三十光年の星たち(下) の商品レビュー
無理だと思える難題が、次々と仁志に任せられるようになる。しかし、仁志は段々と師匠・佐伯からの薫陶や一つ一つの言葉の意味を自分で考えて、成長していく。師匠に応えたい、師匠の夢を実現したい、その想いで不可能を可能にしていく姿は、師弟関係の美しさを見事に表していたように思えた。 現代で...
無理だと思える難題が、次々と仁志に任せられるようになる。しかし、仁志は段々と師匠・佐伯からの薫陶や一つ一つの言葉の意味を自分で考えて、成長していく。師匠に応えたい、師匠の夢を実現したい、その想いで不可能を可能にしていく姿は、師弟関係の美しさを見事に表していたように思えた。 現代では、さとり世代と言われてるように、ググれば答えに出会える。何なら人生の悩みのアドバイスも、無責任にネットに書いてある時代となった。その一方で、仁志や虎雄のように、師匠からの一見意味のわからない言葉について、真剣に考えて、ああでもない、こうでもないと愚直に努力する人はどれくらいいるのだろうか。自分はそのような人になりたいと思わされた大切な本となった。
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下巻読了。 仁志は、月子さんの洋食店と佐伯老人の融資業を引き継ぐ事になり、仁志の友達のトラちゃんや、紗由里もそれぞれ“修行”の道を歩んでいくことを決めます。 ここで出てくる“師弟関係”だったり、“長年の修行”というものは、あるいは時代に逆行しているのかもしれません。 ただ、しっ...
下巻読了。 仁志は、月子さんの洋食店と佐伯老人の融資業を引き継ぐ事になり、仁志の友達のトラちゃんや、紗由里もそれぞれ“修行”の道を歩んでいくことを決めます。 ここで出てくる“師弟関係”だったり、“長年の修行”というものは、あるいは時代に逆行しているのかもしれません。 ただ、しっかり腰を据えて若い人を育てようという環境は若者のモチベーションやポテンシャルを引き出す事に繋がるのかな、とも思います。 あとがきで宮本さんも、「・・いまのけちくさい世の中は若者という苗木に対してあまりにも冷淡で、わずかな添え木すら惜しんでいるかにみえる・・」と書いてられましたが、確かにそれはあるなぁ、と思いました。 成長する若者たちの姿と重なるかのように、象徴的に描かれていた、植樹ではるか先の将来を見据えた“森づくり”を目指している料亭工房のモデルとなった「和久傳の森」には是非訪れてみたいです。 そして、仁志が継ぐ事になった「ツッキッコ」のスパゲッティが本当に美味しそうで、食べてみたくなりました。こちらにはモデルとなったお店はないのですかね。
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元々、宮本輝さんの『星々の悲しみ』と『螢川・泥の河』が好きで次また何か作品読みたいなと思っていたけど、なんだか冴えないはずの主人公なのに、なんだかんだ今までの経験して来たことが凄く生きて来たり、交友関係のお陰でパパッと手際良く指示をこなしたり、なんだかスペック高くないか?後付け感...
元々、宮本輝さんの『星々の悲しみ』と『螢川・泥の河』が好きで次また何か作品読みたいなと思っていたけど、なんだか冴えないはずの主人公なのに、なんだかんだ今までの経験して来たことが凄く生きて来たり、交友関係のお陰でパパッと手際良く指示をこなしたり、なんだかスペック高くないか?後付け感ないか?と思う所は多々ありましたが、所々にじーんと来るやり取りがあって泣けます。結果やっぱり宮本さん好きだなーと思いました。
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プロになるには最低30年働いて働き抜くことが必要。 人はまわりの人間に支えられて一人前になる。 宇宙の永遠も人の人生も同じ努力を続ける舞台の中。 このほんから私なりに学んだ教訓。 有村富恵への回収の結末がなかったが、久々の宮本輝を楽しんだ。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
そんなうまいこと行くかーい! と、おばちゃんは思ってしまうが、若い人が読むにはいいかも。 でも確かに、人生60歳になってもまだまだ先は長い。 今からでも一生懸命働きたいなぁと思う。
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『青が散る』に心を揺さぶられて以来、宮本作品を続けて読んできたけれど、やっと『青が散る』と同じ空気感をもった作品に出逢えた気がする。 主人公は、弱いところもあるが、純粋で真っ直ぐな心をもった一人の青年。佐伯老人との出逢いを機に、人生の目的を見いだしていく。 『青が散る』の燎平...
『青が散る』に心を揺さぶられて以来、宮本作品を続けて読んできたけれど、やっと『青が散る』と同じ空気感をもった作品に出逢えた気がする。 主人公は、弱いところもあるが、純粋で真っ直ぐな心をもった一人の青年。佐伯老人との出逢いを機に、人生の目的を見いだしていく。 『青が散る』の燎平が辰巳教授に導かれたように、主人公の仁志は佐伯老人に導かれる。 純粋な、それでいてまだ自分の道を見定めていない青年を、厳しく温かく見守る、人生の先達だ。 見えないものを見ようと努力する。自分を磨くには、働いて働いて働き抜くか、叱られて叱られて叱られぬくこと。人生の本当の勝負は三十年後から。 辰巳教授の言葉が多く印象に残ったように、佐伯老人が仁志に投げかけた言葉が心に残っている。 事件や病気など、「できごと」を核にした作品は、ドラマチックだし心を揺さぶりやすい。けれど、私が好きなのはそういう作品ではない。 『青が散る』やこの作品のように、できごとではなく日常の中にある「生きることの意味」を正面から描いた作品は、どれだけあるだろう。 この作品に出逢えたことで、ようやく自分が求めているものが具体的にわかり始めた気がする。 レビュー全文 http://preciousdays20xx.blog19.fc2.com/blog-entry-497.html
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男は老人から起業したい人向けの融資事業と融資事業から店をオープンした女性から伝説のソースを引き継ぐことになる。 男は老人たちを通して、自分は何をすべきかと人生の覚悟を磨いていく。 人間としてどうありたいか。ちょっと参考になる本。
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面白かった。 読み終わった後、すがすがしい風を感じるような小説だった。 うまくいかないことを、自分には向かないといって逃げ出すことは簡単。ただ、そのあとには、たぶん何も残らない。 躓いても、ゆっくりでも 一生懸命に、ひたすらに、楽をせずに働き続けた先に 本当に人生が始まる...
面白かった。 読み終わった後、すがすがしい風を感じるような小説だった。 うまくいかないことを、自分には向かないといって逃げ出すことは簡単。ただ、そのあとには、たぶん何も残らない。 躓いても、ゆっくりでも 一生懸命に、ひたすらに、楽をせずに働き続けた先に 本当に人生が始まるのかも。 60歳までをどう生きるかで、その後の人生も決まってくるのかもしれない。 もっと楽な道を選ぼうとしている30代の弱い自分に、目の前だけを見て仕事を選ぶなと、言われている気がした。 失敗してもいいんだ。 失敗し続けて、最後にどうにかカタチにできるまで続ければいいんだ。 まだやっと階段の前に立ったばかりなのかもしれない。
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上巻に続き下巻も良かった。仁志の生き方って羨ましいと思う。実際の親には勘当されたが、平蔵と出会ってどんどん自分の良い面を引き出せていると思う。生きる事につまずいた時に読み返す素晴らしい物語だ。宮本輝、素晴らしい。
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