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技術者たちの敗戦 の商品レビュー

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14件のお客様レビュー

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2024/09/28

技術者目線で書かれている点が素晴らしいと思う。 戦前・戦中・戦後それぞれのステージにおける技術者の立場や考え方が筆者を媒介として伝わってくる。 敗戦に対する悔しさ、悲しみなどの感情が呼び起こされる。それと同時に開発者として最高の環境にあったことの羨ましさというか嫉妬も。 この本が...

技術者目線で書かれている点が素晴らしいと思う。 戦前・戦中・戦後それぞれのステージにおける技術者の立場や考え方が筆者を媒介として伝わってくる。 敗戦に対する悔しさ、悲しみなどの感情が呼び起こされる。それと同時に開発者として最高の環境にあったことの羨ましさというか嫉妬も。 この本が書かれた当時と文庫化にあたって加筆された後書き、その後の現代。日本の国際的な立ち位置や競争力は劇的に変化している。 いつの間に日本は観光立国などという水物国家になってしまったのか。この本に登場する偉大な先人たちの再来はもうないのかと暗い気持ちになってしまった。 歴史に学びつつグローバルな視点を持ったリーダーに光が当たらないのは今も昔も変わらない。 本作は手軽に読める伝記ものとしてだけでなく、学び取れる教訓にあふれている。

Posted byブクログ

2020/03/08
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※このレビューにはネタバレを含みます

①堀越次郎  堀越はかなりの年齢になってからも、航空機の一設計者として、自らが知らない新技術や新しい理論を目にすると強い興味を示した。空力や構造設計面での新しい理論的考え方などが学会誌に掲載されると、その論文の発表者に連絡して訪ね、さらに詳しい説明を求めて議論するなど、晩年まで最新技術に対する関心を失わなかった。  航空技術者ならば、誰もが知る有名な零戦の設計者の堀越が、あまりにも熱心に根掘り葉掘り質問し、自らもそれを確認して納得しようと、難しい計算に取り組む姿には、論文を発表した若い技術者も頭が下がる思いであった。それと同時に、昔の設計主任はこれほどまでに航空機に対して情熱をもって取り組んでいたのかと驚きを覚えたという。  先の鳥養は、一九九〇年代前半、日米の共同開発となった支援戦闘機FSX(F2)などの開発経過を踏まえながら、最近の航空技術者について次のように語っている。 「…だから、航空機の設計は単に仕事として与えられた部分を一生懸命に設計しますとか、ただまじめにやりますではやはりだめであって、飛行機が好きでないとだめです。好きならば、興味があって、あれもこれも知りたいから、他人の担当のところまで、そして飛行機全体のことまで考えるし、気になってくるのです。…」 ②島秀雄 その一方で、島は決して天才肌ではなく、ひたすら努力を重ねる勤勉一筋の人であり、学級の徒であって、どんなに仕事が忙しくても、とにかくいつも勉強をしていた。つねに世界に目を向けていた。このため戦後のある時期、勉強のしすぎで目を悪くしたというほど諸外国の文献や本も含めて読み込んでいた。 ③真藤恒  このとき、旧三菱重工など造船業界が政治力を使い、政府を動かして、「戦犯工場はつぶすべきである」と画策した。その目的もあって、時の有力大臣で吉田茂首相の秘蔵っ子としてしられた池田勇人蔵相が、秘書官で選挙に立つ直前の宮沢喜一を連れ、視察を兼ねて旧呉工廠にやってきた。  …このとき案内役となったのが、「度胸の据わった技術部次長」として通っていた真藤だった。造船所をひとまわりしてからのち、池田の視察の意図を嗅ぎ取った真藤は、開き直って喧嘩を売った。 「あんた方は、ここをつぶすつもりで来たじゃないか」 「そうだ、世間もGHQもやかましいから、しょうがないんだ」  以外にも池田は正直で、政府の既定方針だからと言わんばかりだった。 「あんたたち二人とも広島が選挙区だ。とくに池田さんは呉が大票田で影響はいちばん大きい。だから、あんた方が責任者としてここをつぶすんなら、こっちにも覚悟がある」  名も知らぬ一介の技術次長の無礼な言葉に、池田は傲然として言った。 「覚悟とはなんだ」 「あんた方はもうすぐ選挙になる。もし、ここをつぶすというなら、わしだけじゃない。ここの幹部を含めて、死に物狂いで選挙の邪魔をする。いいですね」  思いかけない挑戦的な言葉に、池田も宮沢も血相を変えた。 「ここには四千五百人の従業員がいる。その下請けも入れるともっと多い人数になる。家族も含めるとさらに膨らむ。四千五百人が死に物狂いになったら、二万や三万の票は動きますよ。絶対に落とす。自信をもって落としてみせるから覚悟しときなさい」 「おまえ、ほんとうにそこまでやるのか。あと先のことを考えているのか」  池田は真顔だった。 「わしらにはこわいものはない。うちの従業員にしてみれば、あんた方二人がここをつぶすことを決めたんだから、われわれの仇なんだ。呉の人間は昔から気骨がある。あいつを落とせと言えば、いっぺんでころりですよ」  この選挙区で二万票が動いて対立候補に流れたら、差は倍の四万票になる。そのことを言われた池田は、急に冷静な口調に戻っていた。 「そこまで言われたらきついなあ」  お付きの大蔵官僚が口をはさんだ。「君、それは言いすぎだろう」  「黙っとれ、そっちは役人で、ここがどうなろうと関係ないだろうが、こっちは四千五百人の従業員と、それより大勢の下請け、その家族の生活がかかっているんだ。死に物狂いなんだ」  「生意気な、なにを言うか」  まわりにいた会社の上層部の人間たちが息を呑み、真っ青になったやりとっりだった。

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2018/10/09

新幹線の生みの親・島秀雄,ホンダF1の中村良夫などの昭和を代表するエンジニアの物語.エンジニアとして様々な課題にどのように向き合ったか,落ち着いた文章で描いている.どの業界であれエンジニアが生業の人は読む価値あり.

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2017/09/05

ヒーロー化される技術者の数々。 その実相に触れて、冷静に良い点悪い点を評した 前間さんの筆跡は、まさに時代を超えて学べるテキストである。 堀越二郎、島秀雄、中村良夫、真藤恒、緒方研二、曾根嘉年、 全てアクがあるけど、部下に慕われていたんだろうなあと思わせるエピソード満載でした。 ...

ヒーロー化される技術者の数々。 その実相に触れて、冷静に良い点悪い点を評した 前間さんの筆跡は、まさに時代を超えて学べるテキストである。 堀越二郎、島秀雄、中村良夫、真藤恒、緒方研二、曾根嘉年、 全てアクがあるけど、部下に慕われていたんだろうなあと思わせるエピソード満載でした。 是非、これからエンジニアになろうとする若者に読んでほしい一冊です。

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2017/08/07

内容(「BOOK」データベースより) 大戦中の技術開発研究は、二十代~三十代の若き技術者たちが担っていた。情報遮断と材料不足の厳しい状況下で多くの成果を上げるが、敗戦によって開発の断念を余儀なくされる。しかし、彼らは渾身の力を込めて立ち上がり、新しい産業に技術を転用させ、日本を...

内容(「BOOK」データベースより) 大戦中の技術開発研究は、二十代~三十代の若き技術者たちが担っていた。情報遮断と材料不足の厳しい状況下で多くの成果を上げるが、敗戦によって開発の断念を余儀なくされる。しかし、彼らは渾身の力を込めて立ち上がり、新しい産業に技術を転用させ、日本を技術大国へと導いた。零戦の設計主務者である堀越二郎、新幹線の生みの親・島秀雄、ホンダF1の中村良夫など、昭和を代表する技術者六人の不屈の物語。現在の日本の基盤を支えた、若くも一流の技術者であった彼らの哲学と情熱の軌跡をたどる。

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2017/05/20

第二次世界大戦と敗戦。そして復興の中で卓越した能力で活躍した技術者たちの物語。必ずしも能力に見合う待遇を与えられたわけでないところが、今も変わらぬ日本の会社の人事力学らしい残念なところ。

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2015/12/10

熟練したエンジニアとは、生きた宝物である。中には勘違いした御仁もあるが、企業が長く引き留めておきたい人材には、独特の味のある人間性、仕事への哲学を持った人が多い。これは、私個人の経験上の感覚であるが。 本著は戦時から戦後に活躍した、個性ある日本のエンジニアを記録したノンフィクシ...

熟練したエンジニアとは、生きた宝物である。中には勘違いした御仁もあるが、企業が長く引き留めておきたい人材には、独特の味のある人間性、仕事への哲学を持った人が多い。これは、私個人の経験上の感覚であるが。 本著は戦時から戦後に活躍した、個性ある日本のエンジニアを記録したノンフィクションだ。新幹線や電探、造船やエンジンなど、サラリーマンには身近に感じる分野も多い。そもそも、あれだけ悲惨な敗戦を迎えた日本が、戦後、何故あれだけの復活劇を成し得たか。そんな事に興味が向く人にはオススメである。数ある理由における、人材という側面。とりわけ、技術者に視点を当てた点が面白い。個人的に面白かったのは、造船に携わった真藤恒、海運王ラドウィックの話である。

Posted byブクログ

2015/08/25

零戦、電探、造船……様々な技術の開発者たちの戦後を描いた書籍。戦後の日本経済を引っ張っていく彼らの姿は、今ですら色あせないのではと思うほどにカリスマ性を持っているように思える。

Posted byブクログ

2015/08/03
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

どの章も大変興味深かったのだが、個人的には第1章(三菱零戦設計チームの敗戦)、第4章(なぜ日本の「電探」開発は遅れたのか)のような内容ばかりで占められていると思っていたので、この点、ちょっと期待とは違ったところがあった。 また、綿密な取材で様々な角度からその人物像に迫ろうとしている点も素晴らしいと思ったが、時々、話があちこちに行ってしまっている感が否めないところも。 でも、真藤さんや、ホンダの中村さんのお話にもすごく引き込まれたし、若い人はもちろん、我々の世代も読んでおくべき本だと思う。 なお、昨今の安保法制をめぐる議論の中で、とかく右も左も感情的な罵り合いしかしていないのではと思える中、本書で大変印象的だった箇所を引用しておきたい。 第4章で取り上げられた緒方研二氏の言葉 「痛感させられたのは、『アメリカ軍にとって、戦争は科学であり技術である』という徹底した軍事思想である。米国は、戦争を徹底的に計量し計算して考え、考えては生産し計量して、決して情緒を持ち込むようなことはなかった。」

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2015/06/30

 前間氏のノンフィクションその1として読む。氏の本はこれが初。本田の中村氏の章が、特にぐっときた。また、巻末で、本書にあげたような技術者は、今後日本にはもう現れないのではないか?との危惧があった。ほぼ同感である。システムが大きく変わり、別の視点で今後は進む企業がほとんどだろう。一...

 前間氏のノンフィクションその1として読む。氏の本はこれが初。本田の中村氏の章が、特にぐっときた。また、巻末で、本書にあげたような技術者は、今後日本にはもう現れないのではないか?との危惧があった。ほぼ同感である。システムが大きく変わり、別の視点で今後は進む企業がほとんどだろう。一方で、例えば自分が約40年前に、これら大先輩の元で働いている、という状況はどうなんだろうか?という想像も楽しい。意外とよかったりして・・・

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