日本近代史を学ぶための文語文入門 の商品レビュー
私は古文の知識がいい加減だが、旧字旧仮名の本をたくさん読んで来たからか、明治の文章にそれほど抵抗はない.しかし「学問のすすめ」は読めても「文明論之概略」はなかなか難しい.それでも,福沢諭吉を読みたい私にはこの本はぴったりの本.タイトルに「日本近代史を学ぶための」とあるが,テキスト...
私は古文の知識がいい加減だが、旧字旧仮名の本をたくさん読んで来たからか、明治の文章にそれほど抵抗はない.しかし「学問のすすめ」は読めても「文明論之概略」はなかなか難しい.それでも,福沢諭吉を読みたい私にはこの本はぴったりの本.タイトルに「日本近代史を学ぶための」とあるが,テキストは「学問のすすめ」「文明論之概略」「米欧回覧実記」である.これら本を読めるようになるための漢文訓読の知識がぎっしり詰まっている. 以前、略字,合字,踊り字などに出会って,読み方も意味も記号の名前も知らなくて,何を調べれば良いか難儀した.こういうのがしっかり書かれているのが大いに助かる. 最後に「明六雑誌」から二点,これはなかなかキク.千本ノックのような厳しさ.解釈の奥深さに参った.
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日本近代史の学習者を対象に、近代文語文資料(漢文訓読体)の史料を閲読するさいの語彙、文法などの問題点や注意点を指摘し、その基本的な対処法を示す入門書。 漢文訓読体は、純粋な日本語とはいえず(語義従漢原理)、また、漢文の書き下し文ともいえない(原文不在原理)鵺のような存在で、読みこ...
日本近代史の学習者を対象に、近代文語文資料(漢文訓読体)の史料を閲読するさいの語彙、文法などの問題点や注意点を指摘し、その基本的な対処法を示す入門書。 漢文訓読体は、純粋な日本語とはいえず(語義従漢原理)、また、漢文の書き下し文ともいえない(原文不在原理)鵺のような存在で、読みこなすのには一定のトレーニングが必要であり、本書はそのよき指南書になっている。また、漢文訓読体に限らず、広く漢語表現の知識を得るのにも有用だと思われる。 『学問のすゝめ』『文明論の概略』『米欧回覧実記』という有名出典から豊富な文例を引いているのもありがたい。後半には、『明六雑誌』の記事を2本使った、「閲読篇」と称する実践編があり、これまでの解説部分で学んだことを反復演習できるようになっている。 ただ、日本近代史学習者を対象にしているという割には、歴史学の要素があまりないように感じた。語彙、文法的な観点に偏っていて、そのうえでその史料をどう歴史学的に解釈するかというところまでは踏み込んでいない印象をもった。それは本書の射程外ということなのだろう。 本書を読んでの感想として、明治時代の知識人は豊富な漢文を諳んじていたため、原文を確かめずに記憶に頼って漢籍を引用する事例も多かったことなどを知り、その漢籍の素養の深さに驚嘆するとともに、自分もそこまではいかずとも、ある程度の漢籍の素養を身につけたいものだと感じた.
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本書は、明治期の漢文訓読体の文章を読むためのマニュアルであり、本来史学の徒のために書かれたものであるが、中国語を勉強している者にとっても極めて有益であり面白い。読みながら、わくわくした。明治期の漢文訓読体というのは、漢文の訓読のようでもあり、またそうでもない。言い換えれば原文にも...
本書は、明治期の漢文訓読体の文章を読むためのマニュアルであり、本来史学の徒のために書かれたものであるが、中国語を勉強している者にとっても極めて有益であり面白い。読みながら、わくわくした。明治期の漢文訓読体というのは、漢文の訓読のようでもあり、またそうでもない。言い換えれば原文にもどせるものもあるが、もどせない。いや、どうもどせばいいのかわからないものもあるのである。古田島さんは、それを語彙、発音、文法等にわたって、まるで授業をしているかのように解き明かす。文章が生き生きと迫ってくるように感じられるのはこの臨場感のためである。たとえば、漢文の「皆」は本来、現代中国語の「都」と同じく、二つ以上のものを総括する副詞である。ところが、日本語では二つの場合は皆と言わず「どちらも」という。この「どちらも」と「どれ」の区別は中国人には難しい。ぼくはずっと漢文の「皆」は=みな、だと思っていたが、実は現代語の「都」と同じなのだ。同じような副詞に「凡」がある。これも現代中国語の文章語に頻出するが、学生はすぐ「およそ」と訳すので叱る。なぜなら、現代語も古典語同様「~はすべて」という意味だからである。「およそ」はかつてはそういう意味だったが、現在は推量を表す副詞にすぎない。否定の「不」がどこまでかかるかは現代語でも難しいが、これは訓読体になるとますますわからなくなる。古田島さんはそのような例を懇切丁寧に一つ一つ解き明かす。素材としてとりあげられているのは福沢諭吉の『学問のすすめ』『文明論之概略』、それにぼくの好きな久米邦武の『米欧回覧実記』だが、意外に誤読しているかも知れないと本書を読みながら反省させられた。
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