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日本国債のパラドックスと財政出動の経済学 の商品レビュー

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2018/06/18

「セイ法則」と「ワルラス法則」という二つの概念を軸として、通常の不況とは違う「重不況」の分析、その解決法を提示しているのが本書である。この本は、二つの部で構成されており、第一部では、「大恐慌と昭和恐慌は主に金融緩和策によって、克服された」とする従来の通説への反論、バブル期以降の現...

「セイ法則」と「ワルラス法則」という二つの概念を軸として、通常の不況とは違う「重不況」の分析、その解決法を提示しているのが本書である。この本は、二つの部で構成されており、第一部では、「大恐慌と昭和恐慌は主に金融緩和策によって、克服された」とする従来の通説への反論、バブル期以降の現代日本経済の分析がされており、第二部では、筆者の向井氏が提唱する「セイ法則」、「ワルラス法則」の提示、それらを用いた重不況での資金循環の解明、重不況に陥っている現代日本経済学への処方箋が述べられている。 第一部では、クリスティーナー・ロ―マ―らによる研究や日本での岩田規久男編「昭和恐慌の研究」(2004)での「大恐慌、昭和恐慌からの脱出において、金融緩和政策が一番効いた」とする90年代以降の「通説」に対して、多くのデータを用いて反駁がされており、丁寧で説得力があった。世界金融危機以降、大恐慌時の財政政策の役割は大きく再評価しており、向井氏の見解と一致している。 第二部では、向井氏が提唱する「セイ法則」、「ワルラス法則」の概要説明とこれらの法則を用いた重不況下での資金循環の解明がされており、これこそが本書の主題である。向井氏独自の拡張型「セイ法則」、「ワルラス法則」は、従来の経済学が見逃していた概念であり、個人的にとても興味深く、また「ワルラス法則」を用いて、重不況下ではマンデル=フレミングの法則が成立しないと論証していたのは、すごくおもしろかった。 経済学プロパー以外によって書かれた本として、水準は高く、「経済学素人」が書いた本としては、間違いなく上位に位置するものだと思われる。論旨は明快なので「読みやすい」が、「読みづらい」。丁寧に論理を追っていかないと、サラ読みで終わって理解できずに終わるのが本書の欠点か。 評点: 8.5点 / 10点

Posted byブクログ