捨ててこそ 空也 の商品レビュー
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京都市東山区の六波羅蜜寺所蔵の立像で有名な平安時代中期の僧・空也を主人公とした歴史小説。 特定の人類を中心に据えた歴史小説において、空也のような出自や生涯が未詳な人物は大きなネックだろうが、そこを「醍醐天皇の皇子だった」・「平将門と親交があった」等の大胆な創作で補っている。また浄土教や念仏信仰といった当時の日本仏教を可能な限り平易な表現を用い、空也の宗教活動や功績を描いている。多数登場するオリジナルキャラクターがドラマを盛り上げる。 政情は安定せず、民は飢饉や疫病に苦しめられ、仏教界は貴顕に阿り自らの富や権力を増やすことばかりに終止する時代に、官僧としてではなく聖として超宗派的に活動する空也の姿は、宗教者としての本来的な在り方に映った。
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思わぬ雑事が続き、ようよう読破。 本書の空也は醍醐帝の落胤説が採用されている。 藤原忠平の嫡男、実頼との交流はいい感じだが、実頼の異母弟・師氏はいくら何でも、ちょっとカジュアル過ぎないか(笑)?
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自分も空也になった感覚で読み進む。自分の心にある嫉妬や他者に対する付き合い方など欲まみれな自分を空也は自分で考えてどうするのかを教えてくれた。しかも空也自身も心の葛藤をさらけだしているので身近に感じる。久々に生きることの意味を考えさせてくれた本に出会う。
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空也上人を知るための仕事用読書1冊目。 歴史上の出来事と空也上人の生涯を並行して知るには良い本。 戦乱、疫病、水害、噴火、日照りに火災、菅公の祟り。公家たちの無関心ぶりとから騒ぎ、そして強行される絢爛豪華な催し物。民衆がすがるのは怪しげな民間信仰。本当に困っている人のところには救...
空也上人を知るための仕事用読書1冊目。 歴史上の出来事と空也上人の生涯を並行して知るには良い本。 戦乱、疫病、水害、噴火、日照りに火災、菅公の祟り。公家たちの無関心ぶりとから騒ぎ、そして強行される絢爛豪華な催し物。民衆がすがるのは怪しげな民間信仰。本当に困っている人のところには救援の手は行かず、今生での困窮は前世の報い、あるいは、本人の努力不足か不運のせいになる。僧侶にとっての学問は、自らの権勢あるいは保身のための道具と化している。 ふむ。 ほぼほぼ令和ですな! ってことは分かってたけど、それを補強してもらえました。 人間・空也については、この小説を読んだからって特に感じるものはありません。なんというか……浅い。登場人物の使い捨ても酷いので、ドラマを期待して読んではいけません。あくまで、歴史の勉強用の本です。
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醍醐天皇の子であったらしいとの言い伝えがある程度で、史実は不明にもかかわらず、よくここまで物語として書けるもんだ。 個人的には、困った人々を救う様が、凄すぎてリアリティを感じなかった。 一方で、亡骸が捨てられるエリアが出てくるが、火葬場もない時代、伝染病などで多数死んだら、...
醍醐天皇の子であったらしいとの言い伝えがある程度で、史実は不明にもかかわらず、よくここまで物語として書けるもんだ。 個人的には、困った人々を救う様が、凄すぎてリアリティを感じなかった。 一方で、亡骸が捨てられるエリアが出てくるが、火葬場もない時代、伝染病などで多数死んだら、死体は街の外れに打ち捨てられたのだろう。京都では、地域が特定されているのかも。 ところで、史実とは別に、著者の仏教についての知識と宗教に救済を求める思いも、迫力を生んでいる。 物語の最終盤、興福寺の仲算との対話で、「世の中が変われば、人の心も変わる。仏道がそれにどう対応するか」との空也の言と、『仏の教えと心理は不変不滅のものであり、その解釈がみだりに変わっては混乱を招くと思っているのだ』との仲算の思い、とどめの空也の声「いま、この時代に生き、現に苦しみ喘ぐ者たちを救えなくては、意味がないではないか」に、著者の今日の仏教・宗教に対する苛立ちが現れている。 空也が初期に影響を受けた悦良との問答を通して、『物事を突き詰めて深く考え、自分が名遠くできる答えが得られれば、迷いがなくなる、分からないから迷う』と思っていたところ、『自分が実体がないもの、食うなるものにとらわれていることを知ることが大事』と教えられる。非常に仏教らしいが、分かったようで分からん。 宗教者のお話を読むと、良き人にならないとと思う。悪い事を止めて、善を行い、他社の利益に努めようかな、とちょっと思っている。
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空也の一生謎に満ちた部分も多いですが、本書はフィクションとノンフィクションを交えて、空也の実情や思想に迫ります。 空也の思想や浄土信仰、それらのバックボーンが描かれています。 どこにも属さず、一生涯を救済に当てた空也の生き方が感動をよびます。
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空也上人の話。 正直名前しか知らなかったけど、楽しめて読める本だった。 本当の歴史がどういうものかは、わからないけど、歴史小説の中では、読みやすい部類に入ると感じた
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空也というと、六波羅蜜寺の空也像(口から仏様が出てくるあれ)の人やなぁ、ぐらいの知識しかなく、むしろタイトルの「捨ててこそ」の部分にひかれて読んでみたのだけど…。 小説だから盛っている部分はあるんだろう、その部分を差し引いてもなかなかに凄いお坊さんだったようである。当時の仏教界ってのは、公家を中心とする社交界のたしなみや教養みたいな位置づけがあったようで、貧困にあえぐ下層階級の人々には、贅沢で近寄れないものという感じだったんだろうけど、そこにグイグイっと切り込んでいくのが空也聖人。 「罪人であれ、賤民であれ、心から南無阿弥陀仏を唱えれば極楽浄土が約束される」という教えは、上層階級からすれば扱いにくい部分もあったろうに、そこを教義や理屈や苦行だけでなく、社会奉仕という実践を併せて行う事で広めていく行動力には敬服する。 俺なんかは決して極楽浄土に行きたいと思ってるわけでもないし、悟りを開きたいとも思っていないが、それでも、自分を鍛えることと、ちょっとだけでも誰かのお役にたてるような人間になりたいと思っている。 そういう俺みたいなんが、この本を読むと、もう自分の至らなさに恥ずかしさも極まってしまうのだけど、不思議と「明日からちょっとずつでも頑張ってこ」と勇気をもらえるのである。
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力作であろうが作品として評価出来ない。 著者は作家になってから佛教大学に通ったそうだが、そこで学んだ知識を出し過ぎて、一般読者には煩わしい。 それが書きたいなら別のスタイルだろう。 空也に魅力がない。
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空也の生きた時代が大地震やゲリラ豪雨に見舞われる現代に重なるような本。 その中で自分自身の宿縁に囚われ悩みながらも利他をモットーに生き抜いた空也の姿。 決して楽な人生ではなかったけど、当時としては長命な70歳の天寿を全うできたことに、確執はあったにせよ母親が丈夫に生んでくれたおか...
空也の生きた時代が大地震やゲリラ豪雨に見舞われる現代に重なるような本。 その中で自分自身の宿縁に囚われ悩みながらも利他をモットーに生き抜いた空也の姿。 決して楽な人生ではなかったけど、当時としては長命な70歳の天寿を全うできたことに、確執はあったにせよ母親が丈夫に生んでくれたおかげで天命とも言うべき偉業を成し遂げられたのだなと感慨深かった。 猪熊との出会いから最期の別れは泣けます。自分にもあの時助けてくれたから今の自分があると言えるような友がいるだろうか? いるな(笑)良かった。
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