名もなき人たちのテーブル の商品レビュー
忙しすぎて感想を書きそびれていたら、なんだか、早くも記憶がボンヤリ・・・(笑) 無理やり記憶を絞り出すと・・・ 「戦火の淡き光」の別バージョン、みたいな印象。 ゴッホのひまわりみたいな感じで、同じモチーフを描いた別の絵、という印象だった。前に見たことある、読んだことある、みたい...
忙しすぎて感想を書きそびれていたら、なんだか、早くも記憶がボンヤリ・・・(笑) 無理やり記憶を絞り出すと・・・ 「戦火の淡き光」の別バージョン、みたいな印象。 ゴッホのひまわりみたいな感じで、同じモチーフを描いた別の絵、という印象だった。前に見たことある、読んだことある、みたいな。 やはり後から書いた「戦火…」の方が私はだんぜん好きだけど、それは私がそっちを先に読んだからなのかな? 書かれた順に読んでいたら、印象がまた違うかも。 ミス・ラスケティについては、「またそのパターンかい!」と思わず突っ込みたくなるような種明かしで、ちょっと個人的にはカクっときた。物語的には重要ではないと思うから、まあいいんだけど、でも、あの最後の告白の手紙は長すぎる。 小さなところのリアリティが気になる私としては、小説家が書いたんじゃあるまいしーと少々白けた。(まあ小説家が書いてるんですが) しかし、そんなゴタクはさておき、今回のオンダーチェは、官能プロレタリアート再び、という感じで、労働シーンの数々にほれぼれうっとりした。 特に、スエズ運河を通過するところ。 実際には文字を追っているだけなのに、私の眼前には、夜間の港湾でにわかに活気づく労働者たちの影のようにうごめく姿と、それを気まぐれに照らす黄色いライトが見えて、船の汽笛や口笛や、貨物がガツンガツンとぶつかる音も聞こえて、さらに岸辺で何か煮炊きする匂いまで感じられた、ような気がした。 あのシーンは前のめりで読んだ。 ちょうどスエズ運河工事についての歴史ドキュメンタリーをTVで見たところだったので、余計リアルに目に浮かんだ。もう最近の読書は完全にメディアミックスで、いい時代に生まれたなぁ、とつくづく思う。 そうそう、書いていて思い出したけれど、水先案内人の姿がとても印象的だった。確か3人くらい登場したと思ったけれど、彼らの職業的な性格と本人自身の性格がとても密接に関係しているような、そんなことを思わせる様子が描かれていた。 たとえばこういう描写―― 「僕の見慣れていた水先案内人たちは、半ズボンをはいて、ポケットからめったに手を出さなかった。乗船して最初に注文するのは、たいてい、リキュールと作り立てのサンドイッチだ。彼らのだらけた雰囲気、お抱え道化師のような風情を、のちに僕はなつかしむようになる。まるで外国の王様の宮廷で、一、二時間ほど気兼ねなく歩きまわり、やりたい放題できると思っているふうだった。」 労働する姿をあんなに美しく描写できるのは、やはりオンダーチェが身体を使って労働する人じゃなく、傍観するだけだからなのかなぁ。(読んで美しいと思う私ももちろん傍観側ですが) とにかく、雑多で、荒っぽい世界が、まるで神話の世界みたいに美しく繊細に見えてくる。この人の筆さばきには、いつも本当に驚かされます。天才だわ、と毎回思う。
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原題の「キャッツ・テーブル」とは、もっとも優遇されない下座のこと(あとがきより) セイロンからイギリスまで3週間の船旅をした11歳のマイケルが遭遇した数々の出来事と、 その後の人生。 さほど南アジア色は濃くない。 サラリと読める。 船内の出来事とその後の人生が交錯するのが読み...
原題の「キャッツ・テーブル」とは、もっとも優遇されない下座のこと(あとがきより) セイロンからイギリスまで3週間の船旅をした11歳のマイケルが遭遇した数々の出来事と、 その後の人生。 さほど南アジア色は濃くない。 サラリと読める。 船内の出来事とその後の人生が交錯するのが読みにくい。 このたぐいの混乱とても多い、どうにかならないものだろうか。
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セイロンからイギリスまでの、21日間の大型客船の14才のマイケルの冒険 Cats Table 主賓から一番離れたテーブル
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なんて切なくて、美しくて、感傷的な幼い少年達の物語・冒険譚なのだろう。ここまで美しい少年を主人公にした冒険譚は初めて読んだ。だが、子供の頃に本書を読んで、本当の意味で理解できたかと思うと疑問だ。つまりこの本は、幸せだった子供時代を抜け、今日々を送る私たちに向けて、マイケル・オンダ...
なんて切なくて、美しくて、感傷的な幼い少年達の物語・冒険譚なのだろう。ここまで美しい少年を主人公にした冒険譚は初めて読んだ。だが、子供の頃に本書を読んで、本当の意味で理解できたかと思うと疑問だ。つまりこの本は、幸せだった子供時代を抜け、今日々を送る私たちに向けて、マイケル・オンダーチェから語られるかけがえのないプレゼントなのだ。 中盤までは主人公であるマイケル少年と一緒に、乗り込んだ船であるオロセイン号を探検しているかのような気持ちで、ドキドキ・ハラハラしながら頁を読み進めてゆくことができる。 そして中盤以降は主人公や一緒に船に乗り込んだ人びとの、その後の人生が明かされてゆき、サスペンスの要素までが物語に織り込まれてゆく…それを描写するオンダーチェの筆もますます冴えわたっており、見事としか言いようがない。特に見事なのが、ミス・ラスケティの章だ。本当に美しい文章である恋のいきさつが描かれている。 ラストシーンの終わり方もよい。目を閉じると瞼の裏に最後の情景が浮かんでくるかのようだ。 必ずしも人生はハッピーエンドではない。むしろ、やりきれない気持ちで終わることの方が圧倒的に多い。そんな日々の中でも、私たちは救いを見出し、自分なりのケリをつけながら生きている。 しかし、オンダーチェはそんな私たちへ″それでよいのだよ″と物語の向こう側から、優しく語りかけてくれている…そんな気がしてならない。 また本書は、オンダーチェを初めて読んでみようかなと思っている人にもオススメしたい。全体的にとても読みやすく、何しろ読んでいてドキドキ・ワクワクの連続で、とても楽しい読書体験になること間違いなしだ。 最後にこの素晴らしい本を執筆してくれたオンダーチェ本人、そして日本での邦訳・出版を決断した作品社と訳者へ大きな感謝を申し上げたい。ありがとうございました。
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初めての船旅で、大人たちが起こす様々な出来事や子供同士の交流、ぶつかり合いなどを通じて、少年たちが変化していく様を描いている。船旅という特別なシチュエーションを前提としながら、その中で起こっていることは実に日常的で親身近。人は変わるものだし、変わらないと生きていけないものだが、変...
初めての船旅で、大人たちが起こす様々な出来事や子供同士の交流、ぶつかり合いなどを通じて、少年たちが変化していく様を描いている。船旅という特別なシチュエーションを前提としながら、その中で起こっていることは実に日常的で親身近。人は変わるものだし、変わらないと生きていけないものだが、変わるま前の過去は二度と戻れない、取り返しがつかないものだとしみじみ実感。夏休みなどの旅行中には最適の書。
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豪華客船の旅。ただし、歓迎されざるものはキャットテーブルへのキャットテーブルに座る人たちの物語。 時代は1950年代。ゆるやかな子供たちの冒険譚と思いきや、闇は想像以上に深く、読む内に空恐ろしくなってくる。あまりの平穏さと不穏さに。取るに足らない命の軽さに。 読み終えて、読...
豪華客船の旅。ただし、歓迎されざるものはキャットテーブルへのキャットテーブルに座る人たちの物語。 時代は1950年代。ゆるやかな子供たちの冒険譚と思いきや、闇は想像以上に深く、読む内に空恐ろしくなってくる。あまりの平穏さと不穏さに。取るに足らない命の軽さに。 読み終えて、読み返したいけど、怖い。そんな作品でした。実に端正。
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慣れ親しんだ世界から未知の世界へ、船上という世界を3週間かけて通過しながら、渡っていく物語。はじめはわくわくする子どもの冒険の姿をしている船上のエピソードの数々が少しずつ様相を変えていき、物語も船上と旅のその先を行ったり来たりする。 3週間の船旅が、主人公マイナの子ども時代の終わ...
慣れ親しんだ世界から未知の世界へ、船上という世界を3週間かけて通過しながら、渡っていく物語。はじめはわくわくする子どもの冒険の姿をしている船上のエピソードの数々が少しずつ様相を変えていき、物語も船上と旅のその先を行ったり来たりする。 3週間の船旅が、主人公マイナの子ども時代の終わりとなったように、共にテーブルを囲んだ人たちにとってもそれまでの暮らしの終わりとなっていくさまがさびしい。物語の様々が美しいから、余計に。
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大人に近づきつつある11才の少年が、21日間の船旅で経験する出来事を通じて、いつの間にか少年ではなくなっていく。善も悪も分からず周りに物凄く影響されながら日々をひたすら突っ走っていた自分の少年時代を思い出しながら読んだ。
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一つの名もなき人たちが座る「キャッツ・テーブル」に座る人たちの,普通に過ごしていれば絶対に交差し得なかった人生が,一ヶ月あまりの船旅によって少しずつ触れ合う物語。名もなき人という自虐的なタイトルと設定によって逆に各々の数奇な人生が浮き彫りにされる。語り手含む少年3人が,その歳相応...
一つの名もなき人たちが座る「キャッツ・テーブル」に座る人たちの,普通に過ごしていれば絶対に交差し得なかった人生が,一ヶ月あまりの船旅によって少しずつ触れ合う物語。名もなき人という自虐的なタイトルと設定によって逆に各々の数奇な人生が浮き彫りにされる。語り手含む少年3人が,その歳相応以上の死や恋愛,犯罪といったものに触れ合うことで性格が形作られていく。時間のとび方やサイドストーリーの挿入の仕方が見事だと感じた。子供の主観性と後日談としての客観性が入り交じっていたり,背景が後々わかって実は…というミステリーな部分も良かった。文章も詩的で綺麗。 スリランカ→イギリスの旅だと思うが,時代背景的にそういう留学?亡命?的な人が多かったのかなあ。歴史認識不足でそこまではわからないけど。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
11歳の少年が3週間の船旅に出る。 そこで知り合う仲間2人。 ちょっとした冒険とはいえない展開になったことに、大人になって知る真実の欠片。 作中にでていた、食パンをくりぬいて卵を落として焼くという「ワン アイド ファラオ」作ってみました。本当に片目みたいで楽しかった。
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