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インディアスの破壊についての簡潔な報告 の商品レビュー

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16件のお客様レビュー

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2016/01/07

いままで読んだ本で2番目に恐ろしい本だった。(1番目は『1984』だ) ラスカサスが「報告」という形でスペイン人無法者(ティラーノ)の蛮行を書く。中世的世界観が見え隠れしつつも、客観的に報告しようとしているのがわかる。どの時代においても、ラスカサスのような自己批判の能力をもつ人...

いままで読んだ本で2番目に恐ろしい本だった。(1番目は『1984』だ) ラスカサスが「報告」という形でスペイン人無法者(ティラーノ)の蛮行を書く。中世的世界観が見え隠れしつつも、客観的に報告しようとしているのがわかる。どの時代においても、ラスカサスのような自己批判の能力をもつ人材は貴重だ。現代でいえば優秀なジャーナリストか。 この本は島ごとに行われたことを描写していくが、基本的にはどの島でも同じことが行われた。美しい自然と調和して暮らしていた原住民を殺し、奴隷として酷使する。美しい自然やまちなみは破壊された。畑は荒れ果てた。神殿も破壊され、彼らの文化も破壊されたのだろう(ラスカサスは司教なので、原住民の宗教や文化の破壊は触れられていなかった、これはヨーロッパ的宗教や文化が至高だと考えていたからだろう)。 歴史は繰り返す。この悲惨な体験が、どれほど繰り返されたことか。時空を超えて、訴えかけてくるものがある。 読み終わって、「ヨーロッパ人はなんと恐ろしいやつらだ。日本はヨーロッパから離れていたから助かった」などと考えた。たしかに、ヨーロッパ人ほど野蛮な奴らはいないと思う。しかし、我々日本人だって、この「ヨーロッパ人」の生き残りだとも言える。他人事ではあり得ない。 この話を読んで、手塚治虫の言葉を思い出した。手塚治虫は、「想像力が足りない」と嘆くだろう。

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2014/05/03

時はコロンブスの新大陸確認から大航海時代。カリブ海の島々や中南米にやって来た征服者たちの残虐性からインディオを保護するために司教が書いた報告書。現代人の感覚からすれば狂気とも思われる行為が横行している。昔の話だからと言いたいが世界大戦時にも残酷なことはたくさん行われていた。僕の感...

時はコロンブスの新大陸確認から大航海時代。カリブ海の島々や中南米にやって来た征服者たちの残虐性からインディオを保護するために司教が書いた報告書。現代人の感覚からすれば狂気とも思われる行為が横行している。昔の話だからと言いたいが世界大戦時にも残酷なことはたくさん行われていた。僕の感覚はただ傍観者の無責任で聖人ぶっているだけなのだろうかと考えてしまう。あと、リーガエスパニョーラでのバナナの一件があった後なだけに、情熱的なのは盲目的でもあり良い方向にもその逆にも突っ走る恐れがあるなあとか考えさせられた。

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2014/04/12

新大陸(中南米)のあちこちでスペイン人がひどいことをした話が述べられているが、簡潔でないし緻密さにも欠けるので退屈。それよりも巻末に70ページもある訳者解説がわかりやすくてよかった。当時のスペイン王室のおかれた国際状況や、ラス・カサスとセプールベダの宮廷内での争いや、後世の反スペ...

新大陸(中南米)のあちこちでスペイン人がひどいことをした話が述べられているが、簡潔でないし緻密さにも欠けるので退屈。それよりも巻末に70ページもある訳者解説がわかりやすくてよかった。当時のスペイン王室のおかれた国際状況や、ラス・カサスとセプールベダの宮廷内での争いや、後世の反スペイン政治運動に何かと本書が使われてきたことなど。あんな滅茶苦茶な新大陸征服にも一応理論的正当性が必要だったのは意外。

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2013/11/26

これがキリスト教の本質。異民族は人として扱わない。イエスの思想とどれだけ乖離していることか。そして現在も本質は同一であり、末端の信徒はお気の毒としか言いようが無い。

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2013/11/23

キーが重い。気安く書くわけにはいかないためだ。私がもたもたしているうちに改訳版が刊行されていた。タイトルが広く知られていると、「ま、いつでも読めるよな」とか「今更俺が読んでも……」などと思いがちだ。挙句の果てには「読んでしまった」ような錯覚に至ることもある。ソクラテス、トルストイ...

キーが重い。気安く書くわけにはいかないためだ。私がもたもたしているうちに改訳版が刊行されていた。タイトルが広く知られていると、「ま、いつでも読めるよな」とか「今更俺が読んでも……」などと思いがちだ。挙句の果てには「読んでしまった」ような錯覚に至ることもある。ソクラテス、トルストイ、ドストエフスキー、夏目漱石……そして岩波文庫だ。 http://sessendo.blogspot.jp/2013/11/blog-post_64.html

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2013/09/24

・大航海時代のカリブ海諸島で、スペイン人が先住民インディオに対して行った様々な迫害の記録。 ・「簡潔な報告」という題名とは裏腹に、著者は「これでもか」というくらい執拗にスペイン人の悪行の数々を書き記す。同じような手口によってインディオがひたすら虐殺される様を描いたこの記録文書を...

・大航海時代のカリブ海諸島で、スペイン人が先住民インディオに対して行った様々な迫害の記録。 ・「簡潔な報告」という題名とは裏腹に、著者は「これでもか」というくらい執拗にスペイン人の悪行の数々を書き記す。同じような手口によってインディオがひたすら虐殺される様を描いたこの記録文書を読んでいると、気が滅入ってくるし、もっとハッキリ言ってしまえば辟易する。しかし、これが被征服者ではなく、征服者たるスペイン人自身の手によって書かれたことの意義は大きい。 ・本書の受容史を論じた訳者解説は興味深い。その残虐さゆえに本書は諸外国によって「横暴なスペイン人」という反スペインキャンペーンの恰好の材料として利用され、それゆえ他方では、著者ラス・カサスはスペイン国内の保守主義者から「売国奴」のレッテルを貼られてしまう。こうして本書があまりにも強い政治的色彩を帯びてしまったために、客観的な学問研究の妨げとなっているという。似たような構造の問題を抱えるわれわれ日本人にとっても、この訳者解説は冷静な知見を与えてくれる。

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