英子の森 の商品レビュー
好き!!寓話的でありながら、リアルな現代を皮肉る視点が冴え渡っていてとっても面白かった。グローバル化を謳う社会、丁寧すぎる注意書、建前だらけのコミュニケーションなどなどに溢れた世界にどっぷり浸って生きている私の鈍感さと空虚を見透かした著者によって、時に面白おかしく、時に温かくそ...
好き!!寓話的でありながら、リアルな現代を皮肉る視点が冴え渡っていてとっても面白かった。グローバル化を謳う社会、丁寧すぎる注意書、建前だらけのコミュニケーションなどなどに溢れた世界にどっぷり浸って生きている私の鈍感さと空虚を見透かした著者によって、時に面白おかしく、時に温かくそれらを胸に突き付けられた気分。本当に面白かった。
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とにかく、装丁が綺麗。 短編小説集。6話収録。 タイトルの作品は、英語を得意としながらも、それをうまく社会で発揮できず、悶々と派遣社員を続ける三十路手前の女性、英子と、森に住むその母親の物語。作者の実体験に基づいているらしい。 6話全体的に、暗喩を用いたり、ハッキリと言葉には表さ...
とにかく、装丁が綺麗。 短編小説集。6話収録。 タイトルの作品は、英語を得意としながらも、それをうまく社会で発揮できず、悶々と派遣社員を続ける三十路手前の女性、英子と、森に住むその母親の物語。作者の実体験に基づいているらしい。 6話全体的に、暗喩を用いたり、ハッキリと言葉には表さず、場面や人称が変わったりと、少し不思議な雰囲気。そしてシュールでもある。 最後の「わたしはお医者さま?」の空気感は好きだな。この設定は他に見たことがない。一番作者の力量を私は感じた。 でも、起承転結、山場がどの作品もあまり感じられなかった。もう少し、それぞれ見せ場があっても良いかも。
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図書館にて。 前作「スタッキング可能」とはまた違った味わい。 表題作は特に、静かな中に緊迫感があって、不思議な絵を見ているみたいだった。 「おにいさんがこわい」好きだったな。 「博士と助手」ナイスなラスト。 この人にしか描けない世界がある、次回作も楽しみ。
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何者にもなれない自分といまも格闘している私にとって、とても共感できるし、どこにも行けない寂しさを感じて、なんだかどこかほっとした。山内マリコと川上弘美を足して割ったような雰囲気の短編集。 ほかの作品も、日常に感じる違和感が共感たっぷりに描かれている。ありきたりの言葉で語ることによ...
何者にもなれない自分といまも格闘している私にとって、とても共感できるし、どこにも行けない寂しさを感じて、なんだかどこかほっとした。山内マリコと川上弘美を足して割ったような雰囲気の短編集。 ほかの作品も、日常に感じる違和感が共感たっぷりに描かれている。ありきたりの言葉で語ることによって、却って何かの可能性を失ってしまうむなしさ。なんかみたことある言葉で、なんとなくまとめてしまうことは、結局なにも語っていないんだよね。このレビューにしたってそう。私は本のレビューなんて結局書いていないんだ。
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春に読んだ松田青子の『スタッキング可能』がおもしろかったんで、この人の新作『英子の森』も読んでみたいなーと思っていたが、近所の本屋に見当たらず、図書館ではぞろぞろ予約がついていたので、しばらく忘れていた。 気がつくと図書館の本が空いてたので、借りてきて読む。本のてっぺんから中...
春に読んだ松田青子の『スタッキング可能』がおもしろかったんで、この人の新作『英子の森』も読んでみたいなーと思っていたが、近所の本屋に見当たらず、図書館ではぞろぞろ予約がついていたので、しばらく忘れていた。 気がつくと図書館の本が空いてたので、借りてきて読む。本のてっぺんから中ほどまでが表題作で、これは、"英語ができたらグローバル社会でバッチリ"みたいな沼に足を取られた人たちの話。親も先生も、テレビも広告も、「英語ができると後でいいことがある」「英語は新しい世界につなげてくれる扉」だと言った。それで英子はますます英語を好きになり、ずっと英語を勉強してきたのだ。でも、今は思う。「じゃあなんで今のわたしはこんなところにいるんだろう。」(p.16) 「英語を活かせるお仕事☆」を求めてきたが、結局のところ、英語を使う仕事と英語を使わない仕事の時給の差はたった50円。 ▼はじめて英語を使う仕事をしてからずっと、英語を使っているのではなくて、英語を使わせてもらっているような気がしていた。英語を使うことのできる仕事を、見えない誰かに用意してもらっているような気がするのだ。使わなくていいものを使いたい使いたいと思う、その気持ちを見えない誰かに見透かされていて、ねえ、そんなに使いたいんだったら、50円差でもいいですよね、だって使いたいんでしょうあなた、それを、英語を。そう思われている、そう蔑まれているような気がした。(pp.18-19) 紹介された「英語を使う仕事」に行って、英子の口から出るのは同じフレーズの無限ループ。例えばある日はこんなだ。「こんにちは」「お名前は?」「今日のパンフレッ トです」「はい、どうぞ」「良い一日を」。これって英語を使ったことになるのかと英子は思う。 ▼不思議だった。いいね、かっこいい、うらやましい。英語ができると言うと、英語を使う仕事に就いていると知ると、みんなそう言う。けれどそのときその人たちの頭の中に浮かんでいるのはイメージの英語だ。本当に恵まれた状態で働けている人たちはほんの一握りで、一方の娘は、今、電話代も出してもらえない。プライドの持ちようがなかった。自分を誇ることができなかった。(p.55) たぶん"英語"に限らない話なんやろうなーと思いつつ(ちょっと前だったら法科大学院がそんな感じか)、"英語"が象徴的に感じられる話だった。 「英子の森」や、その他の収録作を読んでいると、アレに似てると思う。時季になれば新聞にどっさり折り込まれてくる塾の広告の謳い文句、あるいは、電車内で見かける大学や専門学校や自己啓発の広告にあふれる魔法の呪文。今これをやっておけば未来は安泰というような、あるいは、これをやっておかないと世界に乗り遅れるというような、 脅しにも聞こえるアレ。 松田青子は、そんなアレコレへの違和感を書きとめる。その違和感の出どころを明らかにしようとする。そこのところが私にはおもしろい。 この本を読んだら、『スタッキング可能』をもう一度読みたくなって、図書館でまた借りてきた。 (11/12了)
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面白い小説を書く人だなぁ。振り返ると、特にすごい事を書いているわけじゃないんだけど。苛立ちはすごく伝わってきて。
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何かに気づくと、気になってしまって仕方がない。 スルーできない、突き詰めたところで、また、 次の事が気にかかる。決して終わらない世界。 さぁ今日も自分の森のなかに逃げ込むとします。
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独特の世界観。多分世の中を皮肉って風刺しているんだろう。どこまでが現実でどこからが虚像なのかわからない。おもしろいような気もするし、でもやっぱりよくわからない謎めいた本だった。
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松田青子二作目です。 表題にもなっている「英子の森」をよんで ああ文学的になったなあと思いました。 その他の「写真はイメージです」「スカートの中のABC 」などは前回どおり饒舌に言葉遊びをしている感があります。 「写真はイメージです」での 「昨日嫁が出ていったのはリアルです。空...
松田青子二作目です。 表題にもなっている「英子の森」をよんで ああ文学的になったなあと思いました。 その他の「写真はイメージです」「スカートの中のABC 」などは前回どおり饒舌に言葉遊びをしている感があります。 「写真はイメージです」での 「昨日嫁が出ていったのはリアルです。空前絶後のダメージです。それも結局イメージです」 では笑いました。 でもそれ以上に「博士と助手」面白かったです。 すらすら読みました。 世の中をきっているのだけど、うまい。 絶妙にストーリーになってるなあと感心しました。 「今回も○○節は健在!」は私もブクログでよく使ってますがなーと恥ずかしくなった。 確かに情報としてゼロなのに、なんてこと気にせずに「!」で押し切るその気概、と笑われても仕方ありませんね。 面白かったです。
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こういうのをファンタジーというのだろうか。 森や、家や、いろんなものに、何かを象徴させているのだと思うが、残念ながらちょっとよく分からない本。
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