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私のいた場所 の商品レビュー

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9件のお客様レビュー

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2019/04/11

作者が強い関心を寄せているのは、生者の現実世界でもなく死者の世界でもない中間的な時空そのもの。境界領域をさまざまに提示。これは掘り出し物というか、こういうの読んだことない。時代は少し前で、豊かでないカツカツ生活している生の生きざまが描かれる中、つつましくもそれぞれ人物達は感情的に...

作者が強い関心を寄せているのは、生者の現実世界でもなく死者の世界でもない中間的な時空そのもの。境界領域をさまざまに提示。これは掘り出し物というか、こういうの読んだことない。時代は少し前で、豊かでないカツカツ生活している生の生きざまが描かれる中、つつましくもそれぞれ人物達は感情的に生きてる。後書きに不思議の国のアリスの世界と表現されていて、風味は違うけど、突如異空間に遭遇する。しかし皆貧乏で地に足が着いていて自分を見失わない。時々人に言っても信じてもらえない出来事があるが、そういう感じ。

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2018/12/04

なかなか書店ではお目にかかれない内容の本でした。 かく言う私も、ネットでたまたま見つけましたが、まあ不思議な、奇妙で独特の味がする本でした。 いつもより何かが違う、迷宮の如く不可思議な世界へ迷い込みたい方にお勧めです。 この本に出てくる主人公たちはみな、救済を求めている。 人間...

なかなか書店ではお目にかかれない内容の本でした。 かく言う私も、ネットでたまたま見つけましたが、まあ不思議な、奇妙で独特の味がする本でした。 いつもより何かが違う、迷宮の如く不可思議な世界へ迷い込みたい方にお勧めです。 この本に出てくる主人公たちはみな、救済を求めている。 人間ってあながちそんな生き物なのかなあ?と思いました。 助けを求め、祈り、探し、迷い込む…。 そんな一冊です。

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2014/03/07

『ユーリャはアーニャおばさんにあれこれ身繕い、暖かいカーディガンを手土産に二時間後には駅前広場を走り、あやうく車にはねられそうになったが(もし事故になっていたら死んでいただろうけれど、そうなったら問題はすべて片づき、だれにも必要でない人間はいなくなってみんな楽になったはずだとユー...

『ユーリャはアーニャおばさんにあれこれ身繕い、暖かいカーディガンを手土産に二時間後には駅前広場を走り、あやうく車にはねられそうになったが(もし事故になっていたら死んでいただろうけれど、そうなったら問題はすべて片づき、だれにも必要でない人間はいなくなってみんな楽になったはずだとユーリャは考え、一瞬呆然となってこの考えにこだわった)、たちまち魔法のように電車を降りると、見覚えのある郊外の駅にいて、遠征用のリュックサックを背負って、見覚えのある道から村のはずれの川のほうへと進んでいた』 実は、この本を手にしたのは勘違いによるもので、てっきりリュドミラ・ウリツカヤの本だと思って購入したのだ。現代ロシアを背景とした物語は、最初その勘違いを中々気付かせてくれなかったが、幻想的な趣味が混入してきた辺りで何かが違うと気が付いた。 もちろん、様々なタイプの作品を書き分けることができる作家なのであろうけれど、東欧の昔話風の趣が、どことなく小泉八雲を思い起こさせる。もちろん小泉八雲は日本に生まれ育ったのではないけれど、その文章の底には日本人の土着の信仰に根付いたような世界観があり、その考えではあの世とこの世は極近い関係にある。耳無し芳一を持ち出すまでもなく、この世の者ならぬ者は平気で肉体的な接点を生きている者へ求めて来さえする。そんな彼岸との境のあいまいさが、何よりリュドミラ・ペトルシェフスカヤの特徴のように思え、そして小泉八雲の収集したかつての日本人の感覚に親いものとして感じられるのである。 とはいえ、この作家の息の長い文章は、ロシア的だなとも思う。あるいはスラブ的と言うべきか。小さなフレーズが幾つも何度も繰り返されて行きつ戻りつしつ、より大きなフレーズが奏でられる様式。フレーズには繰り返される度に少しずつ変調が加わり、やがてもっと大きな転調を呼び込む。そんな音楽的な特徴がリュドミラ・ペトルシェフスカヤにはあるように思う。そして、その音楽的特徴もまたどことなく幻想的で、この世とあの世の境を曖昧にするのに違いない。 これは多分に個人的な趣味の問題だけれど、そんな二つの世界のあわいが、短い昔話を現代に移し代えた話として並ぶ第二章は素晴らしい。まさに小泉八雲の怪談を彷彿とさせる。しかしそんな、云わば逆オリエンタリズムのような趣がこの作家の本質では、やはり、ないのだとも同時に思う。全ての話は極めて現代的であり、現実の悲惨な状況を思い浮かべさせる。貧困と飢えが生々しく描かれるその場所では、彼岸との距離の近さは抽象的な概念ではなく現実的な今日の状況だ。ソーネチカのリュドミラ・ウリツカヤにも似たような混迷のモチーフはあるように思うけれど、ウリツカヤの文章からはどこまでも都会的な価値観が感じられるように思えるのに対して、ペトルシェフスカヤのそれはより農村的だ。だからこそ、スラブ風の昔話の趣が自然に醸し出されるのかとも思う。 この作家にはスラブ風の短い話の並ぶ作品集もあるという。それが翻訳されることを切に願う。

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2017/03/04

どんよりしたものが心にたまっていく短編集。 真っ黒ではなく、緑がかった黒、赤みがかった黒、オレンジを一滴垂らした黒という風に、色んな闇の色がある感じ。 どれもとても好みで、とても面白かった。 装丁がうまく中身を表現してるとおまう。

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2013/10/31

ロシアの女性現代作家による、幻想的でおそろしげな短編集。この世とあの世の狭間を描いた、作者の中の世界観が描かれた作品が多い。一番好きなのは「母さんキャベツ」というキャベツから生まれた女の子とそれを発見した女性の話。

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2013/10/13

何時何処で誰かあまり説明が無いまま話が進みやがてゆらりと現実なのか分らなくなるのは内田百閒の『冥土』に似ている。東欧的に何層もの薄紙ごしに物語を読んでいるようで不思議。ただし薄紙の下の物語はロシアでの生活。心が挫かれ胸が潰れるようであった。しかしあの世とこの世の境目の中庸で人生を...

何時何処で誰かあまり説明が無いまま話が進みやがてゆらりと現実なのか分らなくなるのは内田百閒の『冥土』に似ている。東欧的に何層もの薄紙ごしに物語を読んでいるようで不思議。ただし薄紙の下の物語はロシアでの生活。心が挫かれ胸が潰れるようであった。しかしあの世とこの世の境目の中庸で人生を、自分を取り戻す話も多く、主人公達の背中をそっと押すようなぬくもりを感じた。「現実の暗くみすぼらしい側面を強調するネガティヴな作風」をチェルヌーハという。患部の膿を排出する良さがあった。母娘の愛憎の物語「時は夜」も読んでみたい。

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2013/10/05

幻想的というべきなのか、不可解な展開そのものがまさに異界そのものの1冊。 1938年生まれの、リュミドラ・ペトルシェフスカヤ。 短編が4章に18編収められている。 ソ連時代には、出版をかなり規制されていた作家だという。 なるほど、幻のような話、夢そのものを文章化したのではな...

幻想的というべきなのか、不可解な展開そのものがまさに異界そのものの1冊。 1938年生まれの、リュミドラ・ペトルシェフスカヤ。 短編が4章に18編収められている。 ソ連時代には、出版をかなり規制されていた作家だという。 なるほど、幻のような話、夢そのものを文章化したのではないかと思える現実と乖離している話は、きっと、体制を揺るがすように権力が感じたののだろうなと思う。 不思議な、幻想的な、帯には幻惑とあるが、まさにそんな1冊。 生と死の間の何ともつかみどころのない世界を描くことを追求した1冊。 読後、妙な解放感がある

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2013/10/06

ロシア女性作家の短編集。全編を通じて死の匂いが立ち込める。生と死のはざま、正気と狂気のはざまを行き来する主人公たち。その姿は幽霊のようでもあり、血の通った人間のようでもあり、いま自分がどちらに属しているのかわからなくなり不安になる。その不安がただの不安ではなく快楽を持ってこちらに...

ロシア女性作家の短編集。全編を通じて死の匂いが立ち込める。生と死のはざま、正気と狂気のはざまを行き来する主人公たち。その姿は幽霊のようでもあり、血の通った人間のようでもあり、いま自分がどちらに属しているのかわからなくなり不安になる。その不安がただの不安ではなく快楽を持ってこちらに迫って来る印象。心地よくもあり不穏でもある、不思議な作品集。

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2013/08/29

ロシア現代作家の幻想短篇集。 寓話あり、ホラー調あり、バリエーションはかなり豊富。 第二章『東スラヴ人の歌』が一番楽しめた。

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