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太陽王時代のメモワール作者たち の商品レビュー

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2015/11/25

17世紀フランスのメモワール文学が持つ政治的・社会的行為としての側面に光を当てる研究。特にフロンド(の乱)前後に活躍した人々のメモワールから、フランス絶対王政における政治的・社会的行為規範・価値観を明確化している。第二章ではコリニー伯のメモワールから、ロラン・ムーニエが提唱する「...

17世紀フランスのメモワール文学が持つ政治的・社会的行為としての側面に光を当てる研究。特にフロンド(の乱)前後に活躍した人々のメモワールから、フランス絶対王政における政治的・社会的行為規範・価値観を明確化している。第二章ではコリニー伯のメモワールから、ロラン・ムーニエが提唱する「フィデリテ」概念が当時のフランスで有していた規範的機能が示される。第三章では、コンデ親王への暴力を前代未聞の出来事と記すタロンのメモワールから、血統原理が拡大され大貴族(公爵同輩衆)の身分的地位が押し下げられていく過程が読み取られる。第四章では、メモワール作者として有名なレ枢機卿によるパリ市庁舎虐殺事件の解釈から、コンデ親王の神話化と親王との和解を目指す枢機卿の意図が読み取られる。第五章では、ラ・ゲット夫人のメモワールから、コルネイユの悲劇の筋書きが現実の行為規範として機能していたことが読み取られる。第六章ではナヴァイユ公のメモワールが論じられるが、王に諫言することを臣下の義務と捉える彼が宮廷から排除される様子が描かれることによって、臣下は宮廷では沈黙するべきだという「礼儀」が新たな価値観として形成されたことが指摘される。第七章では、レギュス侯のメモワールから、フロンドの錯綜した性格が指摘される。すなわち、これは反絶対王政の反乱ではなく絶対王政内部での権力闘争であり、特にこのメモワールからは、地方高等法院が自己利益のために王権と手を結んだことが指摘される。しかし侯のメモワールの意義はそれにとどまらず、メモワールが後代の歴史家の歴史解釈にも影響を及ぼすことが指摘される。その点には第八章が割かれており、ここではブリエンヌ伯のメモワールからルイ14世の親政開始がフランス王政の転換点であるという解釈が現代まで連綿と受け継がれていく様が描かれる。メモワールという歴史史料としてはこれまで軽視されてきた「文学」を読み解くことによって、フランス絶対王政というコンテクストの中でメモワール作者たちがどのように行動していたのかを活写している点に、本書の面白さはあると言える。

Posted byブクログ