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なんとなく、クリスタル 新装版 の商品レビュー

3.9

34件のお客様レビュー

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2022/05/28
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

ほんタメのあかりんがおすすめしていた注釈小説。 気になって図書館で予約したら 文庫版じゃなくハードカバーが届いた。 注釈が後ろにまとめてあって、最初は読みにくい。 どっちをメインに読むのか、読み方に悩んだが 物語に重きを置いてまとめて注釈を読んでいったら あっというまに読み終えてしまった。 1980年代の日本の文化や、 由利と淳一、2人の価値観やお互いへの想い、 繋がりあっている感じがなんかいいなと思った。 素直な心情が描かれているお話で胸がきゅってなった。 うん、よかった。 なんとなく、クリスタル。ふむ。

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2021/06/06

とにかく「注」が多く、ページ数の半分を占める。 その注がまったく意味をなさない。だけど、それが 時代を表していて、バブル前の社会を思い出させる。 「なんとなくクリスタル」何十年ぶりに読み直しても、 薄っぺらだけど心に残る不思議な作品。

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2021/03/15

発表当時(1980年)の東京を舞台に、女子大学生の極度に洗練された生活を描いた小説。 小説内で氾濫する当時の風俗を伝える語彙に対する膨大な注釈が特徴で、全文で442項目を数える。単に事実を伝えるための注釈とは限らず主観的な感想も多く含み、本来は注釈が必要ないような言葉も取り上げて...

発表当時(1980年)の東京を舞台に、女子大学生の極度に洗練された生活を描いた小説。 小説内で氾濫する当時の風俗を伝える語彙に対する膨大な注釈が特徴で、全文で442項目を数える。単に事実を伝えるための注釈とは限らず主観的な感想も多く含み、本来は注釈が必要ないような言葉も取り上げている。本書の構成としても本文は右ページのみに掲載され、左ページは注釈と挿絵で統一されている。 モデルでもある主人公・由利は今で言うならバリバリの「リア充」。若者らしい葛藤や悩みは皆無で、由利がバブル期の東京での消費生活をひたすら謳歌する様を描くことに終始する。スノッブな世界観、意味や教訓などを見下しているとも感じさせる内容から、発表時に賛否両論あったことも理解できる。前述の膨大な注釈や筋らしい筋もないことなどを特徴としているだけに、二度同じ手を使いにくいであろう作品ではある。部分的には同時代に登場していた村上龍(1976年)、村上春樹(1979年)とも重なった。解説の高橋源一郎氏は、本作は文学批判であり、荒涼たる未来を幻視したと高く評価している。

Posted byブクログ

2021/02/03

「クリスタルか…!ねぇ、今思ったんだけどさ、僕らって、青春とはなにか!恋愛とはなにか!なんて、哲学少年みたいに考えたことってないじゃない?本もあんまり読んでないし、バカみたいになって一つのことに熱中することもないと思わない?でも、頭の中は空っぽでもないし、曇ってもいないよね。醒め...

「クリスタルか…!ねぇ、今思ったんだけどさ、僕らって、青春とはなにか!恋愛とはなにか!なんて、哲学少年みたいに考えたことってないじゃない?本もあんまり読んでないし、バカみたいになって一つのことに熱中することもないと思わない?でも、頭の中は空っぽでもないし、曇ってもいないよね。醒め切っているわけでもないし、湿った感じじゃもちろんないし。それに、人の意見をそのまま鵜呑みにするほど、単純でもないしさ。」 注、いくら本を読んでいたって、自分自身の考え方を確立できない頭の曇った人間が一杯いますもの。本なんて、無理に読むことないですよ。

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2021/02/01

80年代ってどんな時代? の雰囲気を知るにはこの作品がいいと思う。 80年代の狂想を、80年代っぽく振り返ってほんのり闇に包まれている感じが、それ。 註がすごい。80年バブル史辞典レベル!

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2020/12/16

『なんとなく、クリスタル』は大衆消費社会の勃興と、バブル経済前の日本、そして日本に忍び寄る衰退の影を描いたポストモダン小説だ。作者は長野県知事を務めたこともある田中康夫だ。 この『なんとなく、クリスタル』の特徴は、時代を象徴する固有名詞の多用と、それに対する膨大な量の注釈だ。文学...

『なんとなく、クリスタル』は大衆消費社会の勃興と、バブル経済前の日本、そして日本に忍び寄る衰退の影を描いたポストモダン小説だ。作者は長野県知事を務めたこともある田中康夫だ。 この『なんとなく、クリスタル』の特徴は、時代を象徴する固有名詞の多用と、それに対する膨大な量の注釈だ。文学作品では普遍性を持たせるために固有名詞を多用することを避けたりするのだが、『なんとなく、クリスタル』は女子大生兼ファッションモデルの由利の生活を中心に若者にしか理解できない様なブランドや固有名詞が散りばめられている。そして、それぞれの固有名詞に田中の視点を基にした442個の注釈と分析が加えられている。 ブランド名と言った固有名詞を多用していることで、大衆が増えたことにより知識人というものには意味がないという知識人を批判している様にも思える。

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2020/11/23

(2017年2月のブログから2020年11月に転記) まず、この本を手に取ったのは、「膨大な注があることで有名(*1)」だったから。 要するに物珍しさというか、歴史の1ページというか、そういうのを知っておきたかったから。 で、読み始めたところ、注のほとんどは、作中で紹介され...

(2017年2月のブログから2020年11月に転記) まず、この本を手に取ったのは、「膨大な注があることで有名(*1)」だったから。 要するに物珍しさというか、歴史の1ページというか、そういうのを知っておきたかったから。 で、読み始めたところ、注のほとんどは、作中で紹介されているブランド品の説明とか、お店、楽曲、洋楽シンガーの説明(*2)とか固有名詞のための注。だから思いました。 注のための注(*3)なんだな、と。 でも、読み進めていくと、不意に本質的なことにたどり着く。 何のために生きているのだろうか。 しかし、この年代の主人公は現代の私たちとは違って楽観的。 「クリスタルな生き方」 文脈から察するに、自分のフィーリング(*4)、肌感覚で、自分がいいと思ったものを身に着け、パートナーを選び、刹那的な男女の関係を結び、まさに、自分のために生きる、という感覚。 それは、私が目指したい感覚。 乱暴に結び付ければ、夏目漱石の「個人主義」の感覚かも。「自分の酒を人に飲んで貰って、後からその品評を聴いて、それを理が非でもそうだとしてしまう人真似」してしまわないような、そんな生き方。 で、肝心のクリスタルの注はcrystalとただつづってあるだけ。 本文を読めば、「クール」の対義語として「クリスタル」とある。 「クール」というのは、ここでは自分のまわりの人たちが作り上げた「かっこいいものの幻想」ということなんでしょうか。「こうすれば、かっこいい」って決めあげられたことがら。 それの対概念が「クリスタル」な生き方なんでしょう。 と、いろいろ考えると、膨大な量の注もじつは、意味のある、作者が大学生時代に見つけた、みんなに知らせたいけど隠したい、クリスタルの輝きを、包んでおくためのベールなのでは?と深読み(*5)。 クリスタルな生き方、皆さんはどう思いますか? (*1) 「クイズマジックアカデミー」などのクイズゲームで、よく出題されています。 (*2) 世代なのか文化なのか、わたしには、ほとんどわかりません。 (*3) 世の中政治家も「反論のための反論」なんかをしていて、嫌になります。 (*4) feeling (*5) この記事についている注は、特に意味のない、ただ、本文の雰囲気を感じてもらうために似せて作ったものです。

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2019/05/02

当時のリア充たちの記録的な青春小説 ページの左側に占領する脚注が斬新で、どう読めばよいのか最初は戸惑う。右側の本文と交互に読むことで、脚注が語り手の役目をしているのがわかる。当時のなんとなくな空気感が味わえる。

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2017/03/18

人生で一番読み返している本。 ある時は脚注を丁寧に参照しながら。ある時は脚注は無視して物語だけに集中して。 平成5年生まれの私にとってバブル期の大学生の輝きは「なんとなく」なんかではないと思っていた。しかし、この作品を通してどんな時代でもキラキラだけでなくもやもやしたものがどこ...

人生で一番読み返している本。 ある時は脚注を丁寧に参照しながら。ある時は脚注は無視して物語だけに集中して。 平成5年生まれの私にとってバブル期の大学生の輝きは「なんとなく」なんかではないと思っていた。しかし、この作品を通してどんな時代でもキラキラだけでなくもやもやしたものがどこかに絶対に存在しているということを知った。 18まで長野県にいた私は、こんな人が知事をやっていたんだなあ、と本の内容からやっと著者の内面を見た気がした。

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2016/05/14

「軽薄な作家が、軽薄な学生のことを書いた小説。何でこんな小説が『芥川賞』の候補になったのか、訳がわからない」それがこの本を読み終えた第一印象だった。一流大学に通う、セレブな階層に所属する女子大生が、誰もがうらやむような生活を送る様子を描く小説。格差社会の現代で、こんな小説を発表す...

「軽薄な作家が、軽薄な学生のことを書いた小説。何でこんな小説が『芥川賞』の候補になったのか、訳がわからない」それがこの本を読み終えた第一印象だった。一流大学に通う、セレブな階層に所属する女子大生が、誰もがうらやむような生活を送る様子を描く小説。格差社会の現代で、こんな小説を発表する作家がいたら、周囲から総スカンを食らうことは確実である。ところが、作者のあとがきを読んだとたん、その印象は一変した。彼によれば、自分で読みたい青春小説を書きたかったのだという。今まで彼が読んできた「青春小説」は、現代の大学生の実態とはあまりにもかけ離れていた。そのことに違和感を覚えた彼は、それだったら自分で、今の大学生が何を考え、どう思っているのかをみんなに知ってもらいたかったのだ。そういう意味では、この作品は’80年代を代表する小説といえるかも知れない。

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