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歌うクジラ(下) の商品レビュー

3.7

35件のお客様レビュー

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2024/11/06

後半のある地点に到達して以降の描写は圧巻だったと思うし、最後の数ページにはかなり感情を揺さぶられた。 社会の階層化が完成した社会に生じた停滞感や倦怠感について、生命科学や動物行動学などの膨大な情報を援用しながら一人称で途切れることなく語っていくスタイルは、近未来という舞台設定にと...

後半のある地点に到達して以降の描写は圧巻だったと思うし、最後の数ページにはかなり感情を揺さぶられた。 社会の階層化が完成した社会に生じた停滞感や倦怠感について、生命科学や動物行動学などの膨大な情報を援用しながら一人称で途切れることなく語っていくスタイルは、近未来という舞台設定にとてもマッチしていたと思う。 村上龍の作品は映像的だと言われることも多く、自分もそのような印象を持っていたけれど、描写から像を結びづらい描写も多く、言葉の持つ強いイメージを巧みに使っていることも多いとあらためて感じる。 また意外にも伏線をきちんと貼ってあったり、その後の起こることの予備知識をそれ以前の出来事にうまく織り交ぜているなど、ストーリーテリングのツボをうまく押さえているのはさすがだと思った。

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2024/08/30

(2011/4/9) なにやら不思議な冒険だったが、テーマは発情期だったのですね。ほとんど人間だけ年がら年中発情期。そこにおける脳の働きとは。SFチック、近未来小説の形をとって、村上龍さんはこのあたりを伝えたかったのでしょうか。 桜の下で読んでました。

Posted byブクログ

2023/04/20
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

「他の人間になった自分をどうやって憎めばいいというのだろうか」。 死生観や倫理観、思いの外哲学的な小説でした。暴力や禁忌で混沌とした世界観はそのままに、結末には寂寥感が漂っている。 「狂ってることが正常」みたいな世界で、上層階級のサツキもヨシマツもそれに合わせてるように思えたけれど、下巻を読むと少なくともサツキは狂いから目を逸していないです。サツキが抱える喪失感や諦念の3行と、アキラの最後の祈りのつぶやきはとても好きでした。 移動。言われてみれば、アキラがひたすら移動するお話だったのだな。「逃げられない」、なんて美しい言葉だろうか、と登場人物は言ってたけど……どこかの段階で投げ出し諦め、生死を含めて自分の全てをなにかに委ねる、それはある意味ですごく幸福で美しい状態かもしれないなぁと思いました。 でも、アキラの最後の祈りのほうが美しいと思っていたいです。 逃げることはできる、ただし、生き延びられるかどうかは、わからない。

Posted byブクログ

2022/11/24

サツキが語る喪失感についての考察と実感で、 ひとつの頂点を見た気がしていたのだが、 最後の最後にアキラが辿り着く答えに、 あぁ、ここまで読んできて本当に良かったと、 心の底から思った。 村上龍はより一層、 知的ではなく体験として、 精神分析を理解したのだと思える作品で、 手法は...

サツキが語る喪失感についての考察と実感で、 ひとつの頂点を見た気がしていたのだが、 最後の最後にアキラが辿り着く答えに、 あぁ、ここまで読んできて本当に良かったと、 心の底から思った。 村上龍はより一層、 知的ではなく体験として、 精神分析を理解したのだと思える作品で、 手法はSFであるけれど、 限りなく普遍的である生きるということについて、 新たな方法で描き出してくれた。 精神分析への理解というよりもおそらく、 人間への理解か。 読んでよかった。 よかったというのは、 個人的に救われたという意味である。

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2022/11/06

 『〝クジラ〟強調月間始めました!』8②  第8回②は、引き続き村上龍さんの『歌うクジラ(下)』です。  過酷で壮大なアキラの旅はなんだったのだろうか、と考えてしまいます。  旅や冒険ではなく、地獄巡りという過激な言葉が似つかわしい程、分断と科学が進んだ異世界の移動でした。  ...

 『〝クジラ〟強調月間始めました!』8②  第8回②は、引き続き村上龍さんの『歌うクジラ(下)』です。  過酷で壮大なアキラの旅はなんだったのだろうか、と考えてしまいます。  旅や冒険ではなく、地獄巡りという過激な言葉が似つかわしい程、分断と科学が進んだ異世界の移動でした。  私たちの暮らす今の社会でも、分断や紛争があり、情報化が進むに連れ誹謗中傷も増えました。「多様化」を掲げて単に共感するだけでは、対話を通じて他者との差異を微細に理解することはできない気がします。コミュニケーションが図られて初めて、妥協したり合意形成が可能なのだと思います。  脱・誹謗中傷のためにも、情報の出所や信憑性も疑ってかかる必要性が求められる時代だな、と改めて痛感しました。
 それにしても、村上龍さんの想像力には恐れ入ります。本書は、未来への警告の要素満載ですが、〝希望〟を示す物語でもあると感じました。好き嫌いはさておき、価値ある一冊には違いありません。

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2023/01/06

哲学的というか精神分析的というか。他人の頭の中に迷い込んだような感覚。怖くてまだまともに読めないけどいつか隅々まできちんと読みたい

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2022/09/14
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

主人公がメモリアックで他者と交信するという設定から「海辺のカフカ」を、最後の方では「銀河鉄道999」「遊星からの物体X」なんかを思い出しつつ読了。たしか帯にあったコピー通りに筆力、特に文章のドライブを感じた。様々なディテールを考察しながら読み返すのもおもしろいかも。

Posted byブクログ

2022/05/10
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

大切なことを理解した。ぬくもりも音も匂いもない宇宙の闇の中で、気づいた。生きる上で意味を持つのは、他人との出会いだけだ。そして、移動しなければ出会いはない。移動が、すべてを生み出すのだ。しかし、せっかく気づいたのに、それらを活かすことなくぼくはこれから死を迎えるだろうか。だが、人間の一生とはこんなものかも知れない。誰もがいろいろなことに気づき、だがそれを人生に生かすことができないという怒りを覚えながら消えていく。

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2021/08/17

中盤ちょっとダレたかなと思う部分もあったが、ガラっと場面が変わってからは面白い。別の作品に変わったのか?と思うぐらい雰囲気が違う。最終的に「あの描写にはそういう意味があったのか」とうまいこと回収された感覚。トータルで見れば面白かったと思う。移動の物語だった。

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2021/06/29

210624*読了 クライマックスに向けて進む下巻も、やはりいい気分にはなれなかった…。 気分がよくなることを望んで読んでいたわけではないのだけれど。 宇宙空間に向かい、ヨシマツとついに対峙するアキラ。 ヨシマツの風貌がまず気持ち悪くて、考えるとムカムカしました。 自分がも...

210624*読了 クライマックスに向けて進む下巻も、やはりいい気分にはなれなかった…。 気分がよくなることを望んで読んでいたわけではないのだけれど。 宇宙空間に向かい、ヨシマツとついに対峙するアキラ。 ヨシマツの風貌がまず気持ち悪くて、考えるとムカムカしました。 自分がもしアキラだったら、とっくに精神崩壊していると思う。 アキラくん、本当にお疲れ様でした…。 こんな時代には生きたくはない…。絶対に。 どうか、こんな未来が到来しないことを願うばかり。棒食ではなく、普通のごはんを食べたいです。 村上龍さんは退廃的な小説を書かれるのか? 結局、コインロッカーベイビーズにしろ、歌うクジラ(これほどタイトルから想起されるイメージと実態にギャップのある小説があるだろうか)にしろ、恐怖・絶望・破滅な空気に押しつぶされそうになったので、他の小説も同じような感じなのか?はたまた…?という興味はあります。

Posted byブクログ