ライス回顧録 の商品レビュー
2段組み600ページ超の超大作であり、9.11前後のアメリカにとって最も難しい時期に国務長官を務めたライス氏の回顧録。アラバマ州という人種差別が色濃く残る地の出身で黒人女性という立場で国務長官の職で外交を務めあげたことは並ではない。ただ端々に良くも悪くもアメリカらしい大国主義やお...
2段組み600ページ超の超大作であり、9.11前後のアメリカにとって最も難しい時期に国務長官を務めたライス氏の回顧録。アラバマ州という人種差別が色濃く残る地の出身で黒人女性という立場で国務長官の職で外交を務めあげたことは並ではない。ただ端々に良くも悪くもアメリカらしい大国主義やおこがましさも感じる。 大国の真ん中にいる当事者自らがアメリカを語っているという一歩引いた目線で読むのが良いかもしれない。
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本格的な回顧録を読むのは初めてである。前々から興味はあったが、分量が多いこともあり、なかなか時間が取れなかった。今回、出口治明さんからもおすすめされていたので、やはり読んでみようと思って買ってみた次第である。 この本の中には、大統領選挙から国務長官退任まで、様々な9年間が込めら...
本格的な回顧録を読むのは初めてである。前々から興味はあったが、分量が多いこともあり、なかなか時間が取れなかった。今回、出口治明さんからもおすすめされていたので、やはり読んでみようと思って買ってみた次第である。 この本の中には、大統領選挙から国務長官退任まで、様々な9年間が込められている。9.11以降、世界は一変してしまったが、その強大なプレッシャーの中で、著者や「アメリカ」がいかなる考えを持ち、どのような実行力をもって志を実現させていったか、克明に記されている。 総じて、思考術・仕事術・組織づくり・内ゲバの納め方・交渉術・ボスの支え方・部下との接し方など、志を実現させるために必要なありとあらゆるものが詰まっている。のみならず、著者が様々なことに苦悩し、心を揺さぶられ、または屈辱を味わい、達成感を得ることができたか、といったこともつぶさに描かれており、人間としても魅力にも惹きつけられる。46章に記載されれている、中東和平会議パレスチナとイスラエルとの交渉の際の著者のスピーチは、強い共感と感動が得られるものだった。 回顧録とはこんなに価値のある物だったのか、と思わずにはいられない。今年読んだ本の中で、一番良かった本となった。
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人種差別が濃厚に残るアラバマ州バーミングハムで生まれた 少女は、「教育が人種差別の壁を越える手段」という両親の 信条に背くことなく育つ。 そして、パパ・ブッシュ政権下でロシア・東欧の専門家として頭角を 表し、子ブッシュ政権では国家安全保障問題担当補佐官、国務長官 を歴任する。 ...
人種差別が濃厚に残るアラバマ州バーミングハムで生まれた 少女は、「教育が人種差別の壁を越える手段」という両親の 信条に背くことなく育つ。 そして、パパ・ブッシュ政権下でロシア・東欧の専門家として頭角を 表し、子ブッシュ政権では国家安全保障問題担当補佐官、国務長官 を歴任する。 子ブッシュの大統領就任後、8ヵ月で起きたのが9.11アメリカ同時 多発テロだ。この事件を皮切りに、子ブッシュ政権の8年間は大きな 出来事の連発だ。 アメリカ大統領という、世界でも大きな存在の近くで過ごした8年間を 綴った本書は、ハルバースタム『ベスト&ブライテスト』にも劣らない アメリカ政治のダイナミズムを伝えてくれる。 9.11から始まったアフガニスタン戦争、それに続くイラク戦争、イスラ える・パレスチナ問題の調整、北朝鮮とイランの核開発、インドと パキスタンの問題、中国の台頭。 これでもかっ!ってほどてんこ盛り。670ページ超、上下2段組み、 しかも改行少な目、文字びっしり。読むのに時間はかかったが、 翻訳のうまさもあり興味深く読めた。 ロシア・ラブロフ外相とは衝突しながらも結構、仲良しなんだよな。 でも、自分のところの副大統領だったチェイニーは相当嫌いだった ようだ。政権中枢にいた8年間、ホワイトハウスvs副大統領府みたい な感じだったものな。 自分が仕えた子ブッシュにはあくまでも忠実。しかし、時には大統領 の発言や態度をたしなめたりする。それもかなり効果的に。IQ200 との噂もあるライスさんだが、本当に頭が切れるんだなぁ。 少々の値段のはる本書だが、読んで損はなかった。小泉政権以降、 日本の首相がコロコロ変わることに対しての苦言もある。すいません、 名前を覚える前に首相が変わっちゃって。 アメリカ視点で書かれているので、「あぁ、アメリカはこう考えるのか」 との参考にもなる。日本人視点で読むと、受け取り方が違うのだけれ ど、それは仕方ないね。 子ブッシュの良き家庭教師は、再び研究者生活を送っているようだ。
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[死闘]ジョージ・W・ブッシュ政権において女性初となる国家安全保障担当大統領補佐官、その後は国務長官に就任したコンドリーザ・ライスによる回顧録。彼女とアメリカは、9.11に、アフガン・イラク戦争に、南アジアの政情不安に、そして北朝鮮の核危機にどのように立ち向かったのか。上下二段組...
[死闘]ジョージ・W・ブッシュ政権において女性初となる国家安全保障担当大統領補佐官、その後は国務長官に就任したコンドリーザ・ライスによる回顧録。彼女とアメリカは、9.11に、アフガン・イラク戦争に、南アジアの政情不安に、そして北朝鮮の核危機にどのように立ち向かったのか。上下二段組で672ページ(日本語版)にも及ぶ大作が、アメリカ外交の舞台裏をつぶさに明かしてくれます。理想主義と現実主義が複雑に入り交じったライス外交の特徴が鮮明に迫ってくる作品です。 「ここまで書くのか」というほど仔細に当時のやり取りや舞台裏が記されており、まずはその点に驚き。近年のアメリカ外交に関する一級の資料であることは間違いないですし、外交の世界がどのように動いているのかを知るためにも本当に貴重な一冊だと思います。激務の中でのやりがいや安らぎについても触れられており、ユーモアを大切にすることが見て取れるライス元国務長官の人柄が伝わってくる点も読み応えがあると思います。 現実主義を大切にしながらも、理想主義をそれに従属させず、むしろ時によっては前面に展開させたところに、当時のアメリカ外交の特徴がよく表れていると思います。ソ連・東欧の研究者として自由主義の「勝利」の瞬間を目の当たりにしたこと、人種差別と戦った親族をお持ちだったことなど、個人的な体験が敷衍する形でのライス元国務長官の価値観が本書からは透けて見えました。すさまじい大著(電車で読むには重すぎるぐらい......)ですので、おいそれとオススメはできないのですが、内容的には非常に濃い一冊でした。 〜私は国務長官として、世界の現状が課してくる制約に常に自覚的だった。”可能性の技術”を実践しようと肚を決めていた。しかし他方で、世界のあり方それ自体の可能性を見失わないようにも心がけ、この目標に向かうための道筋にこだわってもきた。それこそが、外交という時間のかかる仕事の醍醐味なのだ。〜 これは私的に本当に読んで良かった☆5つ
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ブッシュ大統領の側近としてホワイトハウスに務めた8年間の回顧録。第一期が国家安全保障担当大統領補佐官で第二期が国務長官。アメリカの舵取りをどのような考えで行ってきたかを内幕も含めて回顧している。 意識の高さと不屈の精神に感嘆したり、傲慢とも思える理想の押し付けは世界一の大国でなくなってもできるのだろうかと疑問に思ったり、国同士の争いは根っこの部分では隣村とのいさかいと同じだと感じたりできて面白かった。 それにしても長すぎる。上下段680ページで読み終わるのに3か月かかった。。
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前作の家族の物語は前半生でしたが、今回はブッシュ政権8年間でのライスさんの活動を、とても詳しく回想なされています ぜひ一読をオススメします
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古来、冷戦終結に至るまで、外交官の評価は、同盟国及び敵対国のなかにどれだけ太いパイプを持っているかによって定められた。貴族、王族、あるいは軍や政府等、国家権力の中枢にどれほど深く食い込めるか、情報の受信・発信能力の高さが求められていた。したがって外交官、あるいは外務大臣には血筋...
古来、冷戦終結に至るまで、外交官の評価は、同盟国及び敵対国のなかにどれだけ太いパイプを持っているかによって定められた。貴族、王族、あるいは軍や政府等、国家権力の中枢にどれほど深く食い込めるか、情報の受信・発信能力の高さが求められていた。したがって外交官、あるいは外務大臣には血筋の良さが求められ、知性が高ければなお結構ということだったようである。これはキッシンジャーの回想録などにもなおまだ濃厚にあらわれている。 ところが冷戦が崩壊し、大国対大国というような図式が消滅した今日、外交官、とくにアメリカの国務長官や高官に求められる資質は明らかに変わってきている。本書では、ライス国務長官がイスラエルとパレスチナの紛争をめぐる中東和平会議で述べた発言として次のように記されている。 しかし、私たちが議論しているのは、人々の生活の 未来についてなのです。実は、パレスチナとイスラエルの人々のことは、私も実感としてわかる部分があります。私は子ども時代をアラバマ州バーミングハムで育ちました。黒人にとってはひどい時代でした。だからこそ、パレスチナで母親が子どもに向かって、〝私たちはパレスチナ人だから、あの道路を通ることはできないのよ〟と話すときの気持ちが、その怒りや屈辱が、わかる気がするのです。私の母も同じだったはずです。というのも、私は黒人で、当時、この肌の色だけを理由に、行くことを禁止されていた場所がいくつもあったのです。一方、イスラエルの母親が〝寝ている間に爆弾が落ちてきて殺されるかもしれない〟と心配しながら子どもを寝かしつける気持ちもわかります。一九六三年、バーミングハムの教会で私は友達を殺されました。両親は私を慰めなければなりませんでした。私自身の身の安全も完全に保証されているわけではないことを、両親は知っていたはずです。人間は、このような生活を強いられてはいけません。だからこそ、私たちはパレスチナ国家樹立を実現し、ユダヤ人の国イスラエルと、平和で安全に共存できるようにする必要があるのです。政治のためではありません。パレスチナとイスラエル、そこで暮らす人々の生活を変えるために、です。(本文p.556~p.557) 紛争の図式が大国対大国から先進国対後進国、豊かさ対貧困等へとシフトしつつある今、富める国の代表たるアメリカの国務長官に求められる資質も変わりつつある。オルブライト、パウエル、ライス、ヒラリーと続いた歴代の国務長官は民族迫害、人種差別、性差別のなかで育ち、みずからの知性と人一倍の努力でその地位を掴んだ人たちであるからこそ、今日の問題に説得力のある発言ができるのもうなずける。 イギリス首相ブレアが初めてホワイトハウスでブッシュに会ったとき、大統領の左右に国務長官パウエルと国家安全保障特別補佐官ライスが侍して出迎えたのを見て、アメリカはここまで変われるのかとビックリし、イギリスはまだそこまではできないと思ったそうであるが、これはみごとに現代が求める外交官の資質の変化を物語る話であろう。
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2段組で600ページを超える長さだが、疲れることなく読み続けられる。 それは、9・11、アフガン戦争、イラク戦争という激動の真っ只中での政策決定過程を描いているからということもあるが、局面ごとのエピソードややり取りが非常に上手に選択され紹介されていること、学者らしく論文調の説明が...
2段組で600ページを超える長さだが、疲れることなく読み続けられる。 それは、9・11、アフガン戦争、イラク戦争という激動の真っ只中での政策決定過程を描いているからということもあるが、局面ごとのエピソードややり取りが非常に上手に選択され紹介されていること、学者らしく論文調の説明が随所に散りばめられていることが大きな理由だ。 加えて、かなり直截な表現で、政権内の人物や交渉相手を評しているのが面白い。 まだそれほど過去の話ではなく、ほとんどの人物が存命中にもかかわらず、こんなにストレートに書いて大丈夫だろうか、と思うほど大胆だ。 チェイニーやラムズフェルドにはいつも厳しい反面、ブッシュやパウエルを見る目は常に温かい。 カダフィが彼女に好意を寄せていた話は笑えるし、「どこの国よりも中国で死ぬのはごめんだった」とどぎつい表現をしたり。 私は大統領から信頼されている、という趣旨の記述が何度か出てくるが、これは彼女の立ち位置が意外に脆弱だった裏返しかもしれない。 外交とはかなり高度で洗練された技術であり、特にアメリカはそうなのではないかと思いがちだが、実際はかなり人間臭さが漂い、良い意味でも悪い意味でも結構いい加減なものである。 その外交の人間的な魅力を、本書から存分に感じ取ることができる。
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おそらく世界でもっとも知性と洞察力を備えた女性による、9.11を挟んだブッシュ政権8年間の苦闘についての内側からの記録。とにかく膨大な情報量である。これだけのことを理性をもって世界のため、アメリカのため、自由と民主主義のために判断し、働きかけ、行動し、フォローしていくというのは気...
おそらく世界でもっとも知性と洞察力を備えた女性による、9.11を挟んだブッシュ政権8年間の苦闘についての内側からの記録。とにかく膨大な情報量である。これだけのことを理性をもって世界のため、アメリカのため、自由と民主主義のために判断し、働きかけ、行動し、フォローしていくというのは気の遠くなるような仕事であるに違いない。
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