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名もなき人たちのテーブル の商品レビュー

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35件のお客様レビュー

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2013/11/29

 スリランカのコロンボからイギリスへとむかう客船の中でのできごとや人間関係を乗客の少年の目を通して描いた、マイケル・オンダーチェの長編小説。『イギリス人の患者』と同じように美しい文章だが、こちらの方がやや表現が平易で読みやすいと感じた。  船に乗り合わせたマイナと二人の友だちは...

 スリランカのコロンボからイギリスへとむかう客船の中でのできごとや人間関係を乗客の少年の目を通して描いた、マイケル・オンダーチェの長編小説。『イギリス人の患者』と同じように美しい文章だが、こちらの方がやや表現が平易で読みやすいと感じた。  船に乗り合わせたマイナと二人の友だちは、毎日禁じられたことをひとつずつやると決めて、航海のあいだ船のあちこちで冒険する。乗客は貴族から医者、ピアニスト、教師、パフォーマー、果ては囚人まで。船の中には一等船室からプールやデッキ、舞踏室、食堂、機関室、船倉には植物園。海の中にぽつんと浮かぶ客船の中は、閉じられ限られた空間なのにワンダーランドで、まるで実社会の縮図のようだ。  たったひと月足らずの航海だが、この時間を共にした人には濃密で確かな記憶が共有される。作中では大人になって離れて過ごす少年マイナたちのその後もところどころ挿入されている。楽しく甘い記憶だけではなく、戻れない過去だからこそのノスタルジーや苦さのようなものもふんだんに感じ取ることができるのが、この小説の味わいのひとつだと思う。 淡いロマンスや泥棒の片棒担ぎ、同年代の子供との友情や、様々な大人との関わり合いを少年の立場で一緒にドキドキしながら読めた。

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2013/10/20

マイケルオンダーチェ「名もなき人たちのテーブル」 http://www.sakuhinsha.com/oversea/24494.html … 読んだ。おおお、すごくよかった。。進行も文章も淡々としているのに読むにつれ自分の感情が揺さぶられてくる。余韻が半端ない。読み終わりたくな...

マイケルオンダーチェ「名もなき人たちのテーブル」 http://www.sakuhinsha.com/oversea/24494.html … 読んだ。おおお、すごくよかった。。進行も文章も淡々としているのに読むにつれ自分の感情が揺さぶられてくる。余韻が半端ない。読み終わりたくなかった。静かで美しい佳品(つづく 子供目線での記憶の中の人物像や出来事を大人になり当時の関係者とともに振り返り、新しい事実を知ることで、自分の記憶と感情が微妙に補正されていく様がせつない。アメリカが「スタントバイミー」で単純にマッチョに仕立てるものをこの静謐さと瑞々しさと苦さの配合はイギリスならでは(つづく 船旅、子供/青年時代の色鮮やかな記憶、過去の人物との再会、というモジュールと、決して順調ではなかった主人公の半生(または充たされない現在)という設定は「ブライツヘッドふたたび」を思わせる。こちらも良品(こっちの根底は宗教と信仰)(おわり

Posted byブクログ

2013/10/20

マイケルオンダーチェ「名もなき人たちのテーブル」 http://www.sakuhinsha.com/oversea/24494.html … 読んだ。おおお、すごくよかった。。進行も文章も淡々としているのに読むにつれ自分の感情が揺さぶられてくる。余韻が半端ない。読み終わりたくな...

マイケルオンダーチェ「名もなき人たちのテーブル」 http://www.sakuhinsha.com/oversea/24494.html … 読んだ。おおお、すごくよかった。。進行も文章も淡々としているのに読むにつれ自分の感情が揺さぶられてくる。余韻が半端ない。読み終わりたくなかった。静かで美しい佳品(つづく 子供目線での記憶の中の人物像や出来事を大人になり当時の関係者とともに振り返り、新しい事実を知ることで、自分の記憶と感情が微妙に補正されていく様がせつない。アメリカが「スタントバイミー」で単純にマッチョに仕立てるものをこの静謐さと瑞々しさと苦さの配合はイギリスならでは(つづく 船旅、子供/青年時代の色鮮やかな記憶、過去の人物との再会、というモジュールと、決して順調ではなかった主人公の半生(または充たされない現在)という設定は「ブライツヘッドふたたび」を思わせる。こちらも良品(こっちの根底は宗教と信仰)(おわり

Posted byブクログ

2013/10/16

人は、いつ何をきっかけにして大人になるのだろうか。マイケルは11歳。セイロン(今のスリランカ)のコロンボから二つの大洋を越えてイギリスに向かう汽船の客となる。幼い頃に分かれた母親がイギリスの港で待っているはずだ。たった一人で三週間の船旅を過ごした後はイギリスの学校に入学することに...

人は、いつ何をきっかけにして大人になるのだろうか。マイケルは11歳。セイロン(今のスリランカ)のコロンボから二つの大洋を越えてイギリスに向かう汽船の客となる。幼い頃に分かれた母親がイギリスの港で待っているはずだ。たった一人で三週間の船旅を過ごした後はイギリスの学校に入学することになっていた。 あてがわれた船室は喫水線より下にあり、窓もなかった。食堂での席は七六番と決まっていて、船長たちのテーブルからもっとも離れた位置にある。同席する九人のうちの一人、ミス・ラスケティに言わせると、その席は俗にいう<キャッツ・テーブル>で、「もっとも優遇されてない立場ってこと」らしい。「名もなき人たちのテーブル」という邦題はその意訳。 七六番テーブルには同じ年頃の少年が二人いた。喘息持ちでおとなしいラマディンと、学校の一年上で悪名高き反逆者カシウスだ。他にも、落ち目のピアノ弾きに植物学者、元・船の解体業者に無口な仕立屋といった面白そうな大人が何人もいた。親と離れ、一人で大人たちの中に交じって過ごす日々は、少年たちにとって刺激的だった。乗客の中には恐水病の治療のため本国に向かう貴族もいれば、鎖につながれた囚人もいた。子どもを使って盗みを働く偽男爵やら、旅芸人の一座といった曰くありげな人々の秘密を盗み見ては想像をたくましくする少年たちは、いつしか、その冒険の渦中に入ってしまうのだった。 自称男爵にスカウトされ、盗みの手伝いをするくらいのことは、そのスリルを味わっていられたのだったが、高僧を馬鹿にしたせいで呪をかけられた貴族の死にはラマディンが絡んでいた。殺人罪で捕らえられた男を父に持つ娘の悲運には皮肉屋のカシウスさえ胸を傷めた。果ては、同船していた従姉のエミリーが殺人事件に巻き込まれてしまうなど、少年の目に映る大人の社会は危険に満ちていた。 今は、テレビ番組にも呼ばれるほどの有名作家となったマイケルが、少年のころの船旅を回想しつつ、二人の旅の仲間のその後、テレビを見たミス・ラスケティからの手紙に触発されたエミリーとの再会を語ることで、当時の自分には計り難かった大人の世界の秘密が解き明かされてゆく。少年時の胸躍る冒険の回想譚と思わせながら、じわじわとミステリ小説仕立ての大団円に向かってゆく、その手際はなかなかのもの。 少年の眼から見ることで、キャッツ・テーブルの仲間はもちろん、それ以外の乗客たちがいかにも魅力に溢れて描き出されている。大人になったマイケルの目を通して描かれる同じ人物の評価の差に、実人生を知った物書きの視線が感じられ、その温度差に幾許か人生の悲哀を感じずにはいられない。少年時代の自分を視点人物とした児童文学風の物語と、回想視点を用いて描き出された大人の男女の出会いから恋愛関係、そしてその崩壊に至る人生模様の対比が鮮やかである。 人は、いつから何をきっかけにして大人になるのだろうか。それは、幼いながらも自分以外の誰かを守ろうと決意した時点からではないだろうか。少年たちは、二十一日間の旅のなかで、その経験を得る。しかし、当然のことに、その時はそれに気づかない。彼らは、それを胸中に抱えながら知らず知らず日を重ねそれなりの歳になるのだ。 三人は船を下りたときから別々の道を歩き始め疎遠になっている。マイケルは、かつてラマディンが自分を見つけ出してくれたように、今度はカシウスが自分を見つけられるように、あの船での出来事と、その後日談を書いてみようと思う。それが、この小説なのだ。 主人公の名前や経歴が作家自身のそれと重なるため、自伝と読まれることを恐れ、末尾にフィクションであることを強調する一文が置かれている。もちろん、そうにちがいなかろう。嵐の晩、甲板にロープで身体を縛りつけ、波に呑まれるシーンをはじめ、キプリングの小説よろしく身体にオイルを塗りたくられ、ドアの上の隙間から他人の部屋に侵入する場面まで、あまりに冒険小説的エピソードに溢れすぎている。しかし、だからこそ、案外、細部は事実に基づいているのではないかと想像したくなる。わざわざ一頁を割いて、こう記してさえおけば、その筋で働いていた登場人物にも、いらぬ迷惑のかからぬ道理である。

Posted byブクログ

2013/10/14

読了後、静かに拍手してしまった。スタンドバイミー的で後半の展開も見事。 毎日少しずつ読み進めていくのが至福の時間だったな〜

Posted byブクログ