冬山の掟 新装版 の商品レビュー
「新田次郎」の山岳短篇小説集『冬山の掟』を読みました。 「新田次郎」作品は、今年の10月に読んだ『チンネの裁き』以来ですね。 -----story------------- 遭難をめぐり、人間の本質を深くえぐった初期短編集 冬山では午後になって新しい行動を起こすな―山で発熱...
「新田次郎」の山岳短篇小説集『冬山の掟』を読みました。 「新田次郎」作品は、今年の10月に読んだ『チンネの裁き』以来ですね。 -----story------------- 遭難をめぐり、人間の本質を深くえぐった初期短編集 冬山では午後になって新しい行動を起こすな―山で発熱した者のためにこのルールに背いて、吹雪の中を彷徨う一行と、その身を案じる家族の懊悩を描く表題作の他、『地獄への滑降』 『霧迷い』 『雪崩』など、遭難を材にとった全十編を収録。 峻厳な山を前に表出する人間の本質を鋭く抉り出した迫真の山岳短編集。 ----------------------- 1957年(昭和32年)から1971年(昭和46年)にかけて発表された作品が収録された短篇集… どの作品にも、山での遭難事故が織り込まれ、男女関係の変な意識や、男の面子などの愚にもつかない要素が入り込むことにより、合理的な判断ができなくなる人間の悲しい性が描かれていました、、、 感情と理性の葛藤の中で、感情が勝ってしまい、理性的な考え方を抑え込んでしまい判断を誤る姿を反面教師的に描いたヒューマンドラマ… という感じでした。 ■地獄への滑走 ■霧の中で灯が揺れた ■遭難者 ■冬山の掟 ■遺書 ■おかしな遭難 ■霧迷い ■蔵王越え ■愛鷹山 ■雪崩 ■解説 角幡唯介 スキー場で偶然出会った妻の元カレを陥れることにより自分の家庭を失ったり(『地獄への滑降』 )、 男女4人ずつのパーティーの男性4人が遭難し、自意識過剰な女性たちが自分を悲劇のヒロインに仕立て上げ、遭難は自分のせいだと主張したり(『霧の中で灯が揺れた』 )、 鼻持ちならないスキーヤーが遭難し、イヤイヤ救助に向かい、救助したあとも遭難者に辛くあたったり(『遭難者』 )、 発熱した仲間のために、冬山でのセオリーを破ったことで遭難したり(『冬山の掟』 )、 冬山で遭難し、死の間際に遺書を遺そうとするが、内容が言い訳がましいことに気付き、生死の境でそれを処分しようとしたり(『遺書』 )、 身勝手な女性のために、吹雪での遭難後に男性だけが亡くなってしまったり(『おかしな遭難』 )、 富士山で仲間とはぐれて遭難しかけ、仲間は遭難したと思い込んでいたが、無事だった仲間からは自分が遭難したと思われ大騒ぎになっていたり(『霧迷い』 )、 虚しい意地の張り合いにより遭難しかけたり(『蔵王越え』 )、 姉が山で死んだことが原因で、結婚に怯える女性が、彼女に求婚した男性と山へ行き悲劇に遭ったり(『愛鷹山(あしたかやま)』 )、 三人のパーティーのうち二人が雪崩により亡くなり、残った一人がその後の人生で大きなハンディを負ったり(『雪崩』 )、 と、男女関係における変な意識や嫉妬や男の下らないプライドという、命の重さと比べると、なんとも下らない理由で山での判断を狂わせて、そして遭難に至る展開が多かったですね… 感情と理性のバランスって難しいですね。 あと、なんだか「新田次郎」作品って、とんでもなくイヤな女性が登場することが多い感じがします… 山で何かトラウマになるような体験があったのかもなぁ。
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新田次郎氏の山岳小説である。苦労して登頂を果たしたという話ではなく、遭難をテーマにした短編が十個収録されている。淡々と語られる感じ。爽快感からはほど遠く、暗い冬山に行ったような読後感。
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作者の皮肉か、どの話も登場人物みんなアホすぎ山なめすぎでむしろ面白かったハラハラ感もなくてオチに向かって滑降してる 最後の「雪崩」は結構好きだった 本編関係ないけど、角幡さんの後輩さんはなんで雪崩にあった時抜け出せたの?
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ちょっと昔の内容ながら読みました。今も昔も、山も娑婆も人間関係のドロドロの中に生きているんですなあ。でも、山では、これが生死を分ける。だから山岳小説は、やめられない。
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冬の山が舞台の怖い短編集。 厳しい冬山の描写が克明で頭の中にはっきりとしたイメージがわき、それが怖さを浮きだたせる。 最後の解説に山の事故の多くは、人間関係が絡んで起こる、と書かれていた。 かといって知識も装備もない場合、一人で登れば大丈夫というわけではない。 山のことを恐れ、謙...
冬の山が舞台の怖い短編集。 厳しい冬山の描写が克明で頭の中にはっきりとしたイメージがわき、それが怖さを浮きだたせる。 最後の解説に山の事故の多くは、人間関係が絡んで起こる、と書かれていた。 かといって知識も装備もない場合、一人で登れば大丈夫というわけではない。 山のことを恐れ、謙虚になり、最大限の準備をして登り、人と一緒に行く場合は、どんなことが起こっても最終的には自分の判断を信じることができないと自分の命は守れないのだろう。
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冬山で遭難する系の短編小説集。男女の色恋に起因する話とかが多い。解説も、戦後にスポーツとしてポピュラーになっていく登山というものを捉えていて面白い。
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10の短編からなる山岳短編集。冬山の厳しさはもちろんですが、人を死に至らしめるのは人なんだなあ、と、感慨深く読みました。重い話ばかりなのでしんどいかも知れませんが、良くできた短編集だと思います。
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助かる人と助からない人の話が半々くらい(´Д` ) 登場人物の会話が昭和。なつかしい。 登山したくなりましたが、危ないよね。
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行くべきか退くべきか。 冬山登山に限らず登山者にとっては永遠のテーマともいえる問題である。自らの目標を達成させる欲望と、それらを打ち消す勇気の選択を迫られる場面でどう判断するのか。心身ともに極限状態の中で冷静な判断ができるものなのか考えさせられた。
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【遭難をめぐり、人間の本質を深くえぐった初期短編集】冬山の峻厳さを描く表題作のほか、「地獄への滑降」「遭難者」「遺書」「霧迷い」など、遭難を材にとった迫力溢れる山岳小説全十編。
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