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ユニヴァーサル野球協会 の商品レビュー

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6件のお客様レビュー

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2024/06/17

神はピザを食い、ビールを飲み、 たまに女とfxxkしてはサイコロを転がして世界を作った。 そこに生まれた人間は、いつしか神の手を離れ…… という寓話。 というか、 旧約聖書における天地開闢ストーリーのパロディ。 但し、主人公は会計事務所に勤める中年男性。 三つのサイコロを振って...

神はピザを食い、ビールを飲み、 たまに女とfxxkしてはサイコロを転がして世界を作った。 そこに生まれた人間は、いつしか神の手を離れ…… という寓話。 というか、 旧約聖書における天地開闢ストーリーのパロディ。 但し、主人公は会計事務所に勤める中年男性。 三つのサイコロを振って出た目の組み合わせから、 自作の設定表を参照し、 試合を展開させるスタイルの野球ゲームに没頭するあまり、 職を失う羽目になるヘンリー・ウォーが、 次第に現実と虚構の境い目を見失っていく物語。 後でブログにもう少し細かいことを書くかもしれません。 https://fukagawa-natsumi.hatenablog.com/

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2021/01/02

 期待のルーキー、デイモン・ラザフォードは涼し気な顔でマウンドに立っている。完全試合達成まで後少しだってのに、ちっとも動揺した素振りを見せずに!  そして、クールな表情のままミットへ投げ込むと、アウトカウントがまたひとつ! さあ、完全試合にまた一歩近づいたぞ! スタンドは大歓声を...

 期待のルーキー、デイモン・ラザフォードは涼し気な顔でマウンドに立っている。完全試合達成まで後少しだってのに、ちっとも動揺した素振りを見せずに!  そして、クールな表情のままミットへ投げ込むと、アウトカウントがまたひとつ! さあ、完全試合にまた一歩近づいたぞ! スタンドは大歓声を上げる!  ……といった具合にこの小説は始まるわけだが、実のところ、これらは試合は現実のものではなく、一人の男の脳内にしか存在しないのだった。  中年会計士ヘンリーは「ユニバーサル野球協会」という、架空の野球リーグをシュミレートする、自作ボードゲームに没頭していた。  サイコロを3つ振り、出た目によって、ヒットになるか、三振になるか、はたまたデッドボールになるのか……彼の脳内では架空の野球リーグの、架空の野球選手たちがイキイキと躍動し、試合は盛り上がりを見せていた。  だが、ある試合中におこったアクシデントによって、現実と空想が混同していく……  ゲームに熱中しすぎて睡眠不足が続いた上に、仕事中もそのゲームのことしか考えておらず、上の空だったためにミスをしてしまい、上司に叱責されるなど、身につまされるものがありますね、ええ。  ヘンリーは現代日本に生まれていたら、パワプロで延々オーペナ回しているタイプだと思う。

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2018/11/23

恐ろしい一冊。想像力も際限がなくなると、現実の境界線がどこにあるのか分からなくなる。 『ユニバーサル野球協会』とは、ヘンリー自身が考案した野球ゲームの架空のリーグ。サイコロ(これは「ダイス」と訳して欲しかった)をころがして、その出た目によって試合の次の展開を決めてゆく。このリーグ...

恐ろしい一冊。想像力も際限がなくなると、現実の境界線がどこにあるのか分からなくなる。 『ユニバーサル野球協会』とは、ヘンリー自身が考案した野球ゲームの架空のリーグ。サイコロ(これは「ダイス」と訳して欲しかった)をころがして、その出た目によって試合の次の展開を決めてゆく。このリーグには8チームが所属し、各チームは年間84試合を戦う。 架空の世界のゲームなのだが、選手は言うまでもなく、監督やコミッショナーまで人格と個性を持ち、読んでいるそばから、何がヘンリーの頭の中の話なのか、何が現実の世界での出来事なのか、もう分からなくなる。そして、ある試合の中で万にひとつのある出来事が起きてから、この空想(いや敢えて言えば、妄想)と現実の境界がますます曖昧になる。頭のなかで非常ベルが鳴っているようなのだが、それすらもどちらの世界で鳴っているのか分からない。 本書が書かれた1968年には、もちろん「バーチャルリアリティ」なんていう言葉は存在しなかったはずだ。しかし、ここで描かれているのはまさに「バーチャルリアリティ」だ。これを自分で正しく支配しないと、ヘンリーのように妄想が爆走する。そんなことをこの時代に警告していたのだとすると、その洞察力もある意味恐ろしい。

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2015/09/28

[野球「が」人生そのものだ]野球ゲームに没入するヘンリーは、(ゲームの中で)新人のラザフォードが完全試合を達成したことに有頂天となる。しかし、(こちらもゲームの中で)そのラザフォードが死球により命を奪われたことから(こちらは現実の中で)ヘンリーは鬱状態となり、復讐のために(ゲーム...

[野球「が」人生そのものだ]野球ゲームに没入するヘンリーは、(ゲームの中で)新人のラザフォードが完全試合を達成したことに有頂天となる。しかし、(こちらもゲームの中で)そのラザフォードが死球により命を奪われたことから(こちらは現実の中で)ヘンリーは鬱状態となり、復讐のために(ゲームの中で)恣意的な操作を加えようとするようになる......。現実と虚構の境目を曖昧にした小説作品です。著者は、ポストモダン作家を代表する一人と言われているロバート・クーヴァー。訳者は、同著者の作品である『ジェラルドのパーティ』等の翻訳も手がけられている越川芳明。原題は、『The Universal Baseball Association, Inc.』。 奇想天外なストーリーに見えますが、音楽や映画、そしてドラマ等を見てその登場人物に心を重ねたり、ともすれば言動や行動を引き写したりした体験が誰しもあるのではないでしょうか。(もちろんヘンリーばりに影響を受けることはまずないでしょうが)そんな経験に思い当たる節がある方には、ぜひぜひオススメの一冊です。 どうやってこの話に結末をつけるのだろうと思いながら読んでいたのですが、ラストはあっと意表を突かれると同時に、読後は「それしかないかも」と思わせるものでした。それにしてもこの現代的な内容を持つ作品が、60年代末という時代に生まれていたことに驚かされました。 〜だが、「辞める」とはどういうことなのか? 野球をか? 人生をか? それらを区別できるのか?〜 パワプロのサクセスモードで久しぶりに遊びたくなった☆5つ

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2014/02/20

【ネタバレあり】かなり前から存在は知ってたんだけど絶版で手に入らなかったのがやっと読めた。脳内野球リーグを作り上げた男の虚構の野球リーグと現実の境目があいまいになるとか、オタクがその世界に他人を招こうとしてエラい目にあうとか極めて現代的。原書出版が45年前とか信じられん。で、壮大...

【ネタバレあり】かなり前から存在は知ってたんだけど絶版で手に入らなかったのがやっと読めた。脳内野球リーグを作り上げた男の虚構の野球リーグと現実の境目があいまいになるとか、オタクがその世界に他人を招こうとしてエラい目にあうとか極めて現代的。原書出版が45年前とか信じられん。で、壮大な脳内野球リーグにハマり過ぎて仕事をクビになる男の名前がヘンリー。偶然なんだろうけど、非現実の王国でのヘンリー・ダーガーを思い出す。現実には冴えない中年〜初老の独身男、ひとたびアパートに帰れば壮大かつ現実よりよほど強固で、自分の自分による自分だけのための王国が待っている。ただ、2人のヘンリーが違うのは、ダーガーは死ぬまでこの王国を誰にも見せなかったのに我らが主人公ヘンリーは友人を自分の王国に招待してしまい、ヒドい目にあう。小学生の頃、転校したばかりの学校で新しくできた友人が自宅に遊びに来て、大事にしていたNゲージでレースをされたこととか思い出したりして泣きそうになる。うむ、今こそ読まれる価値があるはず。すべての野球データマニア、すべてのオタク必読の書。

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2014/01/29

主人公がプレイする自作の野球ゲームはかなり緻密で、一種、偏執的ですらある。職業が会計士というのもその偏執さのイメージに合っているように思う。 しかし、この野球ゲームに没頭するあまり、主人公はどんどん転落することになる。その様子は滑稽さもあるが、切なさも付きまとう。 つい『ネトゲ廃...

主人公がプレイする自作の野球ゲームはかなり緻密で、一種、偏執的ですらある。職業が会計士というのもその偏執さのイメージに合っているように思う。 しかし、この野球ゲームに没頭するあまり、主人公はどんどん転落することになる。その様子は滑稽さもあるが、切なさも付きまとう。 つい『ネトゲ廃人』なんて単語を思い出してしまうが、原書の刊行は1968年。人間の依存心は今も昔も変わらないようで……。

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