは刑務所出所後のツチからの報復とそれからの暮らしのこと。 それだけ差別の意識が深いのだということを知ることが出来ますが、少なくとも現代の日本人にはその感覚は多分理解できないのではないかと感じました。 ちょうどこちらを読む前に映画「ハンナ・アーレント」を 観ました。内容にリンクするものを感じ、タイムリーでした。映画についてよく理解できなかったことがこの本を読んで理解が深まりました。ちょうど本書にもハンナ・アーレントについて少し触れられていました。 平凡な人が、いわば自分の意思なく悪を犯すというのはどういうことなのかと深く考えさせられます。
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