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潮鳴り の商品レビュー

4.3

28件のお客様レビュー

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2015/08/03
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剣の達人であることが前提~伊吹櫂蔵は襤褸蔵と揶揄される豊後・羽根藩の舟手奉行の跡取りだったが,日田の掛屋で商人に媚び諂う武士の姿に触れ,剣の腕前を見せろと言われて,畳を叩いて持ち上げ,居合いで真二つにした不始末で,異母弟に跡目を譲って,浜の漁師小屋で暮らしている。新田奉行並になった弟の新五郎が突然訪れ,不始末で家財を売った一部を置いて,翌日切腹した。櫂蔵に遺した文では,日田掛屋の小倉屋に,藩で行われている明礬作りを振興するため,5千両を借りたが,江戸での費用として送られてしまい,詫びるつもりで297両を充てたというのだ。3両を呑んで博打ですってしまった櫂蔵は激しく後悔し,入水して果てようかと思い詰めたが,浜で飲み屋を開いている女・お芳に止められた。弟の直接の上司・勘定奉行の井形清左衛門が殿・三浦兼重の温情で,致仕していた櫂蔵に弟と同じ職で再び出仕する気はないかと聞いてきたのだ。生さぬ仲の継母・染子は,戻るなら奉公人は召し放ちにするという。櫂蔵は俳諧師で,三井越後屋の大番頭をしていた咲庵と,惹かれていることに気が付いた・お芳をゆくゆくは妻にしたいと,屋敷に連れてきて,更にかつての父の手先の宗平と娘の千代も伴ったが,継母の染子は極めて冷淡な態度だ。出仕すると,新田掛の配下の四五十代の侍のやる気はなく,若手の笹野信也は山廻りをして隠し田を見つけては新田として届けさせることに腐心しており,小見陣内は井形の間諜だ。咲庵が帳簿を調べると,何もしていない普請に公金が支出され,茗荷金として暫く後に同額が還ってくるが,それは博多の豪商・播磨屋が絡んでいることが判った。櫂蔵は播磨屋の出店に番頭を訪ねるが,唐明礬の輸入を止めて明礬の値崩れを起こさせない工夫を播磨屋は承知していることは判明し,追い返されてしまう。日田に行き,小倉屋に挨拶をしても同様だが,利があれば,商人を味方にすることができると咲庵は言う。染子に追い出されそうな女中勤めをしている芳は,風邪引きの自分に粥を作って取り入ろうとしているのかと詰られるが,お芳は汚れているかも知れないが嘘だけは吐かないのだと反論し,次第に染子に認められていく。サトという娘が親の為した借金の肩として女衒に売られそうになるのを見掛けた信也は,サトは死んだ新五郎の思い人で十両あれば救い出せると訴え,咲庵の伝手で十両を差し出した櫂蔵の気配りで救われたかに思われたが,他に三両の借金があって,博多に売られていった。配下の三名は,主君の吉原での乱費を止めようとして,国許に帰され,井形の監視を受けていたのだが,里の娘を親身になって心配する櫂蔵が,改革に本気であることを知らされ,再び改革の先手になる覚悟が伝わってきた。博多で商家の主と対面してあしらわれた櫂蔵は,咲庵の息子から,唐明礬を一手に扱う商家が播磨屋だと知らされ,江戸へ送られるはずの5千両は城下の播磨屋の蔵に眠っていると推量した。これを取り戻し,西国郡代を通じ,賄賂を送って,明礬輸入止めを実施させたらと小倉屋からの知恵を手に入れる一方,お芳を揺さぶって圧力を掛けようと言う井形の思惑は,お芳が井形の脇差しを奪って自分の胸を突いて自害した。復讐は弟の遺志を全うすることだと覚悟した櫂蔵は,大名貸しの播磨屋の主人が資金不足で5千両を博多に動かす企みを察知し,郡代の手先を連れて大八車を奪い,小倉屋に返還した。染子から井形の悪事を告げられた兼重の母・妙見院は,井形を閉門蟄居とし,息子が養子を迎えて隠居することを条件に,家中のすべての女が主君の敵になることを止め,櫂蔵は幕閣との交渉を行う勘定方として江戸に行こうとしていた~豊後羽根藩が舞台だけど,豊後って佐伯君も好きでよく舞台にしてますね。何故でしょう。さて…櫂蔵は剣の達人で,畳を叩いて立ち上がらせ,居合いで真っ二つにしただけでなく,大八車を襲って立ちはだかる小見の髷を切り落とすシーンがあるので含みとしては重要,でも人は斬らない。「落ちた花は二度と咲かぬ…か」,落ちた花をもう一度咲かせてみようじゃないかという決意と共に酒を断つ。襤褸蔵と呼ばれ侮辱されても死なない覚悟を持てるのは櫂蔵だけでなく,芳も咲庵もさともそうだった

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2015/05/09

「落ちた花は二度と咲かぬ」と言われる中で、落ちた花を咲かせる。想いを寄せる人の中、同じ苦悶を持つ人の中など、色々なところで花を咲かせる。伊吹櫂蔵とお芳とが最後に添い遂げることができなかったことが残念。

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2015/05/04

「蜩の記」に続く、羽根藩シリーズ第二弾作品でしたが、無念の切腹を強いられた弟に代わって、兄が、いろいろな人間のサポートを受けながら、本気で弟の無念を晴らすという展開が良かったです。 武士は一番辛い選択肢は死ぬことだと思っているが、本当に辛いのは苦難に立ち向かい生きていくことだとい...

「蜩の記」に続く、羽根藩シリーズ第二弾作品でしたが、無念の切腹を強いられた弟に代わって、兄が、いろいろな人間のサポートを受けながら、本気で弟の無念を晴らすという展開が良かったです。 武士は一番辛い選択肢は死ぬことだと思っているが、本当に辛いのは苦難に立ち向かい生きていくことだということと、一度散った花は二度と咲かないが、自分自身では再び咲けなくても、影響を与えた他人の心の中で咲くこともできるというのは深い表現でしたね!

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2015/01/16

文武両道で優秀だったが、社会にに出て周囲とうまくなじめず、また大きな失敗をしてしまった主人公。 弟に家督を譲り自らは襤褸蔵と言われるほど荒んだ生活を送るが、弟は仕事に失敗して自殺してしまう。 そのため、再び弟の仕事の後を引き受けることに。 一度落ちぶれてしまうと、そこから這い上...

文武両道で優秀だったが、社会にに出て周囲とうまくなじめず、また大きな失敗をしてしまった主人公。 弟に家督を譲り自らは襤褸蔵と言われるほど荒んだ生活を送るが、弟は仕事に失敗して自殺してしまう。 そのため、再び弟の仕事の後を引き受けることに。 一度落ちぶれてしまうと、そこから這い上がるのはとても難しいもの。 でもそれを達成していく様子に、将来への希望を持つことができます。 読んでいて楽しくなります。 自分も頑張らねば。そんな気分になります。

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2014/12/12

落ちた花はもう一度咲くのか?落ちた花だからこそ、次に咲く時には精一杯咲くのであろう。心の花瓶に花一輪。

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2014/11/12

『蜩の記』ですっかり有名になった葉室さんです。 歴史が好きで時代物を広く読んでいる青年や、コンピュータに詳しい同僚から「『蜩の記』、まだ読んでいないんですよ~。そろそろ読もうとは思っているんですけどね・・・。」と話題に上ること度々。「それを読んだら、『柚子の花咲く』も是非!」とお...

『蜩の記』ですっかり有名になった葉室さんです。 歴史が好きで時代物を広く読んでいる青年や、コンピュータに詳しい同僚から「『蜩の記』、まだ読んでいないんですよ~。そろそろ読もうとは思っているんですけどね・・・。」と話題に上ること度々。「それを読んだら、『柚子の花咲く』も是非!」とおすすめしているけれど、今一つ話題に上って来ないのが、少々不満の私。 自分を律し、質素で清冽であるをよしとする厳しい武士の生き様もよいけれど、市井の人との関わりの中で自分の弱さを認め、人の情けにそっと頭を垂れる、その上で立ち向かわねばならないものに背を向けない姿を描く葉室さんの小説の後味は、すがすがしさでいっぱいになる。 かつては藩校で俊英と謳われ、周りからも一目置かれる存在であった伊吹櫂蔵は、融通の利かなさから商人との酒の席でしくじり、今はお役御免の身となった。朝から酒に溺れ、誰からも顧みられず、襤褸蔵とまで言われる始末。 ところが、家督を譲った弟が切腹し、残された遺書から藩の不正を知って、再び弟と同じ役に就き、仕事に励む一方、隠された事実を探っていく。 同期の中で先頭を走り、自負もあった櫂蔵が一つの失敗から、あっという間に転落し、底辺を這いずるように生きている。また、大店で大番頭を務めた男や、身を売り周りから蔑まれながらも生きる女。 みな、信じるものや大切なものを失い、暮らしも荒んだ中から、新たに信じ守るものを見つけて再生への一歩を踏み出そうとする。 落ちた花は二度と咲かぬ、という苦い思いを抱きながら、それでも、咲かせる道を探してもがき続ける。 「落ちた花」になるほど、大きく重要な仕事を与えられてしくじるような経験は今後も私には起こりそうにないけど、小さな失敗をあれこれ重ね、時にはふっと、この先何年仕事やらなきゃならないんだろと溜息混じりに吐き出したり、逃げ出したくなったり、それなりにツライことはある。 時代小説のような過酷な状況と比較するのも申し訳ないが、苦しい日々を送るときは、精一杯目の前のことをするしかないと、お屋敷で女中として働きながら武家のあれこれを身につける努力をするお芳さんを見ていて思う。 派手に大輪の華を咲かせることに目は奪われがちだけれど、誠実な働きぶりや思いやりがどこかの誰かに少々役立つような、見過ごしてしまいそうな小さな花をそっと咲かせる。そういうのに、最近とみに弱いなあ。 絵本の『花咲き山』に抱いた思いが子どもの頃とはずいぶん違ったものになっているように、小さく儚いものに対する思いが、以前よりも増しているように思う。 まあ、年を取ったということなんでしょうね・・・。

Posted byブクログ

2014/11/04

落ちた花は朽ちるのを待つだけか、再び咲くことは叶わないのか。 接待をしくじりお役御免とされ、無頼に落ちた男が、藩の為犠牲となった弟の無念を晴らす為、汚辱を背負いながら生き抜く決意を胸に、藩の陰謀に立ち向かっていく! 落ちた花は、花を愛しく想うものの胸の中にこそ咲くのだ。という...

落ちた花は朽ちるのを待つだけか、再び咲くことは叶わないのか。 接待をしくじりお役御免とされ、無頼に落ちた男が、藩の為犠牲となった弟の無念を晴らす為、汚辱を背負いながら生き抜く決意を胸に、藩の陰謀に立ち向かっていく! 落ちた花は、花を愛しく想うものの胸の中にこそ咲くのだ。というくだりに胸が熱くなりました。 ブラックフィクサー播磨屋がまたもや悪巧み。 蜩の記ではギャフンと言わせられなかったけど潮鳴りではギャフンギャフン言わせてます!爽快! 蔑まれようと疎まれようと恥辱にまみれても生きる。生き抜く。蜩とアプローチが真逆ですが、信念を通した人間の生き様が胸熱。

Posted byブクログ

2014/11/04

本屋さんで一目ぼれしました。 とても読みやすく、ぐいぐいと引き込まれて、あっという間に読了です。 お役御免になるほどの悪癖はどこへ?って感じですが、周りの人々にささえられながら、生きていく主人公に「がんばれ!」って思います。 お芳や染子の一言がグッときます。

Posted byブクログ

2014/10/23

襤褸蔵と呼ばれた落ちぶれた男の再生の物語。 久しぶりに歴史小説を読んだ。先が気になって一気に読み終えた。 義理の母の染子が素敵だった。

Posted byブクログ

2014/10/21
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※このレビューにはネタバレを含みます

落ちた花は二度と咲けやしません わたしたちにとって一番辛いのは、昔のことを忘れられずに、ずっと引きずって生きて行くことだ 子供の足が当たったぐらいで、親は痛くない 亡八:仁、義、礼、智、忠、信、孝、悌の八徳を失ったものをさす言葉 二度目に咲く花は、きっと美しかろうと存じます。最初の花はその美しさも知らず漫然と咲きますが、二度目の花は苦しみや悲しみを乗り越え、かくありたいと願って咲く 

Posted byブクログ