写実絵画の魅力 の商品レビュー
昨年(2020年)、東急Bunkamuraで開催された(緊急事態宣言で中止になったのかも)、『超写実絵画の襲来』と題した写実絵画の展覧会の広告をかなり目にした。そこでトップで紹介されていたのが生島浩の『5:55』なる作品。写真と見紛うほどの写実的に描かれた絵画が目に焼き付いた。 ...
昨年(2020年)、東急Bunkamuraで開催された(緊急事態宣言で中止になったのかも)、『超写実絵画の襲来』と題した写実絵画の展覧会の広告をかなり目にした。そこでトップで紹介されていたのが生島浩の『5:55』なる作品。写真と見紛うほどの写実的に描かれた絵画が目に焼き付いた。 その系統の写実絵画を専門的にコレクションし展示しているのが千葉市にあるホキ美術館だという。 そのホキ美術館、そして写実絵画とは。レンズを通してありのままの一瞬を切り取る写真。その写真にはない魅力が写実絵画にある。写実絵画を描く画家達のインタビュー形式の言葉によってより写実絵画の魅力とは何かを解き明かす本作。
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写実絵画を収集しているホキ美術館の収蔵品を中心に作品を紹介し、さらに画家たちへ創作についてのインタビューを行っている。作家たちが、強い信念とそれぞれの考え方を持って写実絵画に取り組んでいることが印象的だった。例えば、野田弘志は写実絵画についてこう述べている、「物がそこに在るという...
写実絵画を収集しているホキ美術館の収蔵品を中心に作品を紹介し、さらに画家たちへ創作についてのインタビューを行っている。作家たちが、強い信念とそれぞれの考え方を持って写実絵画に取り組んでいることが印象的だった。例えば、野田弘志は写実絵画についてこう述べている、「物がそこに在るということを見えるとおりに、感じるとおりに、触れるとおりに、聞こえるとおりに、匂うとおりに、味のするとおりに描ききろうとする試みです」。
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現役の画家の言葉、思いがこれだけまとまった形で読めるのは貴重だ。それぞれの画家によって様々な言葉や視点が語られているが、根底に自分を退けて対象を敬っていく、祈りの世界があるように感じた。何故だかわからないが涙が何度かこぼれた。絶版は惜しい。
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ホキ美術館にある作品をいくつか、解説付きで紹介したもの。 森本宗介さんが一番好き。 五味文彦さんも好き。 写真と絶対的に違うのは、作者の理想が詰まっているということ。そっくりに描くことではなくて、その時に感じた気持ちや記憶を閉じ込める。そう感じた。
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安田茂美・松井文恵『写実絵画の魅力』世界文化社、2013年:千葉県にある写実画専門のホキ美術館の設立経緯と関係のある画家の作品、その言葉をあつめたものである。現代の写実画は本当に迫真なのだが、テクニックもさることながら、画家の創作論をよんでいると哲学の存在論を読んでいる気になる。野田浩志などの草創期の画家もさることながら、塩谷亮や生島浩などが好きである。絵画とは、二次元にする時点でもはや抽象なのだが、写実絵画とは「物がそこに在るということを見える通りに、感じる通りに、触れる通りに、聞こえる通りに、匂う通りに、味のする通りに描ききろうとする試み」(野田弘志)という言葉があり、写真が単焦点なのに対し、焦点が二つあって移動している人間の眼は見え方がことなるし、アメリカで一時はやった「スーパーリアリズム」という写真の模写ではなく、スペインリアリズムが試みたように、存在の重さや空気まで描こうとするのが、日本の写実絵画なのである。「鬼を画くは易く、馬を画くは難し」(韓非子)というが、こういう困難な道をつきつめていくのが写実絵画なのである。
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