九月、東京の路上で の商品レビュー

加藤直樹【著】

2018/07/21

210.6 ｶ [２Ｆ歴史]

https://blogs.yahoo.co.jp/nkl3doai/15299138.html
http://www.asiapress.org/apn/2014/04/japan/4_54/
http://tokyo1923-2013.blogspot.com/2013/08/

2017/09/30

1923年9月にあった出来事を丁寧に掘り起こした本である。
災害時にはユートピアも起こるが、パニックも起き、それへの行政が対応を間違えると人災となる悲劇が起こる。それを「エリート・パニック」というらしい。
これは災害時の公権力の無力化に対して、これを自分達の支配の正当性への挑戦ととらえる行政エリートたちが起こす恐慌のことだ。社会的混乱に対する恐怖、貧乏人やマイノリティや移民に対する恐怖、火事場泥棒や窃盗に対する強迫観念、すぐに致死的手段に訴える性向、噂をもとに起こすアクションである、とのことである。
90年前の出来事は、そのような文脈で起こったこともあり、記録があまり残されていないこともあり、現代では違った解釈をされる、また極端にはなかったこととされる言説も聞こえる。災害の多い我が国では決して90年前の出来事ではないことを忘れないでおくことが、悲劇を防ぐことにつながる。
最後に帯に書いている、いとうせいこうの言葉でしめよう。
「歴史は繰り返すと言う。だが、過ちを繰り返さないためにこそ歴史があるのではないか。繰り返してはならない、この歴史を」

2017/08/20

1923年9月1日11時58分。神奈川県相模湾沖を震源とした
マグニチュード7.9の大地震が発生した。関東大震災である。

地震そのものの被害もさることながら、昼食時と地震発生が
重なった為に各地で大規模な火災が発生した。

混乱を来す人々の間で不安を煽る「噂」が流れる。「朝鮮人が
暴動を起こす」「朝鮮人が井戸に毒を入れている」。

本書は根も葉もない流言飛語が引き金となった、日本国内で
のジェノサイド「朝鮮人虐殺事件」について多くの証言を積み
重ねて実態をつまびらかにしている。

朝鮮人虐殺事件があった。そのことは知っていた。大地震後
の集団ヒステリーが引き起こしたのだろう。そんな感覚しか
持っていなかった。

だが、事実はあまりにも凄惨だった。当時、朝鮮半島は日本の
植民地であった。その植民地から来た人々は、ただでさえ被差
別者であった。

短期間間で朝鮮の人々に向けられた日本人の憎悪は、差別者
としてのうしろめたさや罪悪感の裏返しか。

民族が違えど同じ被災者だったはず。それなのに、単なる「噂」
だけで何故、暴力を振るえるのか。何故、命を奪うことが出来る
のか。

優しく、大人しいアメ売りの青年は自警団に惨殺された。身の安全
を守ってもらおうと警察に自ら出向いた人たちの中から、人身御
供のように荒れ狂う民衆の手に差し出された人々がいた。

そうして、政府も、警察も、軍も、新聞も、事実を隠ぺいした。
殺された人数にまったく見合わない何人かが起訴されはした
ものの、非常に軽い処罰で済ませている。

ある自治体がこの朝鮮人虐殺の記述がある中学校の副読本を
回収したとのニュースが、しばらく前にあった。私たち日本人が
やったことを教えぬことが教育なのか。「自虐史観だ」とでも言う
のだろうか。

反省するべきことは反省する。それが歴史から学ぶことでは
なかったか。

朝鮮人　あまた殺され
その血百里の間に連なれり
われ怒りて視る、何の惨虐ぞ

デマを信じ17人の朝鮮人が群馬県内で殺害された事件への
怒りを作品として発表したのは萩原朔太郎である。

90年前、私たち日本人はなんの証拠もないのに朝鮮人を
殺した。そして、今、やはり何もしていない韓国の人々に
向かって「出て行け。殺せ」と叫ぶヘイトスピーチを行う
人々がいる。

レイシストたちは分かっているのだろうか。場所が違えば
自分たちが差別される立場になるということを。根拠のない
憎しみを育てることが、何の役に立つのだろうね。

2017/06/26

警察や軍まで加担していることは知らなんだ…
それに、虐殺の現場は以前私が東京に住んでいた頃よく徘徊した処ばかり…

歴史修正主義者はそれでも否定すのだろうか…
とても空しい…

2016/08/03

折口信夫さんのことが書かれていて、びっくりした。保坂正康さんのお父さんのことも書かれていた。
あんなに人間は豹変するのか、と。

涙を流しながら読みました。大変感動しました。
朝鮮人ね。朝鮮人ってなんなんだろうな。異邦人みたい。

日本に住む人々は、流されやすいのか。

すごくいい本です。

ただ判型が少し大きすぎる気がする。電車では読みにくい。

2016.8.3.

2016/04/29

読んで良かった…としかいいようがない。

九十年前も今も人はあまり変わらない、だからこそ関東大震災時の朝鮮人虐殺がまた起こるかも知れないという危惧がひしひしと感じてしまったりもした。

この本を読んで、頭を冷やしてほしいですわん。

2015/07/31

　関東大震災から90年経った2013年、レイシストたちは韓国人が商売し、生活するエリアでヘイトスピーチを繰り返していた。こうした状況に、著者は強い懸念を覚える。なぜなら、「不逞朝鮮人」のプラカードを持ち、「殺せ」と叫ぶレイシストの声が、90年前に東京の路上に響いていた「殺せ」という叫びに共鳴するからだ。
　関東大震災は10万人以上の死者を出した大惨事だったが、これにさらに凄惨な相を与えたのが、朝鮮人や中国人への無差別虐殺だった。「東京はそのとき、ジェノサイドの街だった」。
　本書は、この過ちを絶対に繰り返してはならないという強い決意のもと、当時の証言や記録をもとに、90年前に何が起きたのかを明らかにする貴重なドキュメントだ。真実を隠蔽せずに記憶していくことが、最重要な「防災」であると説く著者の言葉が重く響く。

2015/06/18

「私がこの本でもっとも大事にしたいと考えたのは、関東大震災時の朝鮮人・中国人虐殺について、事実を「知る」こと以上に、「感じる」ことだった。」（202P）
歴史の教科書で流言による虐殺があったと学んだ記憶はある。
しかし本書では個別の証言によって異様な雰囲気や凄惨さを感じることになった。
この事態に至る過程（韓国併合に象徴されるような蔑視感情、三・一運動によって生じた恐怖心）。
自分たちの内部で仮想敵を作り上げたような状態。
本書でも出てくるが、隣人を守るために立ち上がった人たちもいた。その人たちはあくまで「隣人」を守ったわけだが、それはその「隣人」と触れ合って互いに「人間」であることを分かっていたからだ。
再び同じことが起きかねない状況であるかもしれないが、それを現実のものとしないために、学んでいきたいと思う。

2015/03/28

関東大震災での朝鮮人虐殺の話である。今までの資料では口語のものがなかったので、これは読みやすいと思われる。小平の喜平橋や茜屋橋での自警団についても書かれているので、大学の歴史としても役立つ。

2022/09/02

90年前に起きたことだ、と安心できる要素はどこにもない。当時、鳶口や日本刀を振りかざして朝鮮人や中国人に切りつけた連中は、今は新大久保あたりでデモをやっている。ネットやマスコミで、人種差別を公言する輩は珍しくもない。大して変わっていないのではないかと思えるのだ。
こういう連中は日本にかぎらず、世界中どこにでもいる。ニューオリンズがハリケーンで水没したとき、黒人を撃った白人の自警団は、東洋人は大好き、というわけでもないだろう。日本にレイシストがいるように、韓国にも差別主義者がいるだろう。志を同じくするものどうし、国際会議でもやったらいいのに、と思う。